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インチキ呼ばわりされて廃業した『調理時間をゼロにできる』魔法使い料理人、魔術師養成女子校の学食で重宝される  作者: 椎名 富比路
第二章 夏は、女子魔法使いたちを腹ペコにする

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第13話 サムライ エドラ

「お前たち。ちょっと脅かして、カツアゲしようってか。だが、そこまでにしろや」


「んだと?」


「弱い女の子をいじめんなっ、つってんの。魔物退治とか、そっちでお金稼げ」


 背中に背負った刀を、スッと持ち上げる。


 白鞘の刀かと思ったが、木刀のようだ。何語が書かれているかわからないが、魔法文字が刀身にビッシリと描かれている。


 エドラが、木刀の先端を野盗に向ける。


 魔法文字が、赤く発光を始めた。


 ゴゴゴ、とエアコンの室外機のような音が、周辺に鳴り響く。


「うるせえ小娘が! まずはテメエから、ぶっ飛ばしてやらあ!」


「……やめろ! そいつは!」


 野盗の一人が、逆にぶっ飛ばされた。エドラが放った風魔法によって、野盗が路地裏から吐き出された。民家の壁を壊し、目を回す。


「あわわ。やっぱりだ! あいつ、リックワード女子の番長! エドラ・リュタだ!」


「すまねえ! おめえら、ズラかるぞ!」


 野盗たちは、そそくさと逃げていった。エドラの正体を、知っているらしい。


「ケガはねーかー?」


 エドラが、木刀を肩に担ぐ。


「はい。ありがとうございます」


「おめーら、近道しようってんで、この裏路地を使ったろー?」


 少女たちは、コクリとうなずく。魔法を習っているから、多少の危険な道でも平気だと思い込んでしまったらしい。


「魔法使いっつってもー、別に無敵になったわけじゃねーからなー。裏路地は野盗がいるから、避けろっつったろー?」


 腰に手を当てて、エドラは少女たちをたしなめる。 


「はい。ごめんなさい」


「いいぞー。オイラも昔なー、おんなじことしてオカンにぶっ飛ばされたんだー。本当に強い魔法使いはなー、ケンカしねーんだぞっつってさー。だから、危険な道は避けるんだぞっ」


 エドラは少女たちの肩を持って、そう言い聞かせた。


「これからは、気をつけます。では、失礼します」


 少女たちが去った後、エドラが振り返った。オレの気配に、気づいたらしい。


「おめー、コックさんだったよなー? 名前はたしか、イクタだっけ?」


「ああ。夕飯の買い物にな。その前に、つまめるものを買おうと思ってよお」


「だったらここを曲がった先にある、からあげの屋台がいいぞ。でも、ちょっと道が入り組んでいるんだよなー。だから、案内するじぇ」


「いいのか?」


 オレとしては、ありがたいが。


「オイラも腹減ったからなー。揚げ物なら、いくらでも入るぞー。あと、ここから離れたいぞー」


 エドラが看板を指差す。


 ああ、ここはラブホ街なんだな。そりゃあ、学生が通っていい道じゃない。


「案内を頼む」


「おうっ。いくぞイクタ」


「新しく店ができたんだな?」


「おう。冒険者を辞めた勇者が、パーティに出してた料理を売って繁盛したたらしいんだ。うまいぞー」


 今経営しているのは、勇者の末裔だという。


 そいつは、たしかにうまそうだ。


 エドラの手引によって、屋台に到着した。さっそく、からあげを食う。


「たしかにうまいっ。胸肉ってからあげにしてもパサパサするのに、これは最高だな」


「別売りのタルタルを合わせても、うまいんだ」


「マジか。試す試す」


 屋台に銅貨二枚を払い、タルタルをかけてもらった。


「こいつは、また別次元だな」


 これはまさしく、チキン南蛮だ。異世界で、チキン南蛮を食べられるとは。


「うまい。こんなの食ったら、家で作るのがアホくさくなるな」


 今日はもう、出来合いのものを買うことにした。


「だったら、ウチに来いよー。コロッケも買っていけー」


「そうさせてもらおう」


 実家まで案内してもらった。


「ここが、オイラんちー」


 エドラの実家は、肉屋さんである。


「『肉のリュタ』か」


 ずっとこの地方に住んでいるが、この一帯を利用するのは初めてだな。いつもは、西側を利用する。こちら東側は、活気があっていい。


 一部スペースが、コロッケの屋台になっていた。この店で作ったコロッケを、オバちゃんはパンに挟んで売っているんだな。


「オトーン。アニキー。今帰ったぞー」


「あら、エドラちゃん。おかえりなさい」


 まったくエドラに似ていない女性が、屋台スペースでコロッケを揚げている。


「ただいまー。お義姉さーん」


「義理のお姉さんか」


「おう。アニキのお嫁さーん」


 なるほど。エドラの義理のお姉さんなわけか。


「エドラちゃん、そちらの男性は?」


「学食のおっちゃん。イクタってんだ」


「あら、まあ」


 事情を聞いたお義姉さんが、コロッケを包む。


 あそこの路地裏は危ないため、エドラは定期的にパトロールしているらしい。


「ありがとうございました。エドラちゃんを無事におうちまで返してくださって」


「いえいえ! 私は、たまたま通りかかっただけでして!」


「こちら、お持ち帰りください」


 包んだコロッケを二つ、お義姉さんが差し出す。


「いえ、そんな代金はお支払いします!」


 財布を出そうとしたが、止められた。


「お近づきの印ですから。もし気に入られたら、ごひいきに」


「ありがとうございますっ。では遠慮なく」


 包みからの香りに、オレはすっかり参ってしまう。今夜は、こいつでメシを食うか。さっき買ったからあげとも、相性バツグンだろう。


「いやあ、いい店を紹介してもらった。ありがとうな、エドラ」


「またうまい店を見つけたら、教えてやるからなー」


 夕飯用のからあげを持って、エドラは去っていく。




 問題は、翌朝にやってきた。


「イクタさん! この記事の内容は本当なんですか!?」


 突然、イルマ嬢がオレの店に怒鳴り込んできたのである。学級新聞を持って。


「なんの話だ?」


「あなたが、エドラとデートなさったってお話です!」

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