殺生石。2。
『歌ちゃん、これ!』
白面ちゃんが、殺生石のすぐ隣にある
地面に開いた小さな穴を指差して、叫ぶ。
火山ガスの発生源かもしれない——!
そうであるならば、ふさがなきゃ!
『夢ちゃん先輩、少しだけ待っててください!』
叫ぶ歌ちゃん、火山ガスの発生源と思われる
小さな穴に向かって、息を止めて走り出した。
『……う。』
息を止めていても、
ガスの匂いがわかる。
卵の腐ったような匂い………では無かった。
甘いような……
これは………
ガス穴まで、あと7センチ、
その刹那。
穴から、ぴょこっと顔を出したのは———
もぐらのおかあさん。
「お客様かしら?」
『えっ?』
歌ちゃん。
『えっ?』
白面ちゃん。
『キューん……』
夢ちゃん。
戸惑って、固まる2人と、
おなかをおさえてうずくまる1人を見て、
もぐらのおかあさんは言った。
「今、晩御飯のカレーを作っているの。」
『えっ?』
『えっ?』
『キューん……』
「せっかくだから、食べていってね。
にぎやかなのが、好きなの。」
———
カレーはあまくちだった。
夢ちゃんは、すっかり回復して
あまくちのカレーに夢中。
もぐらの子供たち。
夢ちゃん。歌ちゃん。白面ちゃん。
みんなでカレーを食べた。
『ごちそうさまでした。』
「あら。もういいの?
歌ちゃん、おかわりいっぱいあるわよ」
『ありがとうございます。
もうお腹いっぱいです。
とても美味しかったです。』
『ごちそうさまでしたー。わーい。
とってもおいしかったです。』
みんなの食べ終わったお皿を、
キッチンで洗いながら、
歌ちゃんは、もぐらのおかあさんに聞いた。
『つまり、これって……』
「そうなの。ずっと昔から。
おなかをすかせた旅の人や、畑のお仕事を終えた人たちが、カレーの匂いで、
キューんとなって……」
もぐらのおかあさんが、微笑みながら言った。
「コロリンしちゃうの。」
——夕焼けの帰り道。
おなかすいたー。
どこかのおうちから、
おいしそうなカレーの匂い。
あの頃の思い出。
みんなの心の中にある原風景。
それが、いつの間にか、
コロリンになり、殺生石になった。
夕暮れのカレーの匂いの破壊力。
『歌ちゃん。夢ちゃん。』
もぐらの子供たちと遊んでいた
白面ちゃんが、ふいに真剣な顔で言った。
『これで事件解決ね。』
そして、すぐに笑顔になって、
『カレーがとても、おいしかったんだもの。』




