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episode1

第二作目です。


気軽に読んで下さい。

感想いただけたら嬉しいです。


銃声が深夜の森に響いた。

森の奥には白い巨大な建物があり、銃声はそこから聴こえてくる様だ。

建物の中は一面赤い色に染められ、散乱している遺体の中には子供もいた。

悲鳴と何やら猛獣の唸り声の様なものも聴こえてくる。

そんな中を裏口に向かって突き進んでいる少年達がいた。

その中の一人に死にかけている少女が抱きかかえられている。

「この子だけは何としても助け出すんだ。」

銃声が鳴り響き、一人、また一人と減っていく。


一年後


朝日がカーテンの隙間から差し込んでいる。

少女は眠そうに目をこすり、体を起こした。

ベッドから下りると壁に掛けてある制服をとり、パジャマを脱ぎだした。

きれいな白い肌には無数の傷跡があった。

切り傷や銃で撃たれたモノもある。

普通に生活していればまず有り得ない傷だ。

少女は白いブラウスの袖に腕を通した。


彼女は篠原小夜。

施設暮らしで一年前までの記憶がないが普通の高校生だ。

長い茶髪に大きな胸、スラリとした足と体型にも恵まれている。

学校では陸上部に属し、大会でも優秀な成績をおさめている。

壁際に置かれたタンスの上にはトロフィーがいくつも乗っていた。

スカートを履き、上着に腕を通すと小夜は勢いよく部屋を駆け出していった。


トーストをかじりつつ、小夜は小走りで学校に向かった。

時計は8時30分を指している。遅刻まであと10分しかない。

小夜は急いでトーストを飲み込み、靴紐を結び直した。

そしてしっかりと目の前の道路を見据えて一気に駆け出した。

小夜が走っている姿はまるでミサイルか何かが目の前を通り過ぎていったかの様に見える。

そのため小夜は通称「壱高の弾丸」と呼ばれている。

おかげでものの5分で学校に着いた。

「ふー、間に合った。」

ギリギリで学校に行き、眠たくなる様な授業をいくつも受け、クラスメートと雑談に花を咲かせる。

何も変わった事のない退屈ででも心地いい、それが小夜の日常だった。



今日は少し早く目が覚めたらしい。

いつもならまだ着替えている時間に小夜は施設を出た。

のんびり歩きながら小夜は空を見上げた。

その時何か黒い影が空を横切った。

小夜は目をこすってもう一度空を見上げた。

でもその影はもう見えなかった。

きっと眩しくて目が眩んだだけだと、小夜は気にも留めなかった。


「ミツケタ......。」

黒い影の主は人の声とは思えない声で不気味に呟いた。

その視線のは小夜一人をしっかりと射止めていた。

そしてその影の主を陰から見つめている少年がいた。

少年は影の主に何かしようとしたが何者かの気配を感じたのかそのまま何もせず立ち去った。


「ねぇ小夜、今日転校生くるんだって!!」

クラスの中でもミーハーな智恵が目を輝かせて言った。

小夜は一人で騒いでいる智恵を適当に流して席についた。

「男の子かなぁ、うんきっと男の子だよ!!かっこいいだろうなぁ......。」

あまりにうるさいため小夜は教科書を丸めた物で軽く智恵を小突いた。

「転校生かぁ......。」

智恵程ではないが若干興味はある。

「席つけーホームルーム始めるぞー。」

担任教師の声で皆それぞれ席につく。

担任教師に続いて一人の少年が教室に入ってきた。

女子の絶叫と男子の落胆のため息とが入り混じる中、小夜と少年だけがお互いを見つめ、黙り込んでいた。

デジャヴというモノなのだろうか。

小夜はこの少年が初対面とは思えなかった。

いや確実に会った事がある。そう確信していた。

少年は小夜に向かって少し微笑んだ。

「ちょっと、今小夜の事見てたよね!!」

智恵がまた騒ぎだした。

「錠之内 蓮です、よろしく。」

蓮は席につく時、小夜にこっそり耳打ちした。

小夜は驚いて振り返ったが、蓮は素知らぬ顔で席についていた。


「絶対錠之内君って小夜に気があるよねぇ。」

智恵がうっとりしながら言う。

小夜は苦笑いしながら弁当をつついた。

昼休み食後に屋上で待ってる、蓮はそう言った。

小夜はどういう意味なのかまだ引っかかっていた。

昼食を早めに切り上げ小夜は屋上へ向かった。

扉を開けると蓮が柵にもたれて立っていた。

小夜を視界に捉えると笑いかけた。

「呼び出して悪かったね、小夜でいい?」

小夜は頷いて聞いた。

「何?用事って。」

蓮が話そうと口を開きかけたその時だった。

突然大きな風が巻き起こり、ドスンという音と共に得体の知れない生き物が現れた。

それは朝、小夜を遠くから観察していた影だった。

ワニが突然変異した様なその生き物は、口の端から涎を絶えずこぼしている。

空を見上げてみるも、飛行機やヘリコプター等の類は見られない。

という事はこの生物は地面からこの屋上に上ってきたという事だ。

普通の生物ではこんな芸当は不可能だ。

「やっぱりさっき潰しておくんだった!!」

蓮が袖を捲った。

「何?何なの一体!!」

小夜はうろたえた。

未知の生物を目の前にして恐怖で足もすくんでいる。

その生き物は小夜達に向かって突進してきた。

蓮が小夜を庇い、その生き物の進路をずらした。

「錠之内君、こいつ一体何なの!?」

蓮は頭を噛み砕こうとしているソレを獣の様になった腕で制しながら答えた。

「キマイラと呼ばれる実験動物だ。」

そうやって会話している内にもう一匹現れた。

そっちに気を取られた蓮の腕にキマイラが鋭い牙を食い込ませた。

体を走る激痛に顔を歪めながら蓮は小夜を睨みつけた。

「小夜、力を解放するんだ!!」

蓮が叫んだ。

小夜はビクッと体を震わせた。

「私普通の高校生だよ、力なんて......」

そう言いかけた小夜の腹部にキマイラの爪が深々と突き刺さった。

「........っ!!」

爪が引き抜かれ小夜はコンクリートの床に叩きつけられた。

「小夜!!」

蓮は小夜に駆け寄ろうとしたが詰め寄ってくるキマイラがそれを許さなかった。

小夜の傷からは夥しい量の血が溢れ出している。

放っておけば確実に死ぬだろう。

遠のいていく意識の中、小夜は力を求めていた。

こんな所で死にたくない、生き抜く力が欲しい。

力が欲しい、力さえあれば......。

そう思った時体が大きく波打った。

次の瞬間、屋上全体が光に包まれた。

「......小夜?」

衝撃波が巻き起こり、キマイラ達を消し飛ばした。

その衝撃波の中心には銀色の髪をした小夜が立っていた。

蓮は思わず涙を零した。

「素晴らしい力だ。彼女こそ僕らの救世主......。」


































































































































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