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過去を捨てるって何なんだろう。僕にはよくわからなかった。


僕は、泣いているお姉さんに何も言えなくて、ただ黙って…………背中をさする事しかできなかった。


「ここを見てみろ。この家を。過去を捨てなければ、新しいものの入る余地なんかない。」

おじいさんがちからなくそう言った。


新しいもののヨチって…………?


「どうした?リンは誰かに捨てられたのか?」

シェロはハッキリお姉さんにそう聞いた。


さすがの僕でもわかる。それはデリカシーのない質問だと思う。


「多分、私、ヒロに捨てられるんだと思う。」

ヒロ?彼氏とかなのかな?

「ヒロ?誰だ?それ。」


「弟。双子の弟。ずっと一緒にいるって約束したの。約束したのに……。県外の高校に行きたいって言って1人で勉強してる。」


シェロがよくわからないという顔で、お姉さんを眺めていた。

「それってどうゆう事?」

やっぱりわかってなかった。


「高校生になったら、双子の弟と一緒にはいられないって事だよ、シェロ……。」

僕がシェロに説明した。


「それが、自分だけ置いて行かれるみたいで嫌。でも、ヒロを応援できない自分も嫌。」

「それ、どっち?わかんね~!」

「うるさいな!自分でもどっちかわかんないよ!わかんないから苦しいんだよ!!」


泣き止まないお姉さんに困り果てたシェロは、僕の方を見た。シェロは僕を見て、犬のように僕に頭をこすりつけてきた。

「俺達も約束したよな。ずっと一緒にいるって。」

「約束…………した?」

僕がそう言った覚えはなかった。


初めて来たのは幼稚園の時だったから、もしかしたら覚えてないのかもしれないけど……。

「覚えてないのか?じゃ、今する。俺は隼人の側にずっといる。約束だ。絶対に約束、守るからな。」

「シェロ、ゴミ臭い……。」


シェロの頭からゴミの臭いがした。きっと、ゴミの中でゴロゴロしてたからだ。

「ごめん。」

「いいよ。ゴミ臭いのはシェロのせいじゃないよ。」


「そうじゃなくて…………俺、俺が、本物のシェロじゃなくて……ごめん。隼人の願い、叶えてやれなくて、ごめん……。」


僕は首を横に振った。

「うんん。いいんだ。シェロはシェロだよ。」


謝らなきゃいけないのは、僕の方だ。ごめん、シェロ……。


本物のシェロを探すだなんて言って。犬だからと思って、言葉がわからないと思って、傷つけてごめんね。


本物のシェロって何だろう……?本当は、薄々気がついてた。願いの叶えてくれる龍なんて、現実にいるはずなんかない。


もう、龍のシェロを探すのは止めよう。シェロが可哀想だ。


今はもう、こっちが本物だ。


シェロが、本物のシェロ。


僕は、自分の事しか考えてなかった。何も考えずに、家にシェロの事を置き去りにしてきた。


置いて行かれた方の気持ちなんて考えて考えてもみなかった。それなのに…………シェロに謝られた。


初めてやった事が上手くできないのは当たり前。だけど、できないのが当たり前だと思って、開き直っちゃいけなかった。


ちゃんと、失敗したら謝らなきゃいけないんだ。期待に答えられなくてごめん……迷惑かけてごめんって……。


シェロみたいに、ちゃんと、素直に…………


僕も…………謝ろう。


「僕、そろそろ帰らないと……。」

僕はゴミの上から、立ち上がった。


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