014 少女寛太VS壮麗PMCコマンド兵
「おれを、殺すだァ……?」
頭を抑えながら、コマンド兵は鋭い眼光で寛太を睨む。
「1000年早ェんだよ!! テメェみてェなガキに、〝コマンド〟のおれが負けるわけねェだろうが!!」
身体が思わず振動してしまうほどの、声量だった。寛太は腕を抑えて、無理やり震えを抑える。
コマンド兵は、〝棒〟を取り出す。単なる棒。洗濯竿に使われそうなくらいには、変哲のない棒だ。
そして、その棒に、コマンド兵はなにかエネルギーをためていく。この隙を狙うしかない、と寛太は、コマンド兵にマシンガンをお見舞いしようと引き金を引いたが、
「無駄だ……!!」
幽霊のように集まったエネルギーは、サブマシンガンの弾をも弾いてしまった。弾丸に限りがある以上、無駄撃ちはできない。だが、寛太の筋力で有効打を与えられるわけもない。数秒の膠着状態。
すると、
コマンド兵は、禍々しく紫色に変化した棒を持って、寛太のすぐ目の前に立っていた。
「……ッ!?」
「遅せェんだよ」
指を動かす余裕もなく、寛太は紫の棒で首元を殴られる。ゴキッ!! と鈍い音が響く。呼吸がまばらになって……いや、呼吸の仕方が思い出せない。
「張り合いのねェガキだな。ッたく、コマンドを3人も派遣するほどか?」
「ぜぇ、ぜぇ……」寛太は言葉を絞り出す。「オマエは、西野って野郎から特命を受けて私らを消しに来たんだろ……? あのジジイ、相当なビビリだよな……」
「だからなんだ? おれら壮麗のPMCは、ただ上の命令に従えば良い。オマエの姉らしきガキも、MI6のスパイも、メガネも、壮麗が消すに値すると確信したのだろうさ」
「あぁ、そう……ゲホッ、ゲホッ……」
「まぁ、殺しが本業ではあるが、いたぶる趣味はない。頭にコイツを喰らえば、一瞬であの世へ行けるさ」
わざわざ会話していたのにも意味がある。まず、コマンド兵は寛太を侮っている。だから、すぐトドメを差す必要もないと感じたのだろう。もう呼吸もまともにできていない女子に、いちいち本気を出していたら、彼にもサイコ・キラー化の危険性がある。
一方、寛太も全くの無策ではない。指を少しずつ動かし、コマンド兵の持つ紫の棒を無効化しつつあった。あとは、身体中についているであろうサイバー・ギアをすべて引き剥がせば、サブマシンガンも充分に効いてくれる。
「さて、遺言は?」
コマンド兵が、棒で寛太の頭をかち割ろうとしたとき、
「同じことを聞いておくよ……!!」
寛太は、原始的な力を振り絞り、起き上がる。彼女は指を動かしまくり、その甲斐あって紫色に変色していた棒が、ただの白いものに戻った。
「……ほう」
コマンド兵は、少し眉を動かす。
「だが、おれのサイバー・ギアを無効化できないと、その安っぽいサブマシンガンでは殺せないぞ?」
「あぁ、そのとおり。しかしアンタ、私がどうやって無効化してるか知ってるか?」
「知らんな」
「正直で助かるよ……!!」
寛太は、突き指……いや、骨折するのも覚悟の上で、すべての指をコマンド兵に当てる。
そうすれば、
コマンド兵に装着されているサイバー・ギアは、機能不全を起こし始めた。
「……テメェ!!」
「おれには、西野寛太って名前があンだよ……!!」
無効化できるのは数秒だろう。なら、その間にハッピートリガーのごとく銃弾を放てば良い。
ババババッ!! と凄まじいレートの銃弾が、コマンド兵の身体に直撃した。
「クソッ……」
だが、なおもコマンド兵は生きている。防弾チョッキはサイバー・ギアではないので、それが銃弾の衝撃を吸収したのだろう。
「だが、もうネタ切れだろう……? まぁ、光栄に思えよ。中学生が、壮麗のコマンド兵に一瞬死を覚悟させたんだからよ──」
バコンッ、と、乾いた破裂音が聞こえる。煙たい匂いが立ち込める中、片山皐月は寛太の対峙していたコマンド兵にヘッドショットを決めた。




