収まる所に収まりました
私が助けたという教祖は頑固だった。そもそも本人の許可なく人を祀り上げるような奴なのだから、仕方ないのかもしれない。
「よろしいですか?愛の神クラリンは、この世界を救った英雄なのです」
遠い昔、我が国クリスティアの結界システムを守るためその身を捧げた英雄の名は、クラリン。
国を守るため、不老の身となり……クリスティアの内部崩壊を未然に防ぎ、セインティアの腐敗にメスを入れた。
そして彼は魔王復活を防ぐためにその身を捧げ、神となった。私よりよほど信仰されるべき新たな神であり真の英雄なのだと、私は本気で彼らに訴えた。
嘘ではない。詳細を省いただけですべて事実である。クラリンはすごい子なの。改めて見てみると、本当にすごいよねぇ。
「いやでも……」
少し揺らいだようだがまだ足りないらしい。
「嬢ちゃん」
「蔵之助さん?!」
「信仰とは、無理にしてもらうものではなかろう。確かにわしらは弱き神。人数こそ少ないが、クラリンの行いで信じてくれるものもいる。それでいいさ。こういうのは地道にやっていくものだろう?」
「そ、そんな……」
正論。あまりにも正論なのだが……。
じゃあこの教団は誰に押し付けたらいいの?!
私、邪神にも神にもなりたくないんですけどぉ?!神様私に何か恨みでも………と思ったらこれまでのかごめかごめ事件やらシヴァのドリル装備などがよぎり、深く考えないことにした。
「お待ちください!その、貴方様は……?」
「蔵之助と申す」
「クラノスケ様……む、昔……ウルファネアにいらしたことはございませんか?!」
「む?そういえばあったかもしれぬな。最後は何年前だったか……」
「その際に、盗みを働く子供を助けませんでしたか?」
「ふむ……そうさな。あったやも……そうか、おぬしはあの時の子供か。立派になったようだが、嬢ちゃんに迷惑をかけてはならんぞ。神をもしのぐ大英雄だが、本人はあくまで一般人として暮らしたいという変わった子だからな」
どうやら蔵之助さんと知り合いだったようだ。
「心からの信仰であればよろしいのですね?そして、かつての恩人たる貴方様は信仰を欲してらっしゃる。クラリン様とはどのようなご関係なのですか?」
「そうさな。なかなかに難しいのだが……クラリンはあまりに長すぎる時を生きたわしが生み出した存在よ。人の記憶容量には限りがある。それゆえ何も覚えず、拘らず、自由に生きる存在。しがらみの多いわしとは違い、長き時すらも楽しめる存在だな」
「そ、そうだったのですね」
「それゆえ、神としての活動は難しいがな」
まあ、そもそも神様が自ら布教活動というのも神性とか神秘性が損なわれそうだしなぁ。クラリンはクラリンだけど、初見の人はだいたい変態だと思ってドン引きし。慣れれば可愛いんだけどなぁ。
「では、我らが……私が!信仰いたします!クラノスケ様のお人柄……もう人ではなかったとしても!2人の恩人に恩を返せるのならば!私はラブゴッドクラリン教団を設立します!!」
「え、ちょ」
「よくぞ決断されました!スポンサーは私に任せてください!湯水のごとくジャンジャンバリバリ使いますよ!まずは神殿ですよね!リフォームしましょう!金に糸目はつけませんわよ!じゃんじゃん建ててやりますわ!豪奢で美しく、それでいて神秘的な神殿を!奉仕活動もしましょうね!ウチの商団につなぎをつけて売れ残りとかで貧しい人を救いましょう!それから養護施設と学校と病院併設しましょ!!」
「え、待っ」
「なんとありがたい!ムダのない計画ですな!信者獲得のみならず、貧しい人々への救済まで成せるとは素晴らしい!」
「おーっほっほっほ!ここがお金の使いどき!お金とは貯めるだけでなく使って経済を回してこそ!邪神にならずに済むのなら安いものですわ!」
金で解決できるなら金などいくらでも出しますわ。今や私の収入は……すごくすごいからね!魔物素材売るだけで数年遊んで暮らせるし、定期的な収入もあるし、支出が追いつかないからね!使う時に使わないと!
これで邪神回避なら安いもんよ!よかった、教祖が心変わりしてくれて!!
「………嬢ちゃんの頭はどうなってるんだろうな?あの一瞬でそこまで考えて……即実行しとる……」
思いついたら即実行!!サクッと土地を買い取り、魔法大工さんにかかれば数日よ!え~と後はどこに連絡しようかな!なるべく広い土地を買わないとね!
「たぶんだけど、邪神にならずに済んでホッとしてるんじゃないですかね。ロザリンド自身はノブレス・オブリージュを素でやってるタイプだから……教会とは国民に尽くす機関であるべきと思っているようです。それって普段の俺達がしている仕事と変わりませんからね。俺達にとっては難しいことじゃありませんよ。ロザリンド〜、教員や医師はクリスティアから一旦派遣である程度人材が育ったら戻るでいいかな?追加で魔法大工ももっと呼ぼうか。装飾関係はポッチに依頼しよう。支援の口実にもなるし、喜んで手伝ってくれるでしょ」
「もちもち!デキる旦那様、愛してるぅ!」
こうして、ついにクラリンはゴージャスな本神殿をゲットしたのであった。またしても働いてしまったが、今回に限っては仕方ないと思う。
それにしても私を邪神にしようとする奴がいるなんて、マジ許せん!私は普通の侯爵夫人だっつーの!
追伸・なんかクラリンが金色になってるの。なんで?
皆様、今年もお世話になりました。
悪なりはコミカライズ再始動で2巻が出ております。
私は更新をサボってました_(┐「ε:)_
体調的には元気です!大遅刻してすいません!皆様、よいお年を!




