無慈悲な夜の絶望のカーニバル。
宇宙の果ての果て、
暗黒のエネルギー、邪悪なるエナジーの
集まる場所。
宇宙で最も暗い場所……
幻魔空間。
来たるべき《大戦》の日は近づいていた。
——幻魔たちはその準備に向けて大忙し!
『大戦の場所まではかなり遠いから、
お弁当はたくさん準備しなくちゃね』
『はい。幻魔大王さま。』
『きゅうりをハムで巻き巻きしたのあるでしょ?
あれ大好きだから、絶対作ってね。』
『はい。幻魔大王さま。』
『うふふ。楽しみー』
『幻魔大王さま、大戦に出発しますと、
しばらく帰ってこれないのですが、
お庭のお花の水やりは、どうしましょう?』
『あ、そうだね。困ったな。』
『お花が枯れちゃうかもしれません。』
『んーと…何か決まった時間に自動的に
お水をまけるシステムって、ないかなあ?』
『幻魔の魔力を工夫して、
自動水やり機械を開発してみます。』
『お願いできるかな?』
『はい。幻魔大王さま。』
幻魔大王は、ニヤリと笑う…
『ふふふ。我が幻魔の邪悪なる力は偉大なり』
あまりの邪悪テイストに、部下の幻魔たちも
ぶるっと震える。
『幻魔大王さま、カッケー!』
幻魔の1人がおそるおそる質問した。
『幻魔大王さま、大戦の地ではいかなる邪悪をなさる感じですか?』
幻魔大王は暗黒の笑みを浮かべた。
『邪悪——その一言に尽きる感じ…
っていうか、やることなすこと
マジバイオレンスっていうか…』
幻魔大王のまわりを暗黒のエナジーが揺らめく。
『無慈悲な夜の、絶望のカーニバル』
あまりの邪悪テイストに、部下の幻魔たちも
ぶるぶるっと震える。
『やっばー!』
『かっこいいー!』
『憧れちゃう!』
『あ、でも、いきなり行くと、
びっくりしちゃうかもしれないから、
お手紙を書かなきゃね。』
『…お手紙ですか?』
幻魔大王はニヤリと暗黒の笑みを浮かべた。
『これからそちらに行きますので、
どうぞよろしくお願いしますーってね。』
『わかりました。幻魔大王さま。』
『—あ、しかしですね、あちらには
千里眼の能力者がいるらしいですよ?』
『千里眼てなに?』
『未来予知をする超能力みたいな』
『そうなると、何かダメなの?』
『未来予知によって、幻魔の襲来を知ったなら、何かしらの対策をするかもしれません』
『んーと…それは、困ったな。
なんだかサプライズ感が無くなるもんねー』
『はい。幻魔大王さま。』
『どうしよっかなあ…』
幻魔大王はその悪の左手、
邪悪なる指先をほっぺにあてて考えた。
『あ!閃いた!
お手紙にそのことを書けばいいんだよ』
『お手紙にですか?』
『うん。そちらが未来予知していることを、
幻魔だって未来予知で知ってるよ、
だから、対策なんか無駄だよ、ってね』
『なるほどです!さすが幻魔大王さま』
『さっそくお手紙書いてくれる?』
幻魔大王は、その瞳に暗黒を宿らせた。
『…ひとつ問題があります、幻魔大王さま。』
幻魔いちの頭脳派、ゼヌニムちゃん。
『ゼヌニムちゃん、問題ってなあに?』
『あちらの未来予知能力者も、
—“あちらが未来予知していることを、
幻魔は未来予知している…
ことを、あちらも未来予知している“
と、なるのでは?』
『あ、ホントだ。困ったな。』
『幻魔大王さま。』
『なにー?』
『お花の自動水やり機械が完成しました。』
『はやいね!ありがと。』
『機械の名前は、暗黒自動水やり装置
ケルベロスです。』
『かわいい名前だね!』
『はい。自信作です。』
再び、
未来予知を未来予知が未来予知されちゃう
問題に戻る。
『もう、それって未来予知され続けちゃうから、仕方ないよね。』
『はい。幻魔大王さま。』
『それなら、それを全部手紙に書いちゃおう』
『全部…ですか?』
『仕方ないもん。』
『はい。わかりました幻魔大王さま。』
——こうして、
未来予知を未来予知が未来予知されてることを
未来予知して未来予知されて未来予知する
未来予知を未来予知で……
というお手紙の執筆が始まって、
そのお手紙は、
そろそろ幻魔空間を埋め尽くそうとしていた。
幻魔との大戦は、
もう少し先になりそう。




