episode2
遅ればせながら投稿しました。
感想お願いします。
小夜は保健室のベッドで目を覚ました。
貧血なのか妙に頭がフラフラする。
何か悪い夢でも見ていた気がする。自分が死にかける様な。
体を起こして小夜は驚いた。なんと裸だったのだ。
慌てて毛布を体に寄せて、横にあった籠に手を伸ばした。
その時小夜は悪夢が現実である事を目の当たりにした。
そこにあったのは腹部に大きな穴のあいた血まみれのブラウスだったのだ。
「嘘......本当にあったの?あんな事が!?」
小夜は一人そう呟いた。
さすがにこのままの格好でいる訳にはいかず、小夜は椅子にかけてあった白衣を羽織った。
保健室を出て廊下の時計を見ると今は六時間目の真っ最中だった。
こんな格好で授業に出るのはいささか気が引ける為、小夜は今日はサボる事にした。
のんびりと廊下を歩いていると何か様子がおかしい事に気がついた。
静かすぎる。
授業中静かなのは当たり前だが授業をする教師の声くらい聴こえてきてもいいだろう。
しかしそれすらない。不気味なくらい静かだった。
不安を煽られながら小夜は歩くスピードを速めた。
嫌な予感がする。それも尋常じゃないくらい嫌な予感がする。
階段まできた時予感は的中した。
そこにあったモノは少し前に一緒に弁当をつついていたクラスメート、智恵の上半身だった。
「........っ!!」
小夜の顔から血の気が引いていった。
胃から何かがこみ上げてきてその場で激しく嘔吐した。
ここでこうなっているという事は恐らく保健室にいる小夜の所へ向かう途中だったのだろう。
その途中で何者かに殺されたのだ。
下半身がない事から多分喰いちぎる形でこうなったのだ。
胃の中身の次は涙が溢れて止まらなくなった。
智恵の名を叫びながら小夜は泣いた。
どれ程経っただろうか。
泣き疲れた小夜はぼんやりとその場に座り込んでいた。
いつの間にか夕焼けが窓から差し込み、校舎を朱に染めている。
ふと背後で足音がして振り返ると蓮だった。
蓮の制服も血にまみれていた。
「僕一人ではどうにも出来なかった。」
申し訳なさそうに蓮は言った。
小夜はだらんとさせていた手を握り締めた。
「仕方ないよ......あんな生き物普通何とかできないし。」
蓮はため息をつくと言った。
「ここは危険だから僕達のアジトに行こう。」
小夜は差し出された手をそっと握った。
アジトへ向かう道中、二人は一言も話さなかった。
小夜自身、突然の出来事に困惑していたし動揺もしていた。
そして蓮はそんな小夜にどう声を掛けていいかわからなかった。
路地裏に入り、しばらく歩くと蓮が足を止めた。
一つのマンホールに手をかけ、引き上げる。
中を覗き込むと暗闇で底がわからなかった。
梯子がないため飛び降りて二人はまた歩き出した。
蓮がポケットからペンライトを出し、足元がぼんやり見えるくらいに照らした。
「もう少しだよ、もう少しで到着だ。」
蓮がそう言うと小夜達の前に白い扉が現れた。
扉の前には小さな台が置いてあり、蓮がそこに手をかざした。
恐らく指紋照合をする装置なのだろう。小夜はセキュリティーの高さに驚いた。
電子音が鳴ると扉はゆっくり開いた。
「ここが僕達のアジトだよ、入って。」
蓮が中へ誘い、小夜はゆっくり中に入った。
小夜が中に入ると自分と同じくらいの少年少女達がズラリと前に並んでいた。
「紹介するよ、これが僕達の仲間だ。」
その場にいた者たちが口々によろしくと小夜に好意を示した。
小夜はいきなりの出来事に状況を飲み込めていないらしく、ただ目をパチクリさせている。
「小夜久しぶりだな!!元気してたか?」
一人の大柄な少年が小夜の肩に手をまわして言った。
「瀬斗、小夜は記憶を消されてるんだ、もう少し気を使えよ。」
「あそっか、悪い。」
瀬斗と呼ばれた少年は小夜から手を離した。
「いや、いいよ。」
小夜はぎこちなく微笑んだ。
「歓迎会やろ!!こっちこっち!!」
少女の一人に手を引かれ小夜は奥へと連れて行かれた。
小夜の歓迎会で皆が大騒ぎな中、蓮だけが顔を曇らせていた。
「どうしたんだ蓮、こないのか?」
瀬斗が様子を見に来た。蓮は表情を変えず言った。
「今回小夜を連れてくるにあたって、小夜の通っていた学校が一つ壊滅したんだ。」
瀬斗の表情も蓮と同じように暗く沈んだ。
「俺達はまた関係のない人達を巻き込んだんだな。」
二人は壁にもたれて黙って立っていた。
その表情は少年とは思えない程に大人びて、そして深刻そうだった。
瀬斗は拳を握り締めた。
「俺達がしようとしている事は本当に正しいのか?こんなにたくさんの人の命を・・・・・・。」
瀬斗は拳を固めたまま苦しそうに言った。
蓮はゆっくりと顔を上げた。
「それでもこれ以上僕達の様な子供を作り出す訳にはいかないんだ、
そのためには僕はどんな犠牲もいとわない、例えこの身が滅びたとしても。」
蓮の目は真剣だった。
「はあ・・・・・・・。」
小夜はベッドに寝転ぶとため息をついた。
一日でいろんな事がありすぎて頭の中がぐちゃぐちゃになっている。
よくわからない生物に襲われたかと思えば目が覚めれば親友は殺され学校は壊滅していた。
だが全ては自分が普通でない事が関係しているのだと思うと記憶がないことが恨めしかった。
蓮は言っていた。小夜には力があると。
記憶さえあれば親友をこの手で助けられたかも知れない。
そう思うと小夜は悔しくて仕方なかった。
枕を抱きしめ、小夜は決意した。
記憶を取り戻し、蓮達と共に親友を殺した者達に立ち向かう事を。
いつの間にか朝になっていた。
小夜はとてつもない叫び声で目を覚ました。
「何事!?」
部屋を飛び出すと焦げた目玉焼きをのせたフライパンを持ったまま走り回っている少女がいた。
小夜は内心ほっとした。
それにしてもひどい焦げようだ。もう炭に近い。
何故ここまで焦げたのか気になるところだがまだ熱いフライパンを持って走り回るのは危ない。
とりあえずキッチンへ戻ってもらうことにした。
小夜は部屋に戻って服を着替えた。
「小夜おはよう、昨日はよく眠れた?」
食堂に行くと蓮は先に着いていて挨拶してきた。
小夜は頷きながら椅子に腰掛けた。
蓮は何やら紙を見ながらため息をついた。
「今日の朝食はあまり期待しない方がいいよ。」
「知ってる、今日の目玉焼き焦げてるんだ。」
そう言って小夜は蓮と顔を見合わせた。
ここでは全てが当番制で毎日仕事がローテーションする。
どうやら今日の朝食当番は料理があまり上手くないらしい。
案の定やっぱり焦げていた。




