本当に騙されていたのは…
見つけた時からそこまで動いていなかったのか、フードとおじさんはすぐに見つかった。
「そこのフードの人、ちょっとお話してもいいですか?」
「っ!?」
フードは何かを伝えようとしたのか、かすれた空気の音が聞こえたが、おじさんが喉を掴んで強引に連れ出した。
「皆さん!その男を捕まえてください!」
僕が言わなくても異常事態だと思っていたのか、周りの人はおじさんを捕まえようとする。しかし、おじさんはタックルを仕掛けるように突進して人の輪を突き抜けていく。
そのせいでおじさんが通った道はぽっかりと空いていた。すぐさま追いかけ出す僕達だが、必死に逃げるおじさんに距離を上手く詰められずにいた。
そのまま路地に入っていく。だが、そこでおじさんの命運は尽きた。行き止まりに着いたのだ。
やけになったのか、逃げられなくなったおじさんはナミさんの首にナイフを突きつけて人質にした。
「おい!こいつがどうなってもいいのか!これ以上近付いたら殺すぞ!」
「くっ!」
おじさんと僕たちの距離はそこそこある。相手が反応する前に反撃することが出来ない距離だ。
かといって、ジリジリと近付いて気づかれてしまえば警戒されてしまう。
「おじさん!これ以上は無意味だよ!投降して!」
僕達に残された選択肢は説得しかない。おじさんが人質を取ったところで、逃げる手段がないのだから意味が無い。
「無意味?違うな。俺らにはボスが居るんだよ!」
「ボス?」
「ほら、来たぞ」
おじさんが上を指さしたので釣られて見ると、人が浮いていた。ボスがやってきたのだ。
「何やってるんですか、全く。これだから歳だけとったジジイは…」
嫌いな男だ。そう直感した。だが、どこかで見たような気がする。……あっ、アレだ、ナミさんにカイくんと呼ばれてた人だ。
その証拠に、ナミさんが凄い驚いた顔をしている。
「カイくん…?なんで……」
「ナミ。お前は黙って金だけ寄越してれば良かったんだよ。それなのに逃げたりするからこんなことになるんだ」
「カイくん…この人に騙されてるんだよね?本当はそんなこと言う人じゃないでしょ……?」
「…?お前、もしかしてまだ気付いてないのか?ばっかだなぁ!あはははははっ!!!逆に哀れだよ!」
ナミさんは呆然としている。なんかこう、鼻に来るんだよなぁ、カイってやつ。人を小馬鹿にした笑いとか。
よく今まで隠せてたな。ああいうやつって、心の底では馬鹿にしてるのが見えるから避けられると思うんだけど。
それに、あいつまだ20代ぐらいに見えるのにおじさんにすごい偉そうなんだよなぁ。
罪人って、基本的にステータスは進化の実で上げてるから生きた年数だけ強くて敬われるって聞いたんだけど。
数十年の差を埋めるほどのステータスがあるっていうのか?とてもそんな風には見えないけどなぁ。
「何が目的なんですか?」
とりあえず目的を知りたいから話してみることにした。場合によっては交渉出来るかもしれないし。
「目的?そうだな……強いて言うなら、復讐だよ!こんな馬鹿ばっかりの腐った世の中になぁ!」
「それにナミさんが関係していると?」
「そうだよ。こいつが悪いんだ。こいつのせいで僕の人生は終わったんだよォ!」
これ以上踏み込むのは、危険な気がした。だけど、それが必要な事だと思うから。
「何が、あったんですか?」
「………いいよ、話してやる。僕は生まれながらにして神に愛されていた。周りが1年でステータスを100や200上げてる中で僕は500以上上がっていた。神子だと言われていた時期もあった。だけど、ナミに出会ってから全てが変わった。ナミと会う度に、進化の実を食べてもステータスが増えないことが多くなった。最近家族が事故にあった。全部全部ナミのせいだ!」
今まで失敗を経験したことがなくて、それでどうしたらいいのか分かんないのか。途中まで完璧だったせいで拗れてるんだろうなぁ。めんどくさ…。
「それは確かに辛かったかもしれません。ひとつお聞きしてもいいですか?」
「なんだよ」
「今までに称号や職業を設定したことはありますか?」
「……ない、けど、それがどう関係するっていうんだ」
「少し待っててください。今、称号と職業を設定する水晶を持ってきてもらっているので」
実は、ライミ様の仕事と色々噛み合っちゃったんだよね。ライミ様の仕事にこいつは関わってくるし、どうせならライミ様に任せようかなって思っていたところなんだ。
まさか、ナミさんを誘拐してたとは思わなかったけど。
一応こいつが出てきた時点で、近くにいた人に伝言を頼んでおいた。後は水晶が来るまで時間を稼ぐだけだった。
案外話が長くて稼ぐ必要もあまりなかったけどね。
水晶を誰かが持ってきてくれたのでそれを受け取る。そして、それを見せながら話しかける。
「ここに水晶があります。僕が左手に持っている方が職業、右手に持っている方が称号を設定できます。設定するには水晶に触れる必要があります」
「…それがなんだっていうんだ?」
「見れば分かります。ここに水晶を置くので確認してください。その間、僕達は何もしません」
そう言って僕達はかなり遠くまで下がった。彼は警戒しながらも水晶に触れた。
「なっ!?なんだこれは!!」
「なんと表示されてました?」
まあ予想はつくけどね。あらかじめライミ様から聞いてるし。
「職業〈不運者〉…称号〈悪魔に呪われた者〉…」




