6-3 大敵
結局、俺は押し負けて偵察に向かうことになった。カイリィさんはどうしても俺が捕まる前提を崩そうとしない。とはいえ正直に死に戻りのスキルなど話せば、とりあえずスキルの詳細を調べるためしばらく捕まることには違いないか。隊の目当ては《即死》スキルだけではない、全てのスキルが、調査対象なのだ。そういえば。ユイのスキルが《即死》スキルが否か、という話があったが――《即死》スキルと括られるとはいえ、別にユイが人殺しをした訳ではない。それに今は制御もできているようだから物をそう壊すこともないだろう。だから彼女が今後、隊に目をつけられるようなことがあっても、俺は彼女の味方でいたい。それはあるいは、大きな代償を伴うものかも知れないが。
とかつらつら考えながら《部分即死》を探すため外を歩いていたら、月夜隊の捜索班と鉢合わせた。
先頭はアジュさんだった。
「あのですね。貴方が我々に従わなければ従わないほど、貴方への猜疑が強まることを理解していますか? ファレノ・パントドンの行動も貴方が無駄にしているのですよ」
そのカイリィさんが俺に行けと言ったんですよという口答えは飲み込んで、俺はしおらしくしている。さてどうしよう。捜索班の構成は四人。全員兜と鎧を着けた完全装備。カイリィさんと考えは同じということだろうか。つまり――《部分即死》の対策は変えなくていい、と。つまり彼女たちはただ《部分即死》を捕まえるために捜索しているのだ。まあそれで捕まえられるならそれでいいだろう。カイリィさんは蓋然性が低い事態に賭けるとは言っていたが、結論は生き残った隊員の言い間違いというのでいいのだ。ここから無理に探りに行って下手に拘束され、死に戻る刻限に間に合わなければ、本末転倒である。
そもそも今は、死に戻ったほうがいい状況だよな?
俺のスキルは、疑われているどころかもう言わなければいけないことになっている(カイリィさんのせいで)。《部分即死》を逮捕して落ち着いたら再び訊かれるだろう。また隊から死者が出ている。一度目の脱走時の死亡者はもう助けられないが、二度目の死者は助けられる。そもそも――俺が牢を訪れていなければ鍵を開け閉めする必要がなく、その隊員は死んでいなかったかも知れないのだ。
死に戻りは決定事項。あとはどんな情報を持ち帰れるかだ。
「《部分即死》はどうやって探してるんですか? 捜索系のスキル持ちの人がいるんですか?」
アジュさんの小言が終わった後、俺はそう尋ねた。
彼女は――疑いの色を強くして俺を見下ろす。
「なぜそのようなことを訊くのですか?」
俺は答えに窮する。彼女は俺がその情報を悪用するのではないかと考えているのだろうが、悪用とまでは言わずとも隊に利益のある行動ではないことは間違いない。打つ手を間違えたか。誤魔化しようがないかも知れない。
うーんと頭をひねっていると、一度目の隊の捜索を思い出す。一度目というのは――俺が知ってる一度目。死に戻る前、俺たちが身体を張って《部分即死》を探した時だ。あの時はかなり時間がかかっていたように思うが、捜索系のスキル持ちは流石にいるのではないか。それでも時間がかかるというのは――スキルの捜索範囲と《部分即死》の潜伏場所が噛み合っていなかった、もしくは、
俺たちが、泳がされていた。
それは疑い過ぎか? とも思ったが、信じ過ぎるのもよくない。そもそも相手はこちらを疑っているのだから、多少慎重過ぎるくらいが丁度いいだろう。つまりあの時に俺たちが見つからなかったのも今回俺がすぐ見つかったのも、偶然ではないということか、と勘繰ったところで、
「副隊長、見つけました」
隊員のうち一人が小声で言った。アジュさんはすぐに切り替えて、
「向かいます。リドークは大人しくついてきなさい。エステリは引き続き感知を。ザラはリドークを見張っていて下さい。インサーはエステリの指示の下、単独行動を許可します」
四人班から一人が抜け、二手に分かれて行動が始まった。とりあえず大人しくついていく。俺を見張る役だというザラさんは鎧を見ていても分かるほど逞しいし。
○
そして《部分即死》は捕まる。あっさりと。
拍子抜けではあったが――それが隊の実力であり、隊を敵に回すことの恐ろしさなのだろう。
しっかりと《部分即死》の目に覆いをつけ、手に枷を嵌める。
俺も確認したことだ。
「ふう。流石に疲れましたあ」
恐らく捜索系のスキルを持っているのであろうエステリさんが兜を脱いだ。中から出てきたのは思っていたより若い(といっても俺よりは年上)女性だ。綺麗な顔立ちにハッとするが、同時に――悪寒。
何だか嫌な――視線。
「エステリさん!」
そう叫んだのは、インサーさんだ。
しかしその判断も既に遅く、
彼女の首は、道路に転がった。
べちゃちゃ、と血が飛び散る。
「――え?」
反応が遅れたアジュさんに――《部分即死》が飛びかかる。
彼は目に覆いをつけられているはずだ。しかし彼は正確に狙いを定め彼女に向かっていく。その目は、
瞳が。
彼の額にあるのが見えた。
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