策士?凛花さん
久しぶりのロザリンド視点です。
ラビーシャちゃんとアルフィージ様の婚約とゲータの件、それから婚約発表時に襲撃してきた黒幕まできっちり潰してようやく落ち着きました。
今日は風の精霊王の試練です。よく風が通る岩山の山頂に神殿があります。
今回は凛花が作戦を考えたというので任せてみることにしました。メンバーは、私、ディルク、ジャッシュ、エルンストです。
風の精霊王はニッコリと微笑んだ。
「待っていたよ。さあ、試練を始めよう」
「先手必勝!疾く、律令のごとくせよ!」
札から水が溢れだす。水属性の魔法かな?
水はまだ溢れている。魔力を帯びているためか地面には流れず風の精霊王を包囲している。
水はまだまだ溢れている。わりと余裕綽々だった風の精霊王がヤバいと思ったのか水の壁を突破しようとしたが、びくともしない。
水はまだまだまだ溢れている。え?これ…ヤバくね?風の精霊王の周囲にまとわりつく水の包囲がじわり…じわりと狭くなってきている。風の精霊王も私と同じでヤバいと感じているらしく、涙目で必死になんか魔法を使っているが、水の壁がぶ厚すぎて通らない。よく見たら、水には濃密な魔力が含まれていた。ただの水ではなく、結界なのだろう。
水はまだまだまだまだ溢れている。水の一部から魔力が消えた。つまり、四方を水の壁で囲まれているから…水責めだね。
ついにはつま先立ちでなんとか顔が空気のあるとこに出るところになった。大変きつそうである。
「さあ、攻撃ッスよ!」
「え?」
あの水責め結界、ある意味すでに攻撃では?風の精霊王、ビビってますよ?気がついて!
「うわああ!?」
あれ、見たことある。立方体がぼてぼて、ぼて○んとかいう奴だよ。よく見たら顔がついてた。
転がる➡空気は上になる➡空気を求めて精霊王が上に行く➡転がる➡空気は上になる➡空気を求めて精霊王が上に行く➡転がる
止まれ!止まるんだぼて○ぃぃぃん!!何故だ!よいこの番組が拷問に!たまに横にも転がるなんて、酷いよ!ぼ○じん!!
ついに、風の精霊王が沈んだ。凛花はすぐさま水のぼて○んを解除した。幸い精霊王はまだ溺れてはいないが…ぐったりしている。
「凛花、そこ座れ」
「はいッス」
凛花は素直に正座した。
「凛花、私達は試練を受けにきました」
「はいッス」
「これは、試練ですか?」
「はいッス」
「精霊王に試練を与えてどうする!むしろこれは一方的な虐待または拷問です!!」
凛花は首をかしげた。
「…風の精霊王さん、強いッスよね?」
「そうね」
「格上は油断させて一気に絞めろと教わってるッス。風は空気の振動だから、空気を遮断して減らしてやれば力をそげると判断したッスよ」
「…正しいな」
確かに、風の精霊王は凛花をなめていた。術の初期で全力を出していれば、また違っただろう。魔力コントロールや実戦経験では凛花は風の精霊王に遠く及ばない。実力差を埋める為の奇策…と考えれば確かに合理的ではある。
「納得しちゃダメだよ、ロザリンド。リンカさんは明らかにやりすぎだよ!」
「はっ!」
合理的ではあるが、問題もある。格ゲーにおけるハメ技で最後まで攻撃もさせなかったようなもんだ。そう説明したが……
「…これはリアルッスよね。ゲームとは違うッス。自分のせいで誰かが怪我したらいやッスよ」
「…うん」
確かにな。凛花は不利な条件下で戦うことが多かったらしく…仕方ないと結論した。
「諦めないで!ロザリンドはリンカさんの保護者でしょ!あれはどうみても試練じゃなくて一方的な暴力…拷問だよ!」
「…拷問でしたね」
「拷問だったな」
ジャッシュとエルンストも同意した。でも、凛花は真面目に戦ってああだったわけで…
「今回は修正しないよ」
「ロザリンド!?」
「凛花が正しい。精霊王は強いから、誰かが大怪我する可能性は否めない。下手な手加減や常識にとらわれたせいで…仲間が死にでもしたら悔やみきれない」
「「「………」」」
常識人達も沈黙した。
「やりすぎたのは間違いないけどね。精霊王が起きたみたいだし、謝ってくれば?」
「はいッス!風の精霊王さん、ごめんなさいッス」
「いやいや、ビックリしたよ」
風の精霊王はまったく気にしていなかった。怒ってもいいと思うのですが、凛花にアッサリ加護をくれました。
色々予想外だったけど、風の精霊王の加護をゲットだぜ!




