12.開廷! アルカンシエル存続会議!
前回のあらすじ。
閉店危機に陥ったので
みんなで対策会議を開いた。
朝の喫茶店に、静かなBGMが流れる。
そんなBGMをかき消す様に、こうが咳払いをしながらテーブルを叩いた。
「これより、アルカンシエル存続会議を始める!」
どうも、聖明音です。
現在、アルカンシエルのため、存続会議中です!
「いい意見はじゃんじゃん取り入れるぞ。意見のあるやつ、挙手!」
「はいはーい! SNSは欠かせないと思いまーす!」
那月さんが、お盆片手に笑顔で答える。
彼女から出てきた案は、いかにも女性らしい、センスが溢れたものだった。
「うちの店、アカウントあるのに全然活動してないじゃん? だから、もっと活発化させよーよ! 映えそうなスイーツとか、美味しそうな料理作ってそれをあげてくの。こんな感じで!」
そう言いながら、彼女は自分の携帯を開いてみせてくれる。
彼女が見せてくれたのは、オンスタといって、写真などを投稿できるアプリで、若い人が主に使っているツールだ。
様々な角度から撮られたスイーツや、他の店内の様子が投稿されていて、とても綺麗にみえる。
が、それだけではない。僕が驚いたのは、フォロワー数が桁違いだということで……
「ていうか那月さん、めちゃくちゃフォロワーさんいるじゃないですか! すごいっ!」
「え〜そうかなぁ? それだけそこのスイーツが魅力的なんだよ! ね、どうかなこう君」
「はぁぁぁ、SNSねぇ…… あんまり気乗りしねぇが。メニュー増やすのはありだよな、季節限定とか」
「なら、この店にしかない取り柄をPRするのもいいんじゃない? 例えばコーヒーの味とか。黄河、無駄に素材凝ってるでしょ」
「無駄とかいうな、こだわりが強いと言え」
SNS、季節限定、この店にしかないもの、次から次にホワイトボードが埋まってゆく。
み、みんなすごい……ちゃんと考えてるんだなぁ。
ぼ、僕も何か出さないと! うーんと、えっとぉ……
「ネットで調べたら、地域のイベントへの参加や、ちらしの掲載……色々あるね」
「イベントなぁ……参加もいいが、ここでやるのもありだよな、せっかく舞台あるし」
そういえば、この店の奥には小さなステージがある。
数段の木製階段の先、壁一面に深い赤のベルベットのカーテンがかけられている。
しばらく使われていないのか、スポットライトは電球が入っていないし、壁沿いにある機材は皆、埃かぶっている。
確かにせっかくあるのに、使わないのはもったいないよなぁ……
と、その瞬間。店内のBGMが切り替わる。
思わずはっとしてしまい、耳に全神経を集中させる。
このフレーズ、この曲調、間違いない……!!
だって、この曲は……!!
「青天目さん! この曲って!!」
「……ああ、ムーンライト・セレナーデか。知ってるの?」
「知ってるも何も、青天目さんが吹いていた曲! ですよね!?」
途端、言葉に、彼女の顔が引き締まった気がする。
その絶妙な変化に気づくことなく、僕はなおも続けた。
「そうだ!! ここで演奏会を開くのはどうでしょう? この舞台を使って、演奏してもらうんですよ! その日限定でバー営業とかして! 雰囲気出ると思いません?」
「随分具体性あるアイデアだな。呼びたいアーティストとでもいるのか?」
「えへへ。青天目さんに、サックスを弾いてほしいなぁって!!」
思わず声が、大きくなる。
瞬間、那月さんが目を丸くしながら、彼女を見ている。
青天目さんは、こちらを振り向きもしない。
逆に、こうは「はぁ?」と怪訝に顔を顰めた。
「なんでそこに真冬がでてくんだ? こいつ関係ねぇだろ」
「こうは知らないかもだけど、めちゃくちゃうまいんだよ!! 青天目さんのサックス! それがきっかけで僕好きになったもん!」
「……好きになったって、まさかお前、演奏会したいっつった本当の目的って……」
「勿論! 青天目さんのサックスを聞くため!!」
「………んなこったろうと思った。俺の関心返せ」
「ちょ、ちょっと待って。なんで明音君が、真冬のサックスのこと知って……」
「僕、見たんです! 青天目さんが吹いてるところ! その時から思ってたんです。もう一度聞きたいなって!」
そう。忘れもしない。あの日のこと。
あの日のことがあったから、僕はここにいる。
叶うことなら、もう一度聞きたくてー
「あ、あのね、明音君。真冬は……」
「……いいよ、那月。そういえば、言ってなかったね。僕、やめたんだよね。サックス」
一瞬、店内が静まり返った気がする。
それでも彼女は何事もなかったように、テーブルをふき始める。
え、まって、今なんていった?
やめた?? やめたって、何を??
「あ、あのぉ、今なんと……」
「だから、やめたの。サックス」
「えぇぇぇぇぇぇ?! やめた!!? なんで!!!!」
「なんでって言われても……もういいかなって思ってさ。飽きたんだよね」
「そんな理由なんですか!?」
そういう間も、彼女は机を拭き続ける。
まるで、頑なに目を合わせないように。
まさか、そんなことあっていいのだろうか。
僕が惹かれたきっかけでもあるサックスを、ものの三ヶ月でやめているなんて!!
も、もったいない……あんなに綺麗な音色なのに!
「そういうわけで、吹くことはないから。諦めてプロでも呼んで」
いつにも増して、突き放す様な言葉に僕は何も言えなくなってしまう。
瞳が、背中が、いつもより沈んだ影を落として、僕の脳裏に焼きついてー
この日、縮まったと思っていた僕と青天目さんとの距離は、また遠ざかってしまったのだ……
(つづく!!)
おまけの小ネタ
明音(そ、そんな……まさか、青天目さんが、サックスを辞めていたなんて……!ガーΣ(`・ω・Ⅲ)ーン)
黄河「……なんなんだよ、あいつ。やけにつめてぇな」
那月「えーっと……な、なんか違う話しよっか! ほら、アイデアだいぶまとまったし!( ˊᵕˋ ;)」
黄河「アイデアねぇ……演奏会はどうするんだよ」
那月「普通にプロの人呼んでみる、とか? 知り合いにいないか、あたってみよっか。ねえ、明音君はどう思……」
明音「(〇△〇)」←返事がない。ただの明音の様だ。
那月「ど、どうしよう、こう君。明音君、ショックでフリーズしちゃってる……(•ᴗ•; )」
黄河「どんだけだよ( ・᷄-・᷅ )」
わかりやすい男。




