22.オカルト研(仮)
懐中電灯もなしにあの暗い廊下を歩いていくなんて、桜井先生強い……。二人の方に向き直れば、お松君はションボリした様子だ。しかし、その原因は桜井先生からの信用がないことなのか、教授棟の調査ができないことに対するものなのか……いや、後者だろうな。
「話がだいぶ前に戻っちゃうけど、あの日私が追いかけられたモノって結局何だったのかな?お松君はあの日あった解剖実習のご遺体の霊って言ってたけど、本当にそうなのかなって気になってる。ご遺体を解剖実習に使うのって本人の同意がないとできない物でしょ?だから、そんな学生を襲うようなことするのかなって思って……。」
「幽霊に意思があるならまぁ……、それは確かに……佐倉もオカルトに片足突っ込み始めてるのかよ」
そう言いながら、お梅君が憐みの目で見てくるのでやめてほしい。すると、先ほどまでションボリしていたお松君がだんだんと姿勢を正し始めて、クッキーに手を伸ばすと口の中に放り込む。サクサクと言う音を響かせながら首をかしげる。
「んー、心霊系の話でよくあるのは死者の生者への憧れ憎しみ、あとはその人に乗り移って移動したり、人格乗っ取ったり、呪い殺したりね。」
「えっ!?怖っ!!」
思わず両手で自分の体を抱える。まさに背中に乗られたというか、押さえつけられたというか……もしや私は危うく幽霊に体を人格を乗っ取られるところだった!?それともやっぱり殺されかけてた!?本当に死者第2号になるところだったのでは!?私が怯えていると、お梅君がお松君を肘でどつく。
「イダッ!?あっ、あぁぁ!!佐倉さん大丈夫だよ!あれから何も起こってないんだろ?だったらターゲットは佐倉さんじゃなくなったのかもしれないけど、別のに狙わ……イダッ!!?」
「お前は本当に!佐倉、心配するな!こいつが言っていることは何の信憑性もないオカルト話だ。桜井先生も言ってただろ、こいつの考察はザルだ。心配なら学内で一人にならないように友達と行動すればよいし、どうしても無理な時は俺かコイツに声かけてくれ」
お松君の脇腹に肘鉄を入れながらお梅君が心配そうにこちらを見る。
「ううぅ……ありがとうお梅君……そう言ってもらえるだけで、心強いよ」
でもお松君に声かけたら、おびき寄せるエサ代わりにされかねないので、なるべく女友達と共に行動して、授業が終わったら速やかに校舎をでよう。そうしよう。そう思っている間に、お松君とお梅君の攻防というかじゃれあいが過熱し、ギャーギャー言い始めたので慌てて止める。
「二人とも!また騒ぐとさっきみたいにドア叩かれるよ!!」
そう言いながら二人を止めていると、部屋の奥からガタッ!!と言う音が響き、またも3人でビクリと肩を揺らして音の方を見る。見れば、オレンジ色のスーツケースが真横に倒れている。
そんな倒れ方、普通しないでしょ!!!!!?
ガタガタと恐怖に震える私とお梅君に対して「おぉ~!」と嬉しそうにスーツケースへとお松君が走り寄って行ったのだった。
「もう嫌だ……今すぐ家に帰りたい!!」
私の涙声にお梅君も頷いていた。




