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インチキ呼ばわりされて廃業した『調理時間をゼロにできる』魔法使い料理人、魔術師養成女子校の学食で重宝される  作者: 椎名 富比路
第三章 魔法科学校の秋は、イベント盛りだくさん

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第36話 おじさん、JKと魔界へ

 オンスロート・ルコートマウンディア。


 それが、オルコートマの正式名だという。「オンスロートが座っている山」という意味らしい。かなり歴史の古い街のようだな。


 温泉街みたいだな。都会というより、ちょっと騒がしい温泉街という印象だ。硫黄の香りがするから、本当に温泉が湧いているのかも知れない。


「着きましたよー。準備してくださーい」


 バスガイド姿で、シスター・ダグマが先導をする。


「シスター、大丈夫なんですか? 魔物の巣窟なんて。食われちまうんじゃ」


「イクタさん。心配ありませーん」


「けど、ほら」


 オレたちは、速攻で魔物たちに囲まれてしまった。


「おお、ニンゲンだ」


「ニンゲンだねー」


「久しぶりじゃのう」


 オーク、雪だるま、ガイコツなどの魔物たちが、オレたちににじり寄ってくる。


 一戦交えようというのか? よしてほしい。


 こちとら、戦闘力なんて皆無だぜ。学食に野菜を卸しているモクバさんの畑から、野獣を追い払うくらいならやったことはある。だが、あれも小さいウリ坊サイズだったし。


「イクタ。わたくしの後ろに」


 珍しく、デボラが頼もしい。


 キャロリネやペルも、オレを背中に隠す。


 武器に手をかけたりはしないが、一応警戒はしているようだ。


「ヒャッハーッ! ウエルカムだ! ニンゲンどもーっ!」


 魔物たちは襲いかかるどころか、道を開けてくれた。


「ようこそー。学生さんたちー」


 制服を着たスケルトンの少女が、エドラたちの首にレイをかける。


「お? お?」


 エドラも拍子抜けして、されるがままになっていた。


「歓迎されている、と思っていいんだよな?」


「はーい。ニンゲンなんて、この地に降りるのは久々だそうでしてー」


 ダグマいわく、人がオルコートマに立ち寄ること自体、めったにないという。魔物に対する偏見が、強いためらしい。


「中には本当に怖い、人間を見たら襲うような魔物も住んでいますよー」


 しかし、そういう輩は魔王が厳重に取り締まるという。


「以前、というか大昔にうちの生徒にケンカを売った女子高生が、ここの学園に何十年も『留年』させられていますー」


「留年? 投獄じゃなくて?」


「いえ、留年ですー。ダブリですー」


 投獄などというと、凶悪な魔物としての箔が付いてしまう。そのため、「留年」とダサく表記しているらしい。

「暴走族」を「珍走団」と呼び替えるようなもんか。


「お待ちしておりました、シスター・ダグマ。わが校の学長がお呼びです。こちらへ」


 先程現れた、スケルトンの少女が、案内を引き受ける。


「ありがとうございますー。ではー。学校に参りましょー」


 たしか、オルコートマにも学園があると言っていたな。これだけデカくて賑やかな街なんだ。学校くらいあるよな。


 ジャックランタンの被り物をした子どもが、プリティカにフヨフヨと近づいてきた。おそらくだが、ジャックランタンそのものかもしれない。


「かわいい妖精さん、お菓子をどうぞー」


「うほー。ありがとー。ダークエルフのお姉ちゃーん」


 さすがプリティカは、物怖じしない。小さいジャックランタンに、お菓子を配る。誰にでも優しいんだろうな。


「は! ごきげんうるわしゅう。クリッティカー陛下」


「クリッティカー様に触れられるなんて、恐悦至極にございまするー」


 街のお年寄りたちが、プリティカを見て拝んでいた。


 それにしても、大した人気だな? 生写真でも売っているのか? プリティカを本名で呼んでいるし。アイドル的な扱いだ。


「プリティカは、ここにはよく来るのか?」


「たまにねー。学校のボランティア活動で、ここの老人ホームで親睦会をするのー」


 学校行事でも、立ち寄るのか。だから人気があるのかも知れない。


「老人ホームって言っても、お墓とか廃墟とかなんだけどねー」


 ゾンビやヴァンパイアなどの話し相手を、してあげるという。アンデッドを「老人」というのか。


「たしかにボランティア活動で、こちらには参りますー。ですがー、クリッティカーさんを呼んだ覚えがないのですがー?」


「個人的に、ついていったのー。いいよねー?」


 アンデッド相手の親睦会など、まあ、女子高生なら断るよな。その穴埋めとして、プリティカは参加するという。


「はいー。生徒の自主性はー、尊重すべきですー」


 いいんなら、問題ないな。


 しかし、一度か二度の訪問でこれだけ慕われるとは。


「もし。そなた、『図書館の賢者殿』では?」


 ニワトリ頭の獣人が、パァイに声をかけてきた。


「いかにも、吾輩が賢者である。何用かのう?」


「そなたの文献、毎回拝見いたしておる」


 差し出されたのは、絵本である。


「サインを頂戴したい」


「うむ。こういう形のトリックオアトリートも、よいのう」


 パァイが絵本の巻末に、筆を走らせる。マジックではない。筆だ。


「かたじけない。また新作が出たら、購入いたそう」


 ニワトリ獣人が、去っていく。


「絵本なんか、出していたんだな?」


 本を出しても素人に理解できないから売れない、と言っていたが。

「絵日記のことじゃ」


 パァイが夏と冬に書かされる絵日記は、英雄譚として世に出ているという。 


 

 一〇分ほど歩いた先に、学校と呼称される建物に到着した。


 なんでこんなたどたどしい言い方をしているかというと、およそ学校と呼ぶには仰々しすぎるからである。


 厳密に言うと……魔王城としか形容できなかった。

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