19.悲報、平穏終了のお知らせ。
前回のあらすじ。
演奏会を終えた人気にあやかって
新メニューを考えました。
「夏限定新メニュー、開始決定! このおいしさは、夏しか味わえない! ぜひ一度、アルカンシエルへ……さすが那月さん、うまいなぁ」
オンスタの投稿をみながら、思わず感嘆の声を上げる。
自分のフォロワーは少ないけれど、たくさんの人に届いてほしいこともあり、とりあえずいいねボタンを押した。
現在、昼の11時。のんびり家で過ごしています。
最近は閉店のこともあって、休みの日もバタバタしていた。
那月さんが新メニューも考えてくれたおかげで、ようやく落ち着いている。
これで売り上げがまた伸びてくれれば、きっと……
「明音~ちょっといい〜~?」
下から、母の声がする。
はぁいと返事しながら、足早に階段を降りた。
僕の家は、父、母、そして姉が一人いる。
それ以上特にいうことがない、何の変哲もない一般家庭だ。
両親はとにかく優しい。いきなり転職したいと言った時も、全然抵抗することなく許可するほど。
姉も姉で、とっくに結婚して家を出ているけど、休みのたびに子供を連れて帰ってくるほど仲もいいんだよね。
「どうしたの、お母さん」
「今から、お姉ちゃんと子供たちのお買い物にいくけど、明音もいく? 旦那さんが車出してくれるって」
「あー、今日はいいかな。その辺で食べるよ」
「そう? お父さんは今日帰り遅いみたいだから、もし出る時は家の鍵よろしくね」
「うん、いってらっしゃい。ほら、お姉ちゃんも早く……」
「ねえ明音。どーせでるなら、その好きな人誘ってランチでもいったらどう?」
姉の言葉に、思わず変な声が出る。
その反応が面白かったのか、彼女はにやにや笑っていた。
「い、いいよそこまでは! 彼女に迷惑だよ!」
「えー、そんなこと言ってる場合ー? 告白したってのにまだ付き合ってすらないんでしょ? 舐められてるよ、絶対」
「真冬さんはそんな人じゃありません!! あまりガツガツいくのも、どうかと思うし……今は店のことで、それどころじゃないと言うかなんと言うか……」
「ふーん? あ、だったら、他の店偵察してきたらどう? 勤務先的にも役立つし、その子と行けば一石二鳥になるんじゃない?」
そう言いながら、「私天才じゃない?!」と自画自賛しつつ、足早に車に乗ってしまう。
中で、姪っ子たちが手を振っていたので、応えるように振りかえす。
姉はとにかく、恋に貪欲だ。少女漫画のような恋が好きで、毎日のように僕に語っていた。
そんな姉の影響で、自分も恋や結婚に憧れを持つようになったのだろう。
しかも今の旦那を、一目で運命だと言い張り、猛アピールの末結婚までしてしまって。今では二児の母。
まさに、行動力の塊。僕とは似ても似つかない。
まあ、こうには「お前も変わらねえだろ」って言われちゃったけど。
……他のお店の偵察かぁ。
「……そうだ、こうに電話してみよう。まずはお店のことが優先だし、真冬さんとは、また行けるかもしれないしね!」
誰に言うわけでもない言い訳を、一人呟く。
携帯に指を走らせながら、僕は足早に準備を終わらせた。
「えーっと、ここを右に、と……あ、あった! ここだ! さすがこうは、いろんなお店知ってるなぁ」
携帯のマップと店の看板を、交互に見る。
電車で15分、路地を進んだ先にある喫茶店にやってきた。
ちなみに、この店を選んだのは、僕ではない。この場にいないこうである。
『わりぃ、今実家にいてさ。くそばばあ……お袋に、ダチのペット預かれっていわれて、身動きとれねぇんだわ。代わりに行って来てほしい店を送るから、好きなとこ行って盗んでこい』
ちなみに、こうの両親は元ヤンキーだったらしい。
この強面は親のせいだ、なんて言ってはいたけど、さすがに頭が上がらない様子だ。
行きたかったのか、終始舌打ちしていて、電話越しから聞こえる鳴き声相手に怒ってたっけ。
と、いうわけで結局一人なんだけど……
「一人で喫茶店って初めてだな……緊張してきた、かも」
何をするわけでもないというのに、謎に身構えてしてしまう自分がいる。
ごくりと唾を呑み、気が済むまで深呼吸していると……
「ねえ」
「ぎゃっ!!!!!」
「入らないの?」
突破なき声に、思わず声が出る。
振り返ると、そこには金髪の青年がいた。
小柄な外見に、目がくりくりしている。
エメラルド色に輝いた眼差しは、吸い込まれるように綺麗で、つい見入ってしまう……
「とーこー、変な人見つけたー」
はっ!! しまった、つい!!
「ち、違います!! 僕、変な人なんかじゃ……」
「えぇ、変質者ですかぁ? いくら蜜柑が可愛いからってぇ、困っちゃいます〜」
聞き慣れた、声がする。
大きな車からでてきたのは、願わくば会いたくない、なんて思ってしまった人でー
「ていうかぁ、その名前で呼ぶなって何度言えば……あら? よく見たらあなた、アルカンシエルの店員さんじゃない。奇遇ですね、こんなところで」
くつくつと、彼女が嘲笑う。
日傘の下、微笑んでいたのは店を閉店にと言った、財前蜜柑さんだったのだ!!
(つづく!!)
おまけの小ネタ
明音から電話が来る前の話ー
黄河「………暇だなぁ……( ˙ω˙ )」
☎︎( ˘ᵕ˘ )℡➰➰➰
黄河「……げっ(´-д-`) なんだよお袋」
黄河母『あんた、今暇?』
黄河「たった今暇じゃなくなったな」
黄河母『あたしさー、今から友達とランチなんだけどよ』
黄河「聞けよ( ・᷄-・᷅ )」
黄河母『その友達が、ペット飼ってて。預り先がみつからなくて詰んでるんだわ。あんたみててくんね? 出てる間だけ』
黄河「はぁ??(゜Д゜)ふっざけんな、なんで人んちのペットのお守りとか……」
黄河母『はーーん、そんなこというんだ。へぇぇぇ。
あーー、急にコーヒー飲みたくなってきたなぁ。働いてる店、今度いこうかなぁ( ・-・ )」
黄河「……スミマセンデシタ、ヨロコンデ面倒見サセテモライヤス」
この後、ペットに振り回されました。




