ラナミのターン!
ライミ様を宥めるのでもう疲れた。特に無言で肩を掴んで見つめてくるのはやめてください。目線逸らせなくて色んな意味で落ち着かなくなるんだよ。
人が攫われていることを言ったら案外すぐ引いてくれたので、なんで最初から言わなかったのか後悔に襲われている。が、時間に余裕がある訳では無いので、助けを求めに行こうと思う。
確かクエストの受付さんが言っていた。ライミ様が僕に用意したクエストは街の有名な人ばかりだと。その人たちがお願いすれば、街の人も手伝ってくれるんじゃないかな。
総出で探せば、さすがにナミさんを見つけることは出来るはずだ。後は不良をフルボッコにするだけだから勝ち確と言っても間違いないだろう。
つまり僕は、大勢の人に働かせて自分は何もしないようなものなんだけどね。
見つけても逃げきれずにまた殺されるのが見えているから、大人しく寄生プレイとでも洒落こみますか。
そんな感じで意気揚々と助けをお願いしに行ったんだけど、実はカナミさんが話を通してくれてたみたいで全員すんなりいった。
用事があるって言ってたのは本当だったみたいだ。おかげで、行動はスムーズに進んでいるし助かっている。
さすがに僕を置いてライミ様から逃げ出すわけないよね?…いや、普通に逃げたかったから逃げた可能性もありそう。
まあ結果オーライだしいっか。
捜索を始めたのが3時頃で、1時間経った今も見つけられずにいる。人がバケツリレーのように端から端まで伝えていくのは見てて正直キモかった。キモかったが、効率は良さそうで全てのところを探せたと思っていた。
僕は1時間ずっと上から見続けていた。上と言っても、ちょっと高いところから見ていただけだけどね。だからこそ、気づけたかもしれない。人混みの中に変な動きをしている奴がいることを。
よく見ると、フードを軽く被っている人とその保護者らしきおじさんがくっついて歩いている。一見普通そうに見えるが、どこかおかしいのだ。
その違和感の元を確かめるべく注視すると、おじさんの手がフードの人にずっと付いていた。
しかも、時折方向を指示するかのように動き、フードもその通りに動いている。1時間探して見付かっていなかったのもあって、怪しい者は徹底して調べるという空気が生まれていた。
僕は近くにいるカナミさんに話しかけた。
「カナミさん、あのフードの人とおじさん怪しくないですか?」
「ラナミでいいって言ってるのに…。ふんふん、ちょっと確かめにいこうか」
「はい!…でもどうやって?あの人混みの中に行こうとなると時間がかかりますし、その間に逃げられてしまうかもしれないと思うんですけど」
「それはね……こうするんだよっ!」
そう言ってカナミさんは飛び降りた。ドン引きである。ここ30メートル以上は普通にあるんですけど?
それに、飛び降りるとなると僕は結局行けなく無いですか?
「おーい、飛び降りてきな!!ちゃんと受け止めてあげるから!!」
「無理無理無理ですって!!死んでしまいます!!」
「私を信じて!大丈夫大丈夫多分なんとかなる!」
「そんな無茶な!」
本当に行くしかないのか?でもこうしている間に時間は進んでいく。ええい、覚悟を決めろ僕!
大丈夫死んでも蘇るさ!Go Sky!
「うわあぁぁぁぁぁぁ!!!」
「かもんかもん!」
手を振って待ち構えているカナミさんを見ると不安しかないけど、なんか逆に落ち着いた。それが良かったのか、なんの怪我もなく着地することができた。
着地というか、カナミさんに抱かれているわけなんだけどね。
いわゆるお姫様だっこというやつだ。
カナミさんと目が合う。
「ユト君、まさかそんなすぐに来るとは思わなかったよ…」
「カナミさんが言ったんじゃないですか!」
「ラナミ、でしょ?言うまで下ろさないよ?」
「…フードの人追うんですよね?早くしないと」
「早く言わないとこのまま追っちゃうかもな〜?」
「すみませんでしたラナミ様下ろしてください」
「ラナミ、様は要らないよ」
「……ラナミさんで」
「今はそれでいいよ。今はね」
意味深な笑顔で僕を下ろす、カナミさん。いや、ラナミさんか。なんだろう、ラナミさんと言うとラナミ様が凄い顔でこっちを見てくるような錯覚を覚える。
怖い。一体僕が何をしたって言うんだ!
「よし、追うぞ!」
「位置分かるんですか?」
ちなみにナミさんにつけていたGPSと録音機はバレたのか壊されてしまった。録音機さん、ついになにも仕事をすることなく生涯を終えてしまう。
「大体ね!着いてきて!」
カナミさんが手を差し出してきた。なんの事か分からずに首を傾げる。
「あーもう!この人混みだとはぐれるでしょ!手繋ぐの!」
「あーそういう事ですか……ライミ様になんか言われたりしません?」
「バレなきゃ問題ないわ、早く掴んで!」
僕がいくら力を入れても簡単に振りほどかれるのを知っているので、離れないように全力で握った。
その瞬間、ぐいっと引っ張られた。
「ちょっ、ラナミさん!速いです!」
「あははっ!ユト君が遅いだけだよ!ほらほら、もっと急いでいくよ!!」
楽しそうなラナミさんに強く言うことも出来ず、結局はされるがままに引っ張られるしか無かった。




