名探偵ゆめちゃん。ハイウェイスター。
『わははは。名探偵ゆめちゃん先輩、
お宝はいただいていきますよー』
『シーナ的に、やられたです!
まさかそんな神出鬼没で奇想天外で、
予測不可能な手口があったなんて!』
お宝を手に、
脱出用のロープで空へと消える怪盗。
オートナインの鉄の冷徹。
サラサラの髪が風に踊る。
ロープはスパゲッティ。
まさかの方法で細工されていて、
シーナ警部を見事に出し抜いたのだ。
『まてー!逃がさないぞー!』
シーナ警部が、怪盗を追う。
『んふふ。
怪盗1面相、甘いかもしれないよ?
喜ぶのにはまだ早いよ。』
その時、何ひとつあわてたそぶりを見せず
不敵に笑う、
その人こそ——
名探偵ゆめちゃん!
——
『え?喜ぶのにはまだ早いですか?
私、なにかミスをしてますか?』
スパゲッティを手に、少し不安になる
歌ちゃん……じゃなくて怪盗1面相。
『歌ちゃん……
じゃなくて、怪盗1面相……
そのスパゲッティを良く見てみて?』
『……スパゲッティ?…あっ!』
なんと、怪盗の手が掴んでいたのは
脱出用スパゲッティではなく、
脱出用スパゲッティに見せかけた
逮捕用スパゲッティだったのだ。
『しまったです。これじゃ逃げられない。
捕まってしまいます!』
『やった!さすが名探偵ゆめちゃん!
いつの間にそんな仕掛けを?』
『んふふ。それはね、シーナ警部、
実は……あの時なんだよ』
『えっ?まさか、あの時?』
名探偵のあまりの鮮やかさに驚愕する
シーナ警部。
『あの時って、あの時ですよね!
すごい、シーナ的に全く気づかなかったです!』
なんと名探偵ゆめちゃんは、
あの時には既に、怪盗の手口を見破り、
既に手をうっていたのだ!
既に!
見事な洞察力。そして推理力。
『しまったですー。捕まってしまいそうです』
ついに、怪盗1面相、逮捕の瞬間か
と思われたその時、
予期せぬイレギュラーが発生した。
逮捕のためにと、シーナ警部がお宝の部屋に仕掛けていた、あの装置が誤作動を起こしたのだ。
ぶーん!
あの装置は、逮捕用スパゲッティをアレして、
結果的に、怪盗1面相の逃走の手助けを
してしまった。
『あ。良かったです。じゃあ改めて、
わははは。お宝はいただいていきますよー』
『しまったー!やられたー!』
シーナ的、まさかのイレギュラーに頭を抱える
シーナ警部。
怪盗1面相は、夜空へと消えていった……。
——
『ごめんなさい。名探偵ゆめちゃん。
シーナの仕掛けた、あの装置がまさか
あんな誤作動をおこすなんて……』
シーナ警部がうなだれる。
『んふふ。』
だが、名探偵ゆめちゃんは、再び不敵に笑う。
『安心していーよ。シーナ警部。』
『え?どーゆーことですか?』
『こんなこともあろうかと、
もしかしてのこんな時のために、
僕は、あんなのを用意してたんだよ』
ジャーン!
名探偵ゆめちゃん、そんな……!
万全にもほどがある!
まさか、あんなものを用意していたとは!
『こ、これは…』
『んふふ。これで怪盗1面相を捕まえられるよ』
『これなら…いける!シーナ的に!』
大逆転の風向き。
クライマックスの予感!
——
『うまくいきました。お宝ゲットです』
怪盗1面相は、変装を解いて、
夜の街の闇に紛れ込む。
『これなら、もう誰にも
私を見つけられないはずです……』
歌ちゃ……
歌ちゃんが油断したその時!
パッ!
と暗闇を照らす、あのライト!
『見つけたぞ!怪盗1面相!……って、
あれれ?あのーすいません。
あなた、怪盗1面相さんですよね?』
シーナ警部の自信が揺らいだ。
『だまされちゃダメだよ。シーナ警部。』
光の中の人影。
そう!
その人こそ——
名探偵ゆめちゃん!
あのライトの光は、まるでステージ演出。
『しまったです。ピンチです。
捕まってしまいそうな雰囲気です』
怪盗1面相が、四面楚歌る。
あ、まちがえた。窮地に追い込まれる。
『だけど、なぜ私が怪盗1面相だと
わかったんですか?
名探偵ゆめちゃん先輩?』
『んふふ。それはね……』
『それは……?』
ジャーン!
『これだよ!』
『あっ!まさか……そんな』
名探偵ゆめちゃんが手にしていた
動かぬ証拠!
それは、まさかの
あの時のアレだった!
『私の負けです……』
怪盗1面相、神出鬼没、奇想天外、予測不能、
謎の怪盗の正体はなんと……
歌ちゃんだったのだ!
『でも聞かせて?歌ちゃん、
どうして怪盗なんかを?』
事件解決のBGMが優しく聞こえてくる。
『……私……』
——
静かな海。
シーナ警部と、名探偵ゆめちゃんは、
あんまんを食べながら
ただ静かに海を見ていた。
事件は解決した。
歌ちゃん……
事件の真相にあった、
仕方の無い、怪盗をせざるをえない、
なにひとつ歌ちゃんには罪のない、
あんな理由があったなんて……。
静かな海。
名探偵ゆめちゃんは、
あんまんを食べながら、
そっとつぶやいた。
『……おなか、すいたな………』
——おわり。




