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君が思い出になる前に。


「あっちに転がった消しゴムが、

こっちから見つかる」


—それは、食べかけのチョコレートを、

ありさんが運んでいったのとか、

メガネがおでこから発見される。

みたいなのとは少し違っていて、


さっき確かに探したはずの場所に「ある」

 

なんてやつ。

不思議なアレ。


物理法則や「理由」という名の、

窮屈な感じ……やーめた。

毎日は日曜日。


それは多分、その理由や、なぜ?

を追求しないほうが身のためなので、

そんな暇があるなら、すべり台をどこまでも滑ったりしていたほうが楽しいよね。



不思議が日常に溶けてる、だけ。




一人の天才が現れた。


名前は、


『モノちゃん』


彼女はまず、消しゴムに限らず、

世界中のあらゆる失くしたものを調査。


時間、場所、紛失時の状況。


さらに

気温、湿度、気圧、風速。

紫外線量。太陽黒点活動。地磁気変動。重力偏差。空間放射線量。宇宙線観測値。潮汐力。月齢。黄砂の飛来状況。花粉濃度。静電気発生量。

二酸化炭素濃度。海面温度。波の高さ。

被験者の平均歩行速度。まばたき回数。心拍数。

ストレス指数。睡眠時間。利き手。ポケットの深さ。靴下の繊維密度。花びら占い。


朝ごはんのメニュー。

昼ごはんのメニュー。

おやつ。

夜ごはんのメニュー。


様々なデータを集計して、

そろばん教室で培われた天才の頭脳が



導き出した答えは——





『ぜんぜんわかんない。』



だった。




だけども、


「負けることは恥では無い。

戦わぬ事が恥なのだ。」


と、どこかの戦士が言った言葉にあるように、

モノちゃんの戦いは決して無駄ではなく、

まして、負けてなどいなかった。


失くしたものに対して、

決定的な解決策を産み出したのだ。



モノちゃんはデータ分析と同時に、

実証実験も行なっていた。


「失くしたものが、

失くしたものになる前に

失くならないものにしよう」


という哲学的、思考実験的発想で、


消しゴム、チョコレート、お部屋のカギ、メガネ、アイスクリーム、プリン、傘、など

およそ失くなりそうなものを集め、

失くならないように紐でつないだ。


結果、



失くならなかった——。



モノちゃんは、この結果を論文として

科学アカデミーに発表。


世界の謎への対策方法が確立された。



忘れんぼさんや、あわてんぼさんは

消しゴム、プリン、傘、カギ、ルンバ、コードレス掃除機など


大事なものを紐でむすんで失くさないようにした。



……大切なものを失くしたくないという、根源的な恐怖と。


大切なものを、紐をつけてでも、繋ぎ止めていたいという願い。



ある、うっかりさんのお部屋の中は、カラフルな紐があちこちからはりめぐらされ、交差し、

なんとなく美しいステンドグラスみたいな雰囲気になって、毎日が楽しくなった。




モノちゃんの理論は

本になった。



「超・ひも理論」























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