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14.しぶしぶ冒険者始めます。


「おはよ。ねぇ、ハルト、私ちょっと思ったんだけど。」


「おう、おはよ。で、なんだ?」


一晩中ギューッと抱きついてくるイザナを寝る事なく耳や尻尾を触って堪能していると、日が昇るよりも早くイザナが目を覚ました。


慌てて手を尻尾から離したからバレてはいないだろう。バレていないはずだ。


「ずっと家でぐーたらしてる父親を見て子供がちゃんとした大人に育つのかなって。」


...................。


別に娘の前でぐーたらするつもりはないが、このイザナの言葉で言いたい事が全て把握できたのは220年の結婚生活の賜物だろう。


だが、その考えを汲む事を俺が望むかというのはまた別問題。


「えーっと、まぁ、アリスはいい子だしちゃんとした大人に育つんじゃないかな。」


「ハルトのせいでアリスちゃんがグレちゃってもいいの?」


あんなに可愛いアリスがグレる?


「いや、だから、アリスはいい子だから......。」


「今はいい子でも今のハルトの背中を見て育った時にいい子じゃなくなるかもしれないよ?」


俺の背中を見て育てばそれこそいい子に育たないはずがないんじゃないかな!


とまぁ、そんな事はどうでもいい。


「いい子でもそうじゃなくても、俺たちの娘に変わりない。そうだろ?」


「...........ぁあ、もう!面倒くさい。私の言いたい事分かるよね?」


「.....はい、働いてきます.....。」


「サヤナちゃんとアリスちゃんを買うのに4億も使ったのはハルトなんだから最低でもそのくらい稼ぐまでは働いてよ。」


「え.......4億って稼ぐとなるとなかなかキツイぞ?」


ていうか、今の言い方だと4億稼げばもう働かなくていいって事だよな?


そうだよな?


「ハルトなら出来るわ。頑張ってね。」





という事で俺はパンキスのギルドに来てみた。


ギルドは奴隷オークション会場から少し離れた場所らしく、ここに来るまでに何人かに道を尋ねたが、近くに来てみれば一目でこれだと分かった。


周りの建物とは比較にならないほど大きく、そして強度を上げる為だろう装飾を施された鋼が建物の外壁へ取り付けられ、三階建てのその上には矛盾が描かれた大きな旗がなびいていた。


「さて、と。.............行ってみるか。」


昨日は怖い仲介人さんに、娘を担保として押し付けてくる店員さんと、まともな人間に会ってないせいか、俺の中で人間というものが少し異形の者となりつつある。


昔働いてた頃は気に入らない事があれば力で何とかなったが、今はそうはいかない。


むやみやたらに暴れれば街へ入れなくなってしまう上に、俺の所在が魔族の方へバレればそれこそいろいろと面倒な事になりかねない。


アリスやサヤナ、それにフィオルが今は一緒にいる以上、俺の問題に巻き込む訳にはいかないのだ。


出来るだけ自然に、人間っぽくを意識しながらギルドの中へと入る。


中には机と椅子が何席も並べられ、そこで何人もの冒険者が酒を酌み交わし、その奥には依頼書が貼り付けられたボードと受付が幾つか確認できた。



まぁ、とりあえずは冒険者登録か。


登録料として持ってきた白金貨をチャリッとポケットの中でならしながら受付に立っている中でも一番美人な受付嬢へ話しかけてみる。


「冒険者登録ってここでいいんですよね?」


「冒険者登録ですね。こちらへ記入してからこの水晶に手で触れて下さい。それと登録料が銀貨1枚となります。」


そう言われて差し出された紙を見てみると名前やら戦闘スタイルやら、年齢に種族、その他幾つもの記入項目があった。



.......これ、大半が嘘をつかないとやばいんだけど、大丈夫だよな?


「おっ、にーちゃん冒険者なんのかー?」


ん?


声をかけられ振り返るとそこにはノリの良さそうな30代前半の鎧を身に付けたいかにも冒険者な男が立っていた。


「あぁ、嫁に稼いでこいって言われてね。」


4億ほど......。


「へぇ、嫁さんいんのか、羨ましいこったな。おれぁこの歳でまだ独身だぜ。まぁ、独身でなきゃ冒険者なんかとうに辞めてるけどな。」


「冒険者は一番稼げる仕事だろ?」


確かそう聞いた気がするぞ?数百年前に。


「それは力のある奴の話だよ。俺らなんかだとそこらの商人と大差ねぇ。おっと、これから冒険者になろうって奴に話す話じゃなかったな。」


冒険者はカハハハと高笑いをする。


「へぇ、そんなもんなのか。」


「せっかく嫁さんいるんだから奴隷にされないように気をつけろよ。また後でな。」


ん?奴隷?


そう疑問に思ったが聞く間もなく男はすぐに立ち去ってしまった。


後でこの受付嬢にでも聞いてみるか。


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