表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
98/174

ドラゴン怒りの鉄拳。6



戦いの♾️の超回転の中、


カタワレちゃんは不思議な気持ちになっていた。

もうハンマーを振り下ろす必要も、少しの力でさえも必要が無かった。


ただ夢ちゃんの回転に身を委ねているだけで、

回り続ける。


円。


この感覚……



戦いの中で、《対立する存在》だった夢ちゃんが



いつの間にか《対になる存在》になっていた。



♾️の形は、片方の円だけでは成り得ない。



縁。



この感覚……



涙があふれる。



ああ……私は……ずっと……



カタワレちゃんの回転の力がわずかに鈍った。



『…カタワレ…ちゃん?』



夢ちゃんが、その変化に…涙に気がつく。


しかし、超高速回転の次の一撃は止まれない。



カタワレちゃんが穏やかな顔で笑った……




『夢ちゃん先輩!ダメっ!』



歌ちゃんが叫ぶ。


『!』


夢ちゃんは歯を食いしばり、

回転打撃の緊急停止を試みる!



『うう…止まれー!』



螺旋の理から無理やりに外れた、夢ちゃんは楕円を描きながら墜落。

地面へと激しく転倒した。


カタワレちゃんも同じようにぐらぐらと楕円、

激しく倒れ込む。



『…夢ちゃん先輩…カタワレちゃん』



白い奇跡の癒しの力が、

夢ちゃんとカタワレちゃんを優しく包み込む。



カタワレちゃんの心が無防備になる…


その中で歌ちゃんと夢ちゃんが見たもの—


カタワレちゃんの遠い記憶。



——



カタワレちゃんの本当の名前は、


『たんぽぽちゃん。』


たんぽぽちゃんは、ふわふわの綿毛のような靴下であった。


その隣にはバニーテールちゃん。

うさぎのしっぽのようなふわふわの靴下。


2人は、ふわふわもこもこのかわいらしい靴下。


だけども、

商品発売の直前で悲劇は起こった。


バニーテールちゃんの

デザインだけが没になったのだ。


没になった靴下は…


破棄される。



「対になれなかったことへの絶望」


たんぽぽちゃんはそのまま、

開発倉庫の中に保管され続けた。


ひとりぽっちのまま。   


最初は祈りだった。


『そろいたかった。』


『ちゃんと並びたかった…』


『同じ場所にいたかった……。』



祈り。願いは、光の無い暗闇の中で、壊れた。



そろわないなら、世界の方が間違っている。


—そんな世界なら、壊れてしまえ。



——



『たんぽぽちゃん…』


片割れの絶望の果てに、暴力へと堕ちた、

たんぽぽちゃんの心を見てしまった歌ちゃん。

そして夢ちゃん。



『…ホワイトドラゴン、

なぜ最後の一撃を止めさせた? 』


ボロボロのたんぽぽちゃん。


『あなたは戦いの最中に…回転をゆるめて自分から倒されようとしていました。』


『……』



『…どうして、ですか?』



『……あの戦いの中、一瞬だけ、

初めて…対になれた気がしたんだ』


『…対に?』



『僕との回転の歯車だね。』


傷だらけの夢ちゃんが立ち上がる。



『そう。どちらか片方の円だけでは成立しない、

……ふたつでひとつの形。』


『それをずっと、望んでいたんだね?』



『…例え一瞬だけでも、その形になれた…

その時に私の心はもう、折れてしまっていた。』


『…たんぽぽちゃん』



極悪非道の暇つぶしに見えていた行動は、

埋まらない心の穴を埋めるための

絶望的な足掻きだった。



わたあめちゃん達も、

永遠に揃わない絶望の片割れ…

その事実に涙する。


『ずいぶんとたくさんのひどい事をしてきた…

私の罪は消えるものではない。』


『絶望がそうさせたんです。

たんぽぽちゃんも…犠牲者です!』


『ホワイトドラゴン…』


たんぽぽちゃんはゆっくりと立ち上がった。



『……最期に、私は…片割れでは無くなった。』



『たんぽぽちゃん…』



たんぽぽちゃんは、空を見上げた。


『やっと…

バニーテールちゃんに、会える。』



そう呟くと、たんぽぽちゃんは

穏やかな顔で笑った。




『ありがとう、夢ちゃん。

ありがとう、歌ちゃん。』




——綿毛がそよ風に舞う。

















































































評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ