6、1人のパイロット①
いつもより短めです
艦内の廊下を歩く。同じリズムの音がずっと鳴り響いて、私に着いてくる。時折、テンポの速い音が前から来たり、後ろから来たりして、私を追い抜かしていく。廊下には、小さな丸い形の窓から入った光が何本も伸びている。肩まである髪の毛が光に当たって、髪だけが銀色に輝いていた。自分が部屋に戻ろうとしてる最中に、乗組員が使う大きな食堂があった。攻撃隊も出撃したし、昼もとっくに過ぎていたので、机と椅子がたくさん並べらているだけだった。だけどそんな空間の中で、1人食堂の片隅でご飯を食べている人が居た。左腕に着けている時計を見ても、やっぱり時間は昼を越していた。私は1人で食べてる人の机の所に行った。近づくと、その人が女性だったのに気づいた。それに服装からして普通の乗組員ではなく、パイロットのようだった。食べていた物は米だけで、それもあまり手をつけてない感じだった。ずっと近くで眺めていると、女の人が顔を上げ、こちらを見返してきた。
「あの、誰ですか?」
「あ、ごめんね。邪魔したかな。えっと、...坂本七海」
「坂本七海。じゃあ七海か、見ない顔だね。私は前島ひな。よろしく!」
「よろしく」
最初振り向いたときは、少し怖い顔をしていたけど、こっちの顔を見てからは少し顔が明るくなった。最初からちゃん読みは驚いたけど、ひなは笑顔で握手を求めてきた。手を握ると、あっちは強く私の手を握ってきた。ひなの手は少し震えていて、ずっと私の手を離さなかった。ひなの顔を見ると、目元が赤くなっていて、目の中も震えていた。
「じゃあ私もひなって言っていい」
「いいよ。にしてもほんと、七海に会えてよかったよ。軍隊ってさ女性が全然いないからさ、女の子の友達っていなかったんだよね」
「ひなはパイロットなの?」
「そうだよ!戦闘機に乗ってるの」
「...ねぇひな」
「うん?」
「会ったばかりで言うのも何だけど、...何かあったの?」
「...」
2人しかいない食堂に更に静寂が広がった。ひなが話してる時、元気そうに振る舞っていたが、なにか無理をしているように感じた。もしかしたら目元が赤くなっていたり、手が震えていたせいもあるかもしれないけど、それもあって無理して元気に振る舞っているように感じた。ひなに問いかけると、さっきまで笑っていた顔から笑顔が消えた。いや、笑顔から泣きそうな顔に変わったんだと思う。ひなは無言のままなにも話してこなかった。そんな時間が数分も、数時間も続いた気がする。時計の針が動く音が食堂内に響き渡り、時計の針を確認すると、さっき見たときから針は全く動いていなかった。
「戦闘機パイロットって言ってたよね。今ここにいるわけだし、攻撃隊に参加したかったけど、もしかして艦隊の直掩だったとか?」
「...かったよ」
「え、」
「それだったら全然良かったよ!確かに攻撃隊がよかったけど、別に艦隊の直掩でもよかった。やりたかった。だけど現実は何もなし」
「何もなし?」
「この前の嵐で戦闘機が1機壊れたんだって。それで私は何もなし。他の人は死なずにすむとか言ってくれてたけど、本当はみんなと一緒に戦いたかった。あれだけの訓練を長い間して、結果が居残りだなんて。本当にふざけんなよ!」
「.....」
叫び終わると、ひなの泣く声だけが食堂で聞こえた。ひなの言っていたことは多分、私のせいだと思う。私が航空長や飛行長達と誰を作戦に参加させないか話し合った。その中で、私が練度の低い人を残らせようと、そんなことを言って、言い合いになったけど、結果はほぼ私の意見が通った。ひなは見るからに若そうで、まだ訓練学校を卒業したばっかりの見習いだと思う。だから航空長か飛行長がひなを居残りにした。ただそれだけだと思ってた。それでも面と向かって言われると、今まで紙の上の文字でしか見てなかった物が、現実味を得てきて、考えさせられた。私はひなに対して、何を言ったらいいか分からなかった。
色んな時間で投稿を試してみて15時代が1番よかったので、これからは15時投稿にします。




