風の精霊と怒る乙女?達
これでもう神殿に用はなかったのだが、風の精霊王が話しかけてきた。
「待ち人…いやロザリンド様。ハルは元気でしょうか?」
「ハル?真珠みたいな風がメインだけど全属性もあるハル?」
「そう!そうです!」
風の精霊王はハルに悪感情があるわけではないようだ。素直に返答した。
「元気ですよ。よくお手伝いや人助けをする優しい子です」
「…そうでしたか。ありがとうございます」
「呼んだ?あ、おっさんだ」
ハルが私の呼びかけに応えた。やはり知り合いだったらしい。
「…立派になったな」
「んー?まあ、ボチボチ?」
「今は…幸せか?」
「ロザリンドの加護精霊になってから、毎日楽しいぜ」
「…そうか。ロザリンド様、ありがとうございます…」
涙を流した風の精霊王。どういうことかとハルを見るが、苦笑するだけで答えてはくれなかった。
しかし、原因は神殿を出た直後に発覚した。
「いたんだ」
「あっちいけー」
「ちゅうとはんぱー」
小さな風の精霊達は明らかにうちのハルをディスっている。
「ロザリンド、落ち着いて」
「待て、話せばわかる」
「あ、貴方達!今すぐ逃げなさい!」
「あー、美少女ってキレ顔も美少女なんスね」
ディルク、エルンスト、ジャッシュ、凛花の順に発言した。
「嫌ですわ…私、ちゃんと落ち着いておりましてよ」
「「「………」」」
何故男性陣は怯えているのかね?おかしいな。
「ヴァルキリー、夏休みのガキ大将モード!」
「ロッザリンドォォ!」
野球帽に虫取り網とカゴを持ったヴァルキリーが現れた。
「うちの子をディスったアホ精霊を捕まえなさい!」
「ロッザリンドォォ!!」
「ロザリンド!いつものことだし気にしてないから!ロザリンドもスイも…今は皆がいるから、俺すげー幸せだし!」
「いつものこと…ですの?」
ハルは明らかに失敗した!という表情になった。
「ロージィ君もお手伝いしてください!」
「はーい」
「ロージィ!?」
ディルクはロージィ君を止めようとしたが、ロージィ君は苦笑した。
「ご主人様、今のお母さんには逆らわないほうがいいよ」
「………そうだね」
ディルクも諦めたらしい。
「自分もやるッスよ!ハル君は腹を出して寝てた自分にそっと毛布をかけるような優しい子ッス」
「いや、それ普通じゃね?」
「コウ君とマリーちゃんはのっかりに来るッス」
「……………ああ」
納得された。ちなみにユグドラシルさんは葉っぱの布団に埋もれさせます。ハクはお部屋のベッドまで運んでくれて、スイも毛布をかけてくれるが起きたら説教だそうです。つーか、お前どんだけ腹を出して寝てるんだよ。
「唸れ、私の中二病!!つーさん!変身!!」
そして、凛花の杖はある意味進化を遂げた。筋肉ムキムキなナイスバディを惜しげもなく晒し、ふんどし1枚なおっさん。ねじり鉢巻に無精髭。そして、投網を装備していた。
私の姪っ子が…ナイスバディのおっさんに…!!凛花、立派な大胸筋だね!貧乳卒業おめでとう!
「ロザリンド!?」
凛花が筋肉的巨乳じゃなかったおっさんになった精神的ダメージにより倒れそうになった私をディルクが抱き止めた。いつもありがとうございます。
「あ、あわわわわ」
怯えるジャッシュ。
「…ふむ、興味深い」
つーさんに興味津々なエルンスト。
「網ってまさか…」
凛花の行動を予測し青褪めるハル。
「網を持つ最強職・海の男!!自分の投網を受けるッス!!」
文字どおり、一網打尽になりました。ヴァルキリーとロージィ君も捕まっているが、結果オーライである。
「よくやった、おっさん!」
「まっそー!!」
やめろ。巨乳が嬉しいのはわかんなくもないが、マッスルポーズで胸をピクピクさせんな。
「さて…どうしてくれましょうか」
「やめて」
「わるいことしてない!」
「ひどい」
騒がしい風の精霊達。私はあくまでも冷静に話しかけた。
「多人数で一人を貶めるなんて、最低」
「虫以下ッス」
「悪いことをしてない?ハルは傷ついてたのに?」
「他人の痛みもわかんないバカなんスね」
「しかも、ハルはなんにも悪いことをしてないのに」
「いじめじゃないッスか。自分等もいたぶられたらイイッスよ。どうにもなんない部分で悪しざまに言われ続けたらいいッスよ」
「リンカさんも相当キレてたんだなぁ…」
凛花さん、相槌が悪意に満ちてて素敵です。
「お嬢様が2倍になったような…」
ジャッシュが遠い目になってます。
「凛花の案を採用します。貴方達も自分じゃどうにもできない部分を責められて、精神的にいたぶられたらよろしいんですわ。ハルの痛みを知りなさい」
「ロザリンド、だから俺は…」
「ハル…私は気に入らないから仕返しするだけですわ。むしろうちの子をいじめる奴は私にいじめられると噂を盛大に流していただいて、二度とやる気が起きないように徹底的に痛めつけないと」
私はニッコリと貴族スマイルをかました。ハルは諦めたらしい。
「うっうっう………」
「ふえええ…………」
「ごめんなさい、ごめんなさい………」
小さな風の精霊達は、皆ハルに泣きながら謝罪した。
「…何を見せたわけ?」
「ハルの記憶と、ゾンビにひたすら追われる系サバイバルゲーム」
「おいいぃぃ!?後半は明らかにいらないだろ!!」
「ムシャクシャしたのでやりました。後悔はしてない」
ハルは私のかわりに小さな風の精霊達に謝ってました。しなくていいと思うよ。
そして凛花がキラキラしながら寄ってきました。
「自分もゾンビにひたすら追われる系サバイバルやりたいッス!」
「ああ…ホラーも好きだったもんね、凛花。いいよー、後でね」
やりたいと言うだけのことはあり、凛花は見事にクリアしました。魔法なんかの訓練にもいいので、難度を上げてまたやらせようと思います。
「あれやりたいとか、ありえない」
「あたまおかしい」
小さな風の精霊の囁きは聞こえなかったことにしました。
そして、ロザリンドと凛花は怒らせたらいけない。ハルや身内をいじめたやつは彼女達の逆鱗に触れ、ひどい目にあわされると風の精霊達にすごい早さで伝達されたのは言うまでもない。
なんか、楽しかったです。やはりロザリンドは書きやすい……




