天才か、馬鹿か
珍しいシリアスターン。
魔法院の誰かさん視点になります。
我々の計画は順調すぎるほど順調で、何の障害もなかった。協力者も多数いた。クリスティアは1枚岩ではなく、このまま時間さえかければ簡単に乗っ取りができると思われた。そう、本当に順調だったのだ。
だが、この1年で状況は激変した。いや、完全に状況はひっくり返された。
ウルファネアに協力していた貴族の失脚、騎士団の潜入員も根こそぎ捕らえられた。そう、本当に根こそぎである。多少は残っても良さそうだが、すべて捕らえられてしまった。
結果、俺は完全に孤立してしまい、ウルファネアが今どうなっているかもわからぬ状況だ。
魔法院はクリスティアにおいて技術の要…知識を漏洩させないため出るのは非常に難しく、連絡も厳重に制限されている。連絡役の騎士や貴族が捕まり…俺自身がマークされている恐れもあるから迂闊なことはできない。表面上は普段通りに溶け込んでいたが、内心は焦れていた。
そしてこの状況を作り出した人物の名は、ロザリンド=ローゼンベルク。恐ろしいことに、まだ7歳の小娘だ。年より大きめの体格だが、見た目は華奢で愛らしい。数年もすれば求婚者が後をたたないほどの美女になるだろう。
厄介なことに、あの賢者の弟子だという。今まで弟子をとらなかったクリスティアの賢者が唯一認めた弟子…つまり、魔法にも秀でているということだ。
その優秀さゆえか、彼女はすぐに呪いに気がつき…本人が解呪したか賢者がやったのかは知らないが呪いも解いてしまった。さらにさっそくエルンストと第1の研究員を仲間にひきいれ自分の仲間を魔法院にひきこんだ。
一体何をたくらんでいるのか、用事にかこつけて第1に行ってみたが…
「駄目よ、クラリン!もっと可憐に!優雅に!」
「クラリン泣いちゃう…だってお爺ちゃんだもん…」
なにしてんの?
意味が解らない。ロザリンド=ローゼンベルクは、ボケた爺さんに調きょ…何かを教えていた。わけがわからない光景に硬直する。しかも爺さんは女装している。本当に何がしたいんだ?
「…あれは何をしているんだ」
第1の室長に話しかけると、苦笑していた。
「ああ、院長の罠チャレンジをするそうです」
「…爺さんは関係ないだろう」
「………ですよねぇ」
こいつ、関わりたくないんだな。しかし、あまりにもロザリンド=ローゼンベルクは不可解だ。
そして、翌日。本当に院長を罠にかけていた。しかも、自分で罠にかけておいて院長に土下座をしていた。お前は何がしたいんだ?しかも院長、尻が出てるが、どんなえげつない罠を仕掛けたんだ?院長を疑っていたわけでもなさそうだ。本気でわけがわからない。しかし、不可解故に恐ろしい。
さらにあの院長が『悪魔っ子』と呼び、見るたび土下座をしている。あの鋼鉄…いや、オリハルコンではないかと思われるメンタルの院長に半日でトラウマ植え付けるとか、どんな鬼畜なのだ。
まさか呪われた人間を放置して、院長に罠試して遊んでたとか言わないよな?頭がおかしいとしか思えない。
ロザリンド=ローゼンベルクの存在は非常に気になるし警戒すべきではある。しかし、俺は俺の仕事をするだけだ。邪魔なら排除する。今まで以上に慎重にいかねばなるまい。
『そうだ、それでいい。我が忠実なる従僕よ』
ウルファネアにいる、我が主の声がした気がした。
そう、すべてはウルファネアの…我が君のために。
客観的に見ると、ロザリンドも変人だという(笑)




