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インチキ呼ばわりされて廃業した『調理時間をゼロにできる』魔法使い料理人、魔術師養成女子校の学食で重宝される  作者: 椎名 富比路
第三章 魔法科学校の秋は、イベント盛りだくさん

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第35話 おじさん、JKと街を練り歩く

 デボラの担任であるシスター・ダグマが、学食に顔を出す。


 いつもは修道女の服装だが、今回はミニスカバスガイドだ。頭に、悪魔の角を生やしている。


「皆さん、おそろいですねー?」


 ダグマに問いかけられ、JKたちが「はーい」と返事をした。


「では、街へ参りましょー」


 JKたちが、エドラを先頭に学食を出ていく。


「お気をつけて、シスター・ダグマ」


「なーにをおっしゃいます、イクタさーん? あなたも来るんですよー」


「オレも?」


 聞いてないぞ、そんな話は。


「プリントが配られませんでしたかー、イクタさーん? 学食の方々にも、ビラ配りに協力していただくことになっているのですがー」


 今回はちょっと、遠くの街へも行く。なので、引率役が足りないらしい。


 ホントだ。壁のポスターにも、書いてあるな。仕事が忙しくて、目を通していなかった。


「ではイクタさーん、行きましょー」


「といっても、着替えがなくて」


 みんな仮装しているのに一人だけコック姿では、キャラが浮いてしまう。


「大丈夫でーす。私がそれっぽい魔法をかけてー、仮装させて差し上げまーす」


 シスター・ダグマが、指揮棒のように手のフラグを振る。あれは、杖を変形させたものか。


「リクエストはございますかー?」


「地味ハロウィン的なものを」


 オレが目立っても、仕方がない。主役は生徒なんだから。


「それだと仮装を見られた際に、説明が必要になってきますねー。いちいち質問されて、めんどくさいですよー」


 なるほど。理解されないケースがあると。「シュレッダーを待つ人」なんて、異世界人の誰がわかるねん、と。


 だったら、わかりやすい仮装が無難だろうな。


「オススメはありますか?」


「フランケンなんていかがでしょー? 頭におもちゃのネジを刺す程度ですのでー」


 オレの体型からして、それがベストかも知れない。頭に鉄が突き出ている以外は、普段着だし。


「ほんとに、仮装しないとダメか、エドラ?」


「イクタ。観念して、妥協なさったほうがよろしいかと。躊躇なさっていると、ドレスとかいい出しますわよ」


「だな」


 デボラに催促されて、オレは承諾する。


 なんかノリが良すぎて苦手なんだよな、シスター・ダグマは。プリティカより、絡みづらい。


「じゃあ、それで」


「はーい。かしこまりー」


 フラグをクルクルと回して、ダグマがオレの服装を変えていく。


「できましたー」


 オレはこめかみにネジがハマっているのを確認する。被り物だから、本当に突き刺さっているわけではない。


「では気を取り直して、行きましょー」


 さっそく、街へ。


「こんばんは。今日は、イクタさんも街へ行くのかい?」


「そうなんだよ。文化祭の宣伝をやってる。来てくれよな」


「あいよー」


 近所のおばあさんが、ミカンをくれた。異世界のミカンは、蜜のように甘いんだよ。うまい。


「イクタさん、今日はハロウィンかい?」


「実はな。今日は引率役なんだ」


「そうかい。気をつけてな」


 八百屋のおじさんから、トマトをもらう。


「イクタ、大評判ですわ」


 世話になっているからな。


「なんだか、わたくしたちより、慕われていませんか?」


 みんな敬遠しているのか、デボラなどには視線を送るものの、話しかけようとはしない。


 庶民と貴族の違いを、思い知らされた。やはりみんな、お貴族様には気軽に声をかけられないのだろう。


 仮装は、この状況を緩和するためなのかも知れない。あくまでも、文化祭を楽しんでもらいたいだけで。


「気のせいだよ。みんながかわいすぎて、オレにしか声をかけられないんだろうよ」


 さりげなく、フォローしておく。


「そういうところですわ。イクタ」


 デボラは頬を染めた。


「おやおや、イクタさん。かわいいお嬢ちゃんたちを、連れていますね」


 ラーメンの屋台を引く若い衆が、オレに声をかけてくる。


「この子たちの引率係でな。文化祭の宣伝に、回っているんだ」


「あいよ。仕事前に、お邪魔させてもらいます。その代わり、学校の近くで営業してもよろしいんで? 屋台に戻るのは、大変なんですよ。新境地も開拓してぇ」


 オレは、ダグマに確認を取る。


 ダグマは、指で輪っかを作った。


「OKだとよ」


「ありがとうごぜえやす!」


「ですが」と、ダグマが前置きする。


「お客さんの質が、若干変わりますよー。それでも、よろしければー」


「大丈夫です! 魔物にラーメンを食わせたことだって、あるんだ。問題ありませんよ」


「なら、平気そうですねー」


 思わせぶりな言葉を、ダグマは発した。


 なんだってんだ?


 

 オレたちは、駅に到着した。


「では、みなさーん。列車に乗りますよー」


 切符を買い、蒸気機関車に乗り込む。


「シスター・ダグマ。これから、どこへ行くんです?」


 だんだんと、空が赤く染まっているのだが? というか雲が異様に赤黒い。いったいこの列車は、どこ行きなのか?

 乗客も、ニンゲンはないし。


「今から向かうのはー、オルコートマ王国でーす」


「オルコートマですって!?」


 ダグマの一言に、デボラが過剰反応した。


「パァイ、オルコートマってのは?」


「魔物の本場みたいなところじゃよ。北部を支配する魔王・オンスロートが率いる、魔物たちが住む地域じゃ」


 つまり、オレたちが今から向かうのは、いわゆる『魔界』だという。

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