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王族に生まれてしまったら  作者: 陸 なるみ
第十一章 目の前にあっても見えない答え
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決闘相手と船に乗れば

最終章の始まりです。


 ラドローはフランキ船の甲板で海峡を渡る風に当たっていた。心は今にも空を飛んで、パラシーボ城に舞い下りたい気分だ。

「ピオニアに話したい。フランキのこと、サリウのこと、決闘のこと。ああ、大丈夫だろうか、赤ん坊はもう産まれている筈だ。寝込んでいないだろうか? 母子ともに健康だろうか?」


 サリウはまだ船や馬に揺られないほうがいい。

「よく見張っておくから、ラドローは早く姫さまのところに帰りなさい」

 とマチルダに云われ、折よくグザビエが到着したものだから、フランキ城を後にすることにした。

 サリウは

「あれ程云ったのに、国事を疎かにして」

 とグザビエに文句を云っていたが、うっすら頬が染まっていたのは怒っていたからじゃない。

「ジャレッド様にご相談したところ、『留守は任せろ、乗っ取りはしないから』とのことでした。『この筆跡の手紙には従ったほうがいい。フランキにいるなんて思いもよらなかったが、決闘の助っ人にはもってこいだ。こっちに挨拶がないのは気に入らないけど』と」


「怪我人見舞い要」というだけの文面で筆跡がバレたらしい。

 九つ年下のジャレッドに自分の恋愛沙汰を話すのがテレくさくて、アイツにとって自分はまだ行方不明状態だったとひとり笑いした。

 

 そんなことを思い出していると船長が近付いてきた。決闘でやりあった軍人のキアヌーだ。

「そろそろサリクトラ領海に入る。フランキの旗とサリウ王から預かった紋章旗、中立の緑色旗を掲げているから襲ってくることはないと思うが、王様がフランキにお忍びで来ているなら、サリクトラ海軍が勝手に動くこともあるんじゃないのか?」

「サリウが大丈夫と云うなら大丈夫なんだろう」

 肩をすくめると軍人は「そんなものか?」と首を傾げた。


「なあ、このまま船でパラシーボに行けないか?」

「パラシーボ? メルカットの北に位置する国か? 私はレーニア沖より東には行ったことがない。海図なしで行く自信はない」

「そうか……、船で行ければ明後日には着けそうだけどな。陸路ではサリクトラを縦断、パラシーボを横断、四日はかかりそうだ。翌日筋肉痛だろうし」

「悪いな、船と船員を危険にさらすわけにはいかん。メルカット領海に入っただけで東国仕様の船に追われる」


「フランキ船と東国船、どちらが強い?」

「戦わせたいのか?」

「いや、参考までにおまえの意見が聞きたいだけ」

「東国船だ。得体が知れない。帆の開閉が異常に速い」

「人力じゃないとか?」

「魔法じゃあるまいし。だが甲板でロープと格闘したりしない。マストと船倉に何か機械仕掛けがありそうだ」

「そうなのか。太刀打ちできないか?」

「フランキ船が? 冗談じゃない」


「サリクトラ船とだったらどっちだ?」

「フランキとサリクトラ? 一対一、同規模の船なら実は、サリクトラ船だ」

「マジか?」

 純粋に驚いたラドローにキアヌーは珍しく微笑した。

「フランキは農業国だ」

「ま、そうだな」

「東国船に対抗できるとしたらレーニア船だ」

「レーニア?!」

「ああ、同じ大きさの船がやりあったら、レーニア船が一番だ。船足も転舵も素早い。大砲撃って自船が揺らがないのも凄い」

 急にジンガの顔を思い出した。大統領辞めて、早く船大工に戻りたいと云っていた。そしてフルク。海の男の中の男。



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