未来を変える準備
朝、さっそくクリスティアの我が家に戻り、凛花に話してもらおうと思ったわけですが…なんか凛花の顔色が悪い。
「凛姉ちゃん…ロザリンドちゃん?は14歳ッスよね?」
「うん」
「昨日…満月だったッスよね?」
「うん」
「自分…おうさ…ジューダス様に召喚されたんスか?」
「うん」
「…………………それ素敵な恋しちゃお☆胸キュン☆ときめきマジカルアカデミー☆願いを叶える贈り人☆のヒロインポジション?」
「あたり」
「みぎゃあああああ!?明らかに胸とか色気とか魅力とか………色々と不足してるじゃねぇっスか!!今からでも故ちゃんにチェンジしてくださいッス!!」
「あっはっは。私も神様にそう言ったけど駄目だった」
「うきょー!!」
発狂する凛花。わかるわぁ…私もヒロインポジションとかなりたくないもん。
「…おはよう、ロザリンド。リンカさんは…大丈夫?」
何故人は大丈夫そうじゃないと思ったときにかぎって大丈夫?と聞くのだろうか。しかし、凛花はディルクを見ると姿勢を正して頭を下げた。
「おはようございます、ディルク様!凛姉ちゃん…ロザリンドちゃんを末永くお願いします!ロザリンドちゃんを幸せにしてくださいッス!ディルク様が居るだけで幸せになると思うッス!」
「……うん。俺の全てをかけて幸せにすると誓うよ」
「はいッス」
私がなんだか恥ずかしい。そして嬉しい。
「…いい子だね」
「凛姉ちゃんに育てられたッスから!」
「だからおもしれーのなぁ、リンカ」
「おはよッス、カーたん。誉め言葉ッスね。あざッス!」
カーティスに頭をグシャグシャにされつつ笑う凛花。
「………………なんか異常に仲良くなってない?」
「……波長が合うらしいわ」
「…そっか」
我が家の応接間に私、ディルク、父母、兄、ジューダス様以外の攻略対象者と彼方さん、シュシュさん、優姫、ユーロさん、シーダ君、ミルフィが集まった。
「で、真相ルートッスよね?熱愛☆魔法学園については説明したッスか?」
「いや、さらっと」
「そっからッスかね」
「そういや、ルーンアースシリーズは多分あんたがこっちにくる直前に話した、やたら白い男が作りました。そしてそいつは、シヴァという神様です」
「………ちょっと情報交換タイムを要請するッス!」
というわけで、ゲームに関する情報交換…というか、こちらの情報を渡しました。
「………ちょっと情報整理するッス。自分、マップを作ったッス。行った遺跡をチェックしてほしいッス」
「オッケー」
「…ほぼ網羅して………凛ね…ロザリンドちゃん、ここは?」
「ここ?」
「エクストラダンジョンがあるッスよ。全ルートをクリアするとオープンするッス。真相ルートに必要なものもあるッスよ」
「マジで!?」
「マジッス。精霊王全員の加護がないと入り口が開かねぇッスよ」
「…真相ルートとは、なんだい?」
アルフィージ様の質問に、凛花はこの世界をモデルに神が作った物語があり、それは未来を舞台にしたものもあること。その中の物語の1つが真相ルートであり、このままでは世界が滅亡直前まで追いやられると話した。
「…原因は?」
流石のアルフィージ様も顔色が悪い。凛花にロザリンドがかなり未来を変えたようだけどとディルクが話したが、根本が変わってないからダメだと話した。
「あと4年で魔の封印が解けちゃうんスよ。そもそも魔が出てきたのも、封印が綻び始めたから。ジューダス様が混血だとかは関係ないッス。だから再封印するか、別の方法を考えなきゃ駄目ッス。エクストラダンジョンにあるのは、その封印の要ッス。自分、マップ全部覚えてるから書くッスよ」
「ちなみに何階まであるの?」
「確か地下300階ッス」
「長い!!」
「帰りは転移陣があるからすぐッスよ」
「他にできることは?」
「今はそのダンジョンにあるモノの入手ッスけど…タイミングが大事ッス。最深部にあるのは魔の封印された本体ッスから、魔にバレたらヤベェッス」
「魔に気取られないよう、気配を封じる魔具を作るか」
エルンストは何やら考えているようだ。
「そもそも、精霊王全員と契約してる人、いるッスか?」
「あんた」
「………は?」
「凛花に契約させる」
「……………え?ロザリンドちゃんは?」
「私は他に精霊さんと契約しているから、凛花に契約させる」
「………今から自分が試練を越えられるぐらいに強くなるとか無理ッスよ!4年過ぎるッス!」
「そこは大丈夫。後必要なモノは?」
「罠も多いんで解除できる技術か天啓は必須ッスね。後は超直感辺りがいるといいッス」
「超直感はともかく、罠解除かぁ…」
「多少できるが、本職じゃねぇからなぁ…」
ヒューがぼやく。アデイルも頷いた。
「なら、自分が究極罠師の天啓をもらうッスよ。ちなみにロザリンドちゃんの天啓は何ッスか?」
「シヴァの寵愛、究極武器師、魔力可視化、並列思考だよ」
「うっわ…ミスティアの以外はバリバリ戦闘系ッスね。バランス考えて、自分はサポートが良さそうッスね」
「あ、覚醒接触はミルフィが持ってるから」
「了解ッス。ちょっと考えるッス」
「凛花は明日、私達と全精霊王契約ツアーだから」
「死ぬッス!無理ッスよ!あんた何を考えてるんスか?村人に竹槍…いや鉛筆持たせて魔王に特攻しろっていうのと大差ないッスよ!?」
「大丈夫、大丈夫」
「それ、かもしんないとか多分が後につくッスよ!!」
凛花はしばらくギャアギャア言っていた。しかし、
「ごめんね、諦めて」
「人間、諦めが肝心だよ」
「あの、えーと、頑張れ!」
「…私も微力ながら協力いたしますわ」
「誰一人無理だと言わずに諦めろ方向なのはなんでッスか!?ああもう、好きにするッスよ!」
皆の説得により逆ギレしつつも結局は受け入れたのでした。うちの凛花はやればできる子です。多分。




