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20/70

20.その出会いは必然か、

前回のあらすじ。

お店のため、黄河に教えてもらった喫茶店に

一人で行ったら店の閉店を言いつけたお嬢様、

財前蜜柑と遭遇した。

「なぁ、あの子可愛くね?」


「わかる、俺めっちゃタイプなんだけど」


「顔ちっせぇ〜アイドル並みじゃんあれ。声かけてこようかなぁ」


同じくらいの年代、いやそれ以上もいるのだろうか。たくさんの人が、彼女をみている。それも、男女問わず。

それがわかってるのか、彼女は「は〜あ」とでかいため息を漏らす。


「蜜柑ってば、どこにいても注目の的になっちゃう❤︎ 可愛いってほんと罪だわぁ」


言葉とは裏腹に、表情は笑っている。

どうやら嬉しがってるようにみえて、僕ははぁ、と返事するだけだった。


聖明音、26歳。どういうわけか、彼女と同席しています。

彼女ー財前さんは、店のピンチを言い渡した人、いわば敵なような人だ。

叶うことなら、一番会いたくない人でもある。

なぜなら、彼女はー


「あなた、新人さんでしたよね? お名前は?」


「ひ、聖明音、です」


「へぇ、聖さん。こんなところで油売るなんて、随分余裕なんですねぇ? お休みとはいえ、こんなことをしてる場合じゃないと思いますけど」


ううっ、いたっ、いたたた……

財前さんの発する言葉は、とにかく棘がすごい。

笑みを浮かべてはいるが、並べられる言葉は悪意しか感じない。

ここにこうがいたら、どんなにいいことか……


「あ、遊びに来たわけじゃないです。何か参考になればと、お店のために……」


「え〜? 誰かさんとデートするための視察とかじゃなくてぇ?」


ぐはっ!!! な、なぜそれを!!


「演奏会であっつぅい視線を向けていれば、誰だってわかりますよ〜。恋愛にうつつ抜かせるなんて、本当呑気ですこと」


「……うう……こうには……店長には、言わないでください……」


「あの程度で上手く行ったと思ってるなんて、頭お花畑なんじゃないですかぁ? ま、閉店する分には、あの店が蜜柑ちゃんのものになるので、大歓迎なんですけどっ」


まただ。彼女は平然と、閉店を口にする。

それだけ、あの店が嫌いなのかな。僕たちは今でも閉店しないよう色々やっていると言うのに……


「みんな、頑張ってるんです! この前だって、新メニューを考えて……」


「……クリームソーダとコーヒーゼリーでしたっけ? 正直ふつー。あんなんでお客さんが増えるなんて考えにくいけど」


……あれ? 今、彼女の口から、新メニューの内容が聞こえなかった?

確か、那月さんがインスタに投稿したところでしか知り得ないはず……

経営状況を知るために、色々チェックしてる、とか??


「というかぁ、新メニューの他にも、やることあるでしょぉ? 接客の見直し〜とか、メニュー来るまでの時間短縮〜とか!」


「え、えーっと……?」


「現にここにある呼び鈴すらないし? こんなのもできないでお客さん増えてほしいなんて、お門違いもいいところだわ」


あれ?? おかしいな??

呼び鈴がないってことは、客としてお店に来たことがない限り知らないはず。

僕が知っている限り、彼女は演奏会と閉店をいいに来たときだけ。こう達の反応的にも、あの時が初めてなはず。

というか、これは……


「今の、アドバイス、ですよね? 閉店してほしい割に、随分お優しいんですね」


何気なく、言ったつもりだった。

僕の言葉を聞いた彼女は、みるみるうちに顔を真っ赤にさせていき……


「な、何勘違いしちゃってるんですぅ? あくまで、一般論を言ったまでです!! それくらいしてから頑張ってるって言ってください!」


「あ、はい。すみません」


「まったく、ただでさえ可愛い蜜柑ちゃんが、大声のせいで余計注目されちゃったじゃない! もう、帰るわよ」


「マスター、おかわりちょーだーい」


「この期に及んでまだ食べる気!?」


そういえば彼女の個性が強すぎて忘れていたけど、彼は何者なんだろう。

財前さんと一緒にいるってことは、従者的な……?

それにしては、若すぎるような……


「んもぅ! なんなのよ、あなた!! いつもいつも邪魔して!! 蜜柑がなんのためにこんなことしてるか、わかってます!?」


「んー……ここで食べるため?」


「〜〜〜っ!! もう信じらんない! 先帰ります! お金、ここにおいておきますから!」


「え、でもお釣りは……」


「言っとくけど、あの店の経営は蜜柑ちゃんの手にかかってるんですから!! そのことをお忘れなく!! さようなら!!」


怒ったような靴音を、店内に響かせる。

あまりの勢いに、僕はぽかんとみつめることしかできなくてー


「あーあ、置いてかれちゃった。元気だよねー、とーこは」


「とー、こ……? 蜜柑ちゃんじゃ、なくて?」


「そーとも言う〜」


「ええっと、そういえば君は? 初めて見る顔だけど……」


「君、じゃない」


え? と声が漏れる。

少年は、皿にあったスパゲッティの麺をすすりおわると、まっすぐに僕を見つめてきてー


「緑野純(みどりの じゅん)。それが、僕の名前」


「緑野、君。えっと、彼女とはどう言う……」


「ひみつ。もう少ししたら、わかるから」


人差し指を立てながら、くすりと笑う。

その腕には、緑色のミサンガがつけられていた。

アーチ状のアクセサリーが、中央でゆらゆら揺れていてー


「またね、あかね」


あどけない瞳をまっすぐ向けながら、とたとた去ってゆく。

なんだか不思議な子だなぁ。

その小さな背中が見えなくなるまで、僕はずっと見つめていたー。


(つづく!!)

おまけの小ネタ

一方そのころ、他のメンバーは……

那月「あ、これかわいいな……おっ、これとかめちゃくちゃいいかも...φ( ˙꒳˙ )メモメモ」


真冬「はい、終わり」


那月弟「うわっ、また負けた! 本当にゲームやったことないのかよ! 強すぎるだろ!?」


真冬「ここでしかしないって言ったでしょ。手加減したらしたでうるさいし」


那月弟「だー! 腹立つ~!!ヽ(`Д´)ノ 姉ちゃんからもなんか言ってくれよ!」


那月「……よし、できた!! 夏限定、ラムネ味シュークリーム~~~ってあれ、二人ともどうかした?」


那月弟「またメニュー考えてるしー。休みくらいは遊べよなー(`ε´)」


真冬「そうだよ、那月。休みの日はちゃんと休んで。僕だってせっかく遊びに来てるんだし。それに、そういうの黄河だけで間に合ってるしね」


那月「あはは、こう君、お休みの日でもコーヒー練習してるもんね~( ・∇・)ごめん! 気をつけ……あれ、明音君からメッセージ来てる」


明音『今後のアルカンシエルに役立ちそうな情報を手に入れました!! 今送ります!( ̄^ ̄ゞ』


那月「う、うちだけじゃなかったみたいだね……(•ᴗ•; )」


真冬「揃いも揃って店好きすぎ。変な癖移さないでよ、黄河……( ・᷄-・᷅ )」


この後黄河へクレームがいきました。

黄河「理不尽すぎね?( ¨̯ )」

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