20.その出会いは必然か、
前回のあらすじ。
お店のため、黄河に教えてもらった喫茶店に
一人で行ったら店の閉店を言いつけたお嬢様、
財前蜜柑と遭遇した。
「なぁ、あの子可愛くね?」
「わかる、俺めっちゃタイプなんだけど」
「顔ちっせぇ〜アイドル並みじゃんあれ。声かけてこようかなぁ」
同じくらいの年代、いやそれ以上もいるのだろうか。たくさんの人が、彼女をみている。それも、男女問わず。
それがわかってるのか、彼女は「は〜あ」とでかいため息を漏らす。
「蜜柑ってば、どこにいても注目の的になっちゃう❤︎ 可愛いってほんと罪だわぁ」
言葉とは裏腹に、表情は笑っている。
どうやら嬉しがってるようにみえて、僕ははぁ、と返事するだけだった。
聖明音、26歳。どういうわけか、彼女と同席しています。
彼女ー財前さんは、店のピンチを言い渡した人、いわば敵なような人だ。
叶うことなら、一番会いたくない人でもある。
なぜなら、彼女はー
「あなた、新人さんでしたよね? お名前は?」
「ひ、聖明音、です」
「へぇ、聖さん。こんなところで油売るなんて、随分余裕なんですねぇ? お休みとはいえ、こんなことをしてる場合じゃないと思いますけど」
ううっ、いたっ、いたたた……
財前さんの発する言葉は、とにかく棘がすごい。
笑みを浮かべてはいるが、並べられる言葉は悪意しか感じない。
ここにこうがいたら、どんなにいいことか……
「あ、遊びに来たわけじゃないです。何か参考になればと、お店のために……」
「え〜? 誰かさんとデートするための視察とかじゃなくてぇ?」
ぐはっ!!! な、なぜそれを!!
「演奏会であっつぅい視線を向けていれば、誰だってわかりますよ〜。恋愛にうつつ抜かせるなんて、本当呑気ですこと」
「……うう……こうには……店長には、言わないでください……」
「あの程度で上手く行ったと思ってるなんて、頭お花畑なんじゃないですかぁ? ま、閉店する分には、あの店が蜜柑ちゃんのものになるので、大歓迎なんですけどっ」
まただ。彼女は平然と、閉店を口にする。
それだけ、あの店が嫌いなのかな。僕たちは今でも閉店しないよう色々やっていると言うのに……
「みんな、頑張ってるんです! この前だって、新メニューを考えて……」
「……クリームソーダとコーヒーゼリーでしたっけ? 正直ふつー。あんなんでお客さんが増えるなんて考えにくいけど」
……あれ? 今、彼女の口から、新メニューの内容が聞こえなかった?
確か、那月さんがインスタに投稿したところでしか知り得ないはず……
経営状況を知るために、色々チェックしてる、とか??
「というかぁ、新メニューの他にも、やることあるでしょぉ? 接客の見直し〜とか、メニュー来るまでの時間短縮〜とか!」
「え、えーっと……?」
「現にここにある呼び鈴すらないし? こんなのもできないでお客さん増えてほしいなんて、お門違いもいいところだわ」
あれ?? おかしいな??
呼び鈴がないってことは、客としてお店に来たことがない限り知らないはず。
僕が知っている限り、彼女は演奏会と閉店をいいに来たときだけ。こう達の反応的にも、あの時が初めてなはず。
というか、これは……
「今の、アドバイス、ですよね? 閉店してほしい割に、随分お優しいんですね」
何気なく、言ったつもりだった。
僕の言葉を聞いた彼女は、みるみるうちに顔を真っ赤にさせていき……
「な、何勘違いしちゃってるんですぅ? あくまで、一般論を言ったまでです!! それくらいしてから頑張ってるって言ってください!」
「あ、はい。すみません」
「まったく、ただでさえ可愛い蜜柑ちゃんが、大声のせいで余計注目されちゃったじゃない! もう、帰るわよ」
「マスター、おかわりちょーだーい」
「この期に及んでまだ食べる気!?」
そういえば彼女の個性が強すぎて忘れていたけど、彼は何者なんだろう。
財前さんと一緒にいるってことは、従者的な……?
それにしては、若すぎるような……
「んもぅ! なんなのよ、あなた!! いつもいつも邪魔して!! 蜜柑がなんのためにこんなことしてるか、わかってます!?」
「んー……ここで食べるため?」
「〜〜〜っ!! もう信じらんない! 先帰ります! お金、ここにおいておきますから!」
「え、でもお釣りは……」
「言っとくけど、あの店の経営は蜜柑ちゃんの手にかかってるんですから!! そのことをお忘れなく!! さようなら!!」
怒ったような靴音を、店内に響かせる。
あまりの勢いに、僕はぽかんとみつめることしかできなくてー
「あーあ、置いてかれちゃった。元気だよねー、とーこは」
「とー、こ……? 蜜柑ちゃんじゃ、なくて?」
「そーとも言う〜」
「ええっと、そういえば君は? 初めて見る顔だけど……」
「君、じゃない」
え? と声が漏れる。
少年は、皿にあったスパゲッティの麺をすすりおわると、まっすぐに僕を見つめてきてー
「緑野純。それが、僕の名前」
「緑野、君。えっと、彼女とはどう言う……」
「ひみつ。もう少ししたら、わかるから」
人差し指を立てながら、くすりと笑う。
その腕には、緑色のミサンガがつけられていた。
アーチ状のアクセサリーが、中央でゆらゆら揺れていてー
「またね、あかね」
あどけない瞳をまっすぐ向けながら、とたとた去ってゆく。
なんだか不思議な子だなぁ。
その小さな背中が見えなくなるまで、僕はずっと見つめていたー。
(つづく!!)
おまけの小ネタ
一方そのころ、他のメンバーは……
那月「あ、これかわいいな……おっ、これとかめちゃくちゃいいかも...φ( ˙꒳˙ )メモメモ」
真冬「はい、終わり」
那月弟「うわっ、また負けた! 本当にゲームやったことないのかよ! 強すぎるだろ!?」
真冬「ここでしかしないって言ったでしょ。手加減したらしたでうるさいし」
那月弟「だー! 腹立つ~!!ヽ(`Д´)ノ 姉ちゃんからもなんか言ってくれよ!」
那月「……よし、できた!! 夏限定、ラムネ味シュークリーム~~~ってあれ、二人ともどうかした?」
那月弟「またメニュー考えてるしー。休みくらいは遊べよなー(`ε´)」
真冬「そうだよ、那月。休みの日はちゃんと休んで。僕だってせっかく遊びに来てるんだし。それに、そういうの黄河だけで間に合ってるしね」
那月「あはは、こう君、お休みの日でもコーヒー練習してるもんね~( ・∇・)ごめん! 気をつけ……あれ、明音君からメッセージ来てる」
明音『今後のアルカンシエルに役立ちそうな情報を手に入れました!! 今送ります!( ̄^ ̄ゞ』
那月「う、うちだけじゃなかったみたいだね……(•ᴗ•; )」
真冬「揃いも揃って店好きすぎ。変な癖移さないでよ、黄河……( ・᷄-・᷅ )」
この後黄河へクレームがいきました。
黄河「理不尽すぎね?( ¨̯ )」




