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サイバーパンク2.0.2.5──だから中卒無職の寛太は〝チートスレイヤー〟と呼ばれる  作者: 東山統星
シーズン0 さぁ、馬鹿騒ぎの時間だ

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007 ゼロどころかマイナス

「は⋯⋯?」


 寛太のわざとらしい言い草に、茶髪の少女は口をポカンと開ける。

 その素振りを気にすることもなく、寛太は模擬室から立ち去ろうとした。

 が、ここで引き下がれるほど大人ではないらしい。少女は、寛太の右手を握る。


「ち、力が入んない⋯⋯?」


 寛太の指には、微弱な膜が張ってある。その膜は、あらゆる異能を無効化してしまう。そんなものに触れてしまえば、彼女は単なる10代前半の少女に変わりない。


「さて、もう降参したんで帰りますわ」


 銀の髪をなびかせ、寛太はその場から立ち去るのだった。


 *


「アニキ、どうだった? 久々の学校は」

「変なのに絡まれたよ」

「変なの?」

「茶髪の低身長で、なんか高速移動できる女の子」

「あぁ、勝又由利(かつまたゆり)か」

「知ってるの?」

「カテゴリー4で、強そうな子へは片っ端から喧嘩売ってる変人」

「面倒だねェ。強さの果てに、なにかあるもんか」

「あると思ってるから、喧嘩ふっかけるんじゃない?」

「中学生らしいね」


 適当に話し、寛太と霞は電車で家路につく。

 そうすれば、

 パコンッ、という破裂音が聞こえた。

 寛太と霞は、その音のほうへ向く。


「ぎゃあッ!?」


 肩から血を流し、骨すら透けて見える者と、血走った目つきで銃をそこらに構える男。まさに無敵のヒトといったところか。

 寛太と霞は一瞬目をあわせる。そして霞は、火炎放射器のような勢いで、相手になにかを言わせるつもりもなく、炎の弾丸を放った。


「ぐぉッ!?」


 寛太はボヤく。


「さすが、財政破綻しただけはある。銃と弾丸なんて、小学生の小遣いで手に入るもんね」


 皮膚がケロイドになった男に、寛太は駆け寄ってマウンティング体勢を取る。銃は彼方に飛んでいき、安全は一応確保できた。


「さて、おまわりでも呼ぶか~」


 どのみち正当防衛。それどころか、感謝状までもらえるだろう。寛太は退屈そうだった。


 *


「カテゴリー・エラー、か」


 この壮麗学園にて、最初に寛太──千尋に話しかけた少年は、あの銀髪少女の危険性を理解したようだった。


「首席様の妹ってこともあって、只者じゃないとは思ってたけど⋯⋯うーむ。なかなかのイカレ具合だ」


 壮麗のデータベースをクラッキングし、如何にあの銀髪少女が異質なのかを理解する。少なくとも、敵にはしたくないものだ。


「つか、もう撃墜記録があるな。カテゴリー4の勝又由利か。あの女、なにか引っかかったヤツには秒で喧嘩売る悪癖持ちだしな」


 梶原陽太(かじわらようた)は、カテゴリー3の能力者にして、壮麗学園随一のクラッカーだ。彼にかかれば、壮麗の最重要機密も丸裸にできる。

 そんなノートパソコンの前でにらめっこする梶原は、ある事実に気がつく。


「つか、西野千尋なんて者のデータは、つい最近無理やり追加されてるな⋯⋯。まるで、他人が西野千尋になりすましているかのような」


 西野霞のデータならいくらでも残っているが、千尋のほうは全く残されていない。いくら転校生といえど、この横浜市のデータベースは壮麗がすべて管理しているため、そんなことはありえない。


「うーむ」


 コーラやポテトが散乱する部屋にて、梶原は腕を組む。西野千尋という存在は、どこから湧いてきたのか。謎は深まるばかりだ。


「とりあえず、本人にヒアリングすべきか」


 あした、どうせ学校で会うので、そのとき根掘り聞こう。梶原はノートパソコンを閉じ、身体を伸ばすのだった。


 *


 千尋こと寛太と、霞は自宅へ帰ってきていた。ふたりが暮らすのは分譲マンションの一角。今や5000万円ほどの価値があるらしいが、所詮子どものふたりには全く関係ない話である。


「さてと、画面酔いするし、やることないんだよね」

「兄貴からゲームをとったら、ゼロどころかマイナスだもんね」


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