3-1・マジック・ポイントの無駄づかい
その日は、盛りの春にありがちな、すばやく雲が風に動いて、雷鳴がとどろき、数回大きな音がすると、近くに雷鳴と稲光が光った。
この部室とその周辺は、防雷が行き届いてるから落ちる心配はないんよ、と、ミドリは言うけど、ヒトである部員の3人は飛び上がって驚いた。
どうやら小高い丘の上の、かつては教会だったところに落ちたらしい。
「魔王の復活か?」と、部長のミロクは頭に座布団を置き、ぷるぷるしながら言った。
「うーん、これは少しやりすぎになっちゃったのね」と、ミドリは頭をかきながら言った。
「今月で使用期限が切れるマジック・ポイントがあったから、この世界ではどんくらい威力があるもんかと思って」
「そういう攻撃力ある魔法使うなよ。もっと、町の害虫退治とか……」
「これは爆裂魔法の一種で、対魔専用のだから仕方ないのね。来月まで待てば、今月の倍ぐらいのマジック・ポイントが切れる予定なので、そのときまでにたいした事件が起きなければ、町のゴキブリ全滅……いや、半滅ぐらいはしてあげるよ」
ミドリは、横で猛烈に首を横に振るワタルを見て、後半を言いかえた。
ネコ的には、ゴキブリが多少いたほうがいい、とのことである。
しばらく、猛烈な雨と風が続いたので(体感的には1時間ぐらい)、ミドリは庵の周りのバリアをやや強めにしてくれた。
「24時間この状態を続けると息苦しくなるから、普段は弱めにしてあるのよね」というのがミドリの説明である。
明日の始業式には絶対来てくれ、という生徒会からの通知を見て、おれたちは「行けたら行く」という、例の返信をしておいた。
通常だったら、新入生も含めて全校生徒の3分の1ぐらいもくればいいんじゃなかろうか。
「あーあ、また始業式かあ」と、クルミはやさぐれた感じで言った。
「魔法学園の中等部では、新入生代表の答辞やって、歓迎の祝辞やって、卒業の卒辞やらされたんですよー」
「そうだね、そういうの一度やると最後までやらされちゃうんだよね」
今年の生徒会長は新三年生で、たしかミロクの友だちだったはずで、じゃなかったらこんな雑で冒涜的な部活などは認められていなかったろう。
悪天候の中を帰るのは大変なので、家のほうには、少しおそくなる、と連絡をしたあと、おれとミドリは縁側で時間つぶしの将棋をした。
ワタルは、卓球でもしないか、とミナセを誘って、物置(これは、部室や薬草室には収まらない大道具が置かれている)から折りたんでしまっておいた卓球台を、クルミと一緒に庭に広げ、バケツ一杯のピンポン玉も用意した。
「さあこい!」と、ワタルはラケットも持たない手を適当な幅に広げ、ミナセはせっせとサーブの球を送る。
すごいうまいんだよね。
ワタルは片目眼帯なんだけど、動体視力はいいんだな。
ぱし、と打たれた球を、ぶし、と受け取る。
でも、受け取るだけで、打ち返したりはしないのね。
せっせと球をクルミに渡して、30秒ぐらいでミナセのところにあったバケツの球は、ワタルのほうのバケツに移り、それを3バケツ分ぐらいやったら、もう飽きてしまったらしく、クルミと交代した。
クルミは、かねてから用意してあったと思われるスリッパで、温泉卓球のレベルを越えた素早さで、それなりに運動能力はあると思われるミナセの相手をしていた。
将棋卓球みたいなスポーツは異世界にはなかったの、と、おれはミドリに聞いてみたら、あんたバカなん、と、スナギツネのような目で見られた。
ちなみに、チェスボクシングは、この世界と同じようにあったらしい。
「戦闘シーンの描写が面倒くさいらしく、作者ちゃんと書いてくれなかったのね」と、ミドリは言った。
おれも作者だったら、多分そう思うだろう。
*
「あーっ!」と、大きめの携帯端末の画面を見ながら、だらぱたしていたワタルは声をあげて、おれに画面を向けた。
「この事件を解決したい」
このあたりから「ミステリーの連作」みたいに、ちゃんとなって行きますので、ご期待ください。元ネタ、というか、発想のヒントになったようなものは、連作のひとつが終わったらやろう。




