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王族に生まれてしまったら  作者: 陸 なるみ
第十章 王子でも民でも譲れないもの
105/120

王子であり民であるラドローの意見は

身分とか税収入とかの内政の話です。


すっと理解できるように書けていればいいのですが。短めにしておきました。


 フランキ王フィリオは年相応のびっくり顔で尋ねた。

「信じられない。そんなことが可能か?」

「可能じゃなきゃレーニアが困る」

 若い王の表情に笑顔を誘われる。


「奪い合いをする時代は済んだんじゃないかと思う。東の国が海賊と嫌われるのは、他人が築き上げた物を奪ることしかしないからだ。海峡の向こうから見るとフランキも似たように感じられる。だが実際は違う。伝統や経験を重んじ過ぎるだけだ。一度包帯して王の傷が治ると、その後はどんな傷にも包帯。土地を相続すると同じ大きさで子供に渡したい」


 ラドローは食事を終えてスープスプーンを置いた。

「レーニアは違う。土地も船も王室から借りていると思ってる。妙に感謝の気持ちで一杯なんだ。その上、限られた小さな島でどうやってみんなが生きていくかを考える。おまえも、フランキの国土は限られている、これ以上大きくはできないと肚を括ってみろ」

「でも……」


「サリウを助けた婆さんにもう少し感謝したいと思わないか?」

「もちろん、したい」

「城には来てくれないといったな、婆さんの名前で医学大学校を創ったらどうだ? ついでにレディの称号を与えて、婆さんの好きな時に好きなやり方で教えてもらう。決闘に出てきたあの軍人はどうだ、フランキのトップ剣豪じゃないか? 道場を開いてやれ。伯爵と呼ばれたっていいだろう?」


「貴族でも土地持ちでなくていいと云っているのか?」

「そうだ。持ってるのは農地じゃなくてもいい。学校持ってるとか道場持ってるとかでもよくないか? 大きな礼拝堂があったよな、牧師はどうだ、貴族じゃないのか?」

「ない。爵位を返上して神に仕える。とはいえ、出自が貴族でないと牧師にはなれない」

「尊敬はされるんだな?」

「ああ、喜捨が多く結構裕福に暮らせる」


「そういう立場や仕事をたくさん作るんだよ。土地持ち貴族が嫌がるなら区別できるよう新しい称号をつくればいい、貴爵なり特爵なり何とでも。医者、学者、教師、弁護士などはもともと先生と呼ばれ尊敬されるだろう? 貴族がなっても恥ずかしくないという意識を広めるんだ。貴族だって皆が土地管理をしたいとは限らない」


 わかり難いと首を振るフィリオに例証することにした。

「ランサロードの北にノルディカという国がある。そこには王はいるが貴族はいない。よく勉強した者が王の側近になる。一年のうち半分は氷に閉ざされるから、農業できる時期は少なく、うちにいる時間が長いんだ。その分、国中の子どもから老人まで誰もが本を読む。面白い話を書くと印刷されて多くの人に読まれる。書いた人間は『お話の先生』と呼ばれ重宝がられる。賓客として城でもてなされもする。本の売上から歩合制で国庫が儲かるようになっている」


「ああ、そうなのか。税の収入源を農業生産だけに頼ることはないということか」

「皆から税を搾り取れと云ってるわけじゃない。新しい爵位を創って、王立医学校とか王立道場とか、王立図書館とかカッコ良さげな職業を担当させる。特別感が出せれば、貴族の子弟もなりたがる。給金は国庫から払わなきゃならんが、利用者からお金を取って、ほんの少しは国庫に返金してもらう。民にだって医術や剣術を習わせて、出世の道も用意する。土地を持っているから偉い、というわけではなかろう? どうだ?」


「うちは農業国だから、土地への執着は急には消えないだろうが、方法はあるんだな。相続問題が減るだけでもいい。考えてみるよ」

「ノルマン公爵の次男に、カッコいい職と爵位を早く見つけてやってくれ」

 フィリオは珍しく、明るく笑って城に戻っていった。


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