第63話 ゲームマスター死に対する考察、子供のNPCからの手紙
ゲームのNPCと人間であるプレイヤーの意識が入れ替わった世界の話。大きな画面がDESSQの世界中に出現しゲームマスターは姿を現した。ゲームマスターは衝撃発表として自身もゲームに参加する事を伝えた。また、死んだ人間を復活させるスキルを持ったモンスターが存在する事も教えてくれたため、世界中の仮NPCの人間たちは歓喜した。そしてゲームマスターは亡くなった人を追悼するように死の考察を話し始める。
ゲ―ムマスターは新たな考察をし始めた。
「さて、繰り返すが49754人が亡くなった数だ。しかし、これらの死亡した人間の復活するチャンスがある。」
ゲームマスターは近くから椅子を用意しそこに座った。
「大事な事をする前に亡くなった人を追悼する意味を込めて一つ話がしたい。人が死んだらどうなるか。考察を述べてみようと思う。まず人間だけが、死んだら転生するとか天国か地獄にいくというのは科学的には変だと私は思う。結論から先に話そう。最終的な考えは死んだら、転生であれ天国であれ地獄であれ、現在の世界とは別次元の場所に行くというものになる。
順を追って私はこう思うということを話す。
人間だけが他の生物とは違う点が意識、思考、煩悩に近いもの。思慮。それは、じさつを人間だけが行うといわれているところからだが、これはハチにもある。
しかしハチは種族の繁栄を守るための犠牲に行うのに対して、人間のものは明らかに生物的な観点から逸脱している。
そしてこの意識のようなものこそが、生存本能だけではない部分、脊髄反射で、動かないほかの生物と違う少し変な部分が魂であると思っている。
古代文明にはマチュピチュやナスカの地上絵といったものがある。これらは明らかに空もしくはその先の宇宙からの視点を意識した位置、構図をとっており、なぜ、地上に生き、空を自由に航行できない状況下でこれを作ったのかというのはやはり、死んだら天に昇るという考え方だ。しかし月にも同じようなものがあるらしい。
死ぬ間際は人の声がよく聞こえるとされており、ラジオや好きな音楽を聴くと反応すると私は思う。また、その際、質量が何gか減るらしく科学的には筋繊維の萎縮、力が抜けたからだといわれている。
しかし、何gかすら減らなかったら、こんな考察はそもそも立っていたのだろうか。何gか減るという状況があったから、筋繊維の萎縮という考察が生まれたのであって、たとえそれが原因でも質量が減ったというのは何らかの可能性がある。
まず、魂の質量が存在するなら気体だと私は思う。もし、液体や固体であるなら人間の体に留まるため別の可能性がありますが今回は気体で考える。
この気体が独特のものであれば計測が可能だが、全くそれらしいものがあるのか私は調べたこともないのでわからない。
しかし、この気体は意識の集合体のようなものであると私は思っている。
なぜ死ぬ間際に人の声がよく聞こえるのだろうか。それは、意識の集合体となった状態だと、第六感的気配や、耳がなくともよく聞こえるような状態なのではないだろうか。
目の構造は目がないと難しそうだが、耳の構造とは、空気を吸収するためのもので機械的にも生み出せる可能性もあるものだ。つまり、耳というものがなくとも空気が際限なく入ってくる解放された状態であれば、よく聞こえるのではないかというのが私の考えだ。
ではその気体はどこに昇るのだろうか。天なのだろうか。空には未知が多くあり、その可能性は高いが、古代文明を建設した際は、気体や液体という分け方はあまりなく、現在のように検証できないだろう。
であるならば、現在計測すればいいと思うかもしれませんが、肉体から質量がなくなった直後に消えているというのであればそれはもう現在の人間ではまったくもって視認できない、別次元へといったのではないかと私は考える。
幽霊や目に見えない視線についてはわからないだが、別次元が存在しており、そこに移動いたのであれば、それはもう転生と言わざる負えない。
よってそこがどういう世界なのかそれは、別の時空の話なのかわからないのだが、最終的な結論は現在の世界とは別次元の世界にいくというのが私の考えになる。気体であるならば肉体にも憑依できる余地がある。液体でも可能なものはあると思う。」
ゲームマスターは死に対する考察を述べた。様々な人が彼の言葉に少し感心していた。
ある者は感心して胸打たれていた。
「人が死ぬとどうなるか。ここまで考えられるゲームマスターはやはり只者じゃないな。」
ある者は自分と比較し彼の言葉を噛みしめていた。
「俺も死んだらどうなるか考えたことはあるけど、こんなに詳しく死の真相を解き明かそうとしたことはないな。」
ゲームマスターは死に対する考察を話終え別の話を始めた。
「本題に移ろう。これから君たち第一サーバー第二サーバーに私の生み出した機械兵、アムステルを向かわせる、レベルは全員100だ。君たちでは太刀打ちできないだろう。」
ゲームマスターの言葉に皆驚いていた。
「嘘だろ。レベル100を送りこむなんて事をしでかして俺たちを殺す気か。」
「ゲームマスターがレベル100なんて送り込んだらゲームが終わってしまうじゃないか。」
まるで賛同を示すかのように、野次はますます大きくなっていった。
ゲームマスターは野次が大きくなる現象を憂いていた。
「拒絶か。やはりゲームマスターはあまり介入すべきじゃないな。話を続けよう。今回の機械兵アムステルを送り込む前に君たちには一つの画面を提示する。その提示内容は
ダンジョンカジノに挑戦されますか、という質問文だ。
OKを押せば第3サーバーダンジョンカジノにワープしてそこで戦いに明け暮れることになるだろう。NOを押せばレベル100の機械兵の相手から逃げ惑う事になる。どちらか好きな方の地獄を選んでみてくれ。」
ゲームマスターの言葉に仮NPCの人間たちは驚いていた。
「そんな、レベル100の相手なんてできるわけないじゃないか。」
「俺らにダンジョンカジノに強制的に向かわせる気だ。」
ゲームマスターは彼らの言葉を聞きNPCについて話をし始めた。
「君たち元プレイヤー、現仮NPCの人間が、魂を持った自律思考NPCにしたことはこれよりひどかった。NPCだったエルフの者からの手紙を読もう。」
ゲームマスターはエルフの手紙を読み始めた。
「ゲームマスター様へ。15歳のエルフのミレタです。今、私が死にたくても死ねない地獄の毎日を生きるのが嫌で手紙を送らせていただきます。私が奴隷として人間さんの元で働くようになってから4年が経ちました。初めは肉体労働をさせられプレイヤーの皆からひどい扱いを受けていましたが、突然人間が優しくなり始めました。なんでと思ったら私の体に興味ができたようでそれから毎日、性的な被害を受けました。
男性のおしっこを飲まされたり、便を地面に出させたりと人間ではなく動物として扱われていることに深い悲しみを覚えました。私のNPCとして生まれたことは間違っていたんじゃないでしょうか。今すぐに私をゲームマスターの手で殺してください。」
ゲームマスターは話を終えると、人間だった仮NPCだったものは顔を俯け反省した表情を浮かべた。
「別の手紙を読もう。こちらは12歳のドワーフの男の子だ。クソな人間の代表ゲームマスターへ。12歳のドワーフ、メルテムです。僕はあなたの事を殺したいです。心底憎んでいます。理由を話します。僕は6歳の頃から人間に雇われボロ雑巾のように働いていました。人間さんからは毎日罵声を浴びせられ僕らが仕事をしている途中にも腹いせに仲間を殴られ蹴られ暴行を受けていました。
そんなある日人間さんがゲームがしたいと言われ目隠しをさせられ仲間とともに連れていかれました。そこではゲームと称してNPCのドワーフを一人ずつ気絶するまで武器を用いて暴行を与えるといった事が行われていました。仲間が殴られ、体を剣で刺され目を潰され耳を切られ口に剣を突き刺せられ僕らはただ喉の奥から絞り出されるように悲鳴をあげていました。こんな事もうされたくないです。こんな世界を作ったゲームマスター死ね。」
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