教え上手とかくれんぼ
お次はわざわざ騎士団から人員を借りてきたらしく、新人騎士さんが来ました。
「パパは子供に色々教えなければなりません!というわけで、教え上手対決!ちなみに教える内容で得手不得手があるでしょうから、内容はそれぞれにお任せします!」
新人騎士さんは全部で9人。3人ずつ教えて、それぞれにどうだったか確認。分かりやすかったと答えた人数が多かった人の勝利。
地味な戦いなので割愛。結果は以下の通り。
1位➡父
1位➡ジェラルディンさん
3位➡ミチェルさん
「解説のお二人、番狂わせでしたね。学者で教えなれているミチェルさんが最下位という結果でした!」
「うちの御主人様は新人騎士の役立ち情報だったし、分かりやすかったんじゃね?見本も使って書類記入とか、間違いやすい部分とかさ。ジェラルディン様は…やっぱ騎士だし実地で英雄に稽古つけてもらうって…騎士ならこれをわかりにくいとは言いにくいよな」
「補足するとジェラルディンさんは私やジェンドで手加減も学びましたし、案外得意分野なのかもしれませんね」
「おお、お嬢様も解説ありがとうございます」
「…ミチェル様は植物について熱く語りすぎたな。騎士が引いてた。話は…俺は面白かった」
「先生の講義…来てよかった」
兄がキラキラしてます。私も聞いてましたが、騎士さん達は植物への興味が薄かったらしく、うとうとしてる騎士さんもいました。
「…こんなのはどうです?」
植物系魔物の倒しかた、弱点、森の歩き方の注意点、擬態の見分け方など。騎士ならお役立ち情報を幻影を使って解説した。
「わかりやすいです!」
「ありがとうございます!」
好評でした。
「1位はお嬢様ですかね」
「いや、私は参加してないから!性別から違うから!」
「…でもお姉ちゃんは教えるの上手だよね」
「うん」
子供達も頷きました。
しかし、ジェラルディンさんがかけっこ最下位だったり、ミチェルさんが教えるので最下位だったり、意外な結果が続いています。
「さて、お次は…パパなら子供を見つけられるはず!普段を見ていれば簡単ですよ!かくれんぼ対決!ちなみにジェラルディンさんはハンデで嗅覚による探索禁止です。天啓もありますんで、嗅覚は使用不能にさせていただきます」
使用不能にってどうする気?と考えていたら、悲鳴が聞こえた。
「ぐあ!?」
ジェラルディンさんがのたうち回っている。近くにいるスイがナニかを持っているが…それは凄まじい異臭を放っていた。
「……それなに?」
「ん?世界一臭い花、ハッコーシタクツシタ」
確かに臭そうだ。しかし、私は大切なことをスイに告げた。
「…ジェラルディンさんには全異常無効耳飾りがあります」
「あ」
外してもう1回嗅がされてました。流石に可哀相でした。ミチェルさんも獣人なんでと嗅がされそうになりましたが、臭いがわからなくなる植物は他にもあるだろ!と拒否。別の植物を使ってました。ジェラルディンは無駄な犠牲だったようです。
うちのスイが申し訳ありません。多分わざとです。後で叱ることにしました。
普通のかくれんぼとは違い、変則ルールです。父は私と兄、ジェラルディンさんはジャッシュとジェンド、ミチェルさんはミチェルさんちのちみっこ(末っ子)とシーダ君を探します。ちなみに彼らもこの対決のためにつれてこられました。
「…親父がすまない」
「…こちらこそ、父と叔父がすいません」
互いに謝罪しました。さて、気をとりなおしてゲーム開始です。
「どこに隠れるかな…」
隠れる範囲は屋敷の敷地内……これ今日中に見つかるのかなぁ……
私は応接室の壺のなかに隠れました。
「ロザリンド、見つけた」
超アッサリ見つかりました。えええ…
「なんでわかったの?」
「ロザリンドは服が汚れないよう室内に隠れると思ったし、あまり探しにくい所には隠れないだろうと思った。適度にわかりにくい所を探していたら、いた。ルーは植物があるところだろう。庭…いや温室だな」
「庭にも木とかありますよ?ユグドラシルさんとか」
「ルーは木登りはしない。木を傷つけるのが嫌だからだ。ユグドラシルは可能性があるが、ルーの事だから今頃は温室で植物の世話をしているだろうな」
父の読みは当たっていた。
「隠れようよ、兄様」
「あ、あははははは…ついつい片付けようとか思ったらさ…」
戻ったら、父が1番早かったと言われました。
「旦那様、お見事!お子さんの行動を読んでましたね!」
「ああ」
「まぁ…息子と娘をよく見てるってことだな」
「そうですね…俺も側にいることが多いからルー様は予想がつきますが、お嬢様は無理です。むしろ普通に隠れてたことに驚きです。魔法使ったり、無駄なクオリティ発揮するかと思ってました」
どういう意味だ、ゲータめ。私は父に嫌がらせしたりしないよ!
「…ロザリンドは意図的に私を困らせることはしない」
「パパ大好き!」
うちの父は本当に私を見てくれてます。
「あ、ずるいよロザリンド。僕も!」
「うふふ、ママも混ぜて」
「………」
「…顔が残念なことになってんぞ、御主人様。ご婦人泣かせの絶対零度の貴公子の名が泣くぞ」
確かに、父が…わかりやすくデレデレになっている。超珍しい。というか、そのアダ名はなんだ。父の過去に何があった?
「…私は妻と子供達がいれば……妻と子供達にモテればそれでいい」
父、言いきった!
「パパカッコいい!」
「うふふ、でしょう?」
母、ドヤ顔です。
「当然だよ。うちの父様は世界一なんだから」
兄もドヤ顔です。私もうちの父が世界一だと思ってますよ。
「ルー、家ではパパと呼びなさい」
「…え?パパ?わ、わかりました」
「シンシア…こんなにも可愛い子供を二人も産んでくれてありがとう」
「…うふふ」
父からでこチューされる母。幸せそうですが…なんか…楽しそうというか?母に違和感を感じて確認しようとしたら、ミチェルさんが来ました。
「いやあ、天啓で末っ子は見つけたけどシーダが本気で隠れてるらしくて植物に聞いても見つからないわ。ヒントとかない?3年離れてたから行動の予測つかないなぁ」
「…3年離れてたって大きくは変わりませんよ。考えてみてください。3年前のシーダ君ならどこに隠れるか。シーダ君は天啓を使用不能にしただけで、見つけられないとこに隠れたりはしませんよ」
「…ああ、そうだな。よし、パパとにーにを探すぞ!あ、審判!子供と探すのはありか?」
「「あり」」
「よし、どっちが先ににーにを見つけるか競争だ!」
「はーい!」
楽しそうに走る親子は、しばらくしてシーダ君を見つけてきた。普段大人びているシーダ君が子供らしくじゃれている姿は新鮮でした。こっそり録画してミルフィに横流ししようと思います。
「お嬢さんの言う通りだったよ」
ミチェルさんは、後でこっそり話に来ました。ラトル家も仲良しなようでなによりです。
そして、子供を発見できないダメ親父…じゃなかったジェラルディンさんは、走り回っております。刑事は足で探す的な脳筋方式です。
「嗅覚…封じなくてもよかったかな……」
スイが首をかしげています。
「うちの子供達はかくれんぼクオリティが異常だからなぁ…マリーはありえないとこに詰まってたり、ネックスは前日から穴掘ってたとこに潜んでたり、ポッチは布に見事な絵を描いて同化してたり、オルドは元暗殺者なだけあって、かくれんぼじゃなく潜伏してるし」
「…子供達のかくれんぼクオリティが異常なのはお嬢様が相手だからですよ?私相手なら普通に隠れてますから。お嬢様ならどこであろうと見つけるから、子供達も本気になるんです」
「…私のせい!?というか、隠れなくていいの?」
ジャッシュは悲しげに目を伏せた。
「…こんなに堂々と居るのに見つからない男が隠れたら、見つかりませんよ」
確かに、走り回るオッサンは微塵もジャッシュに気がつかない。
「…普段から気配消すからだよ!」
「…こうなったら爆竹か何かでアピールするしか…」
「それかくれんぼじゃないから!」
私とジャッシュがやり取りしていたら、ジェラルディンさんが木にぶつかり、ジェンドが落ちてきた。なんというラッキー。
「おお、ジェンド!見つけたぞ!」
「きゃははははは!わーい!見つかっちゃったぁ」
お互い楽しそうに尻尾を振っています。
「審判!見つけたぞ!」
「え?」
「ジャッシュさんは?」
「ジャッシュなら開始からそこの木の後ろに居ただろう」
「…居ました」
ジェラルディンさんはジャッシュに気がついていたらしいです。ジェラルディンさん、どうせなら暴挙に出そうだった息子の悲しみにも気がついてほしかったよ…
「気がついてらしたんですね」
「うむ!目が合ったし主と話していたからてっきり見つかったつもりでいるかと思ったが…違うのか?見つけたぞと言わねばならなかったか?」
「…いいえ。見つけてくださりありがとうございます」
「うむ!ふはははは!」
「うわぁ!?」
「おとーさん力持ち!」
「はっはっは」
ジェラルディンは上機嫌で右にジャッシュ、左にジェンドを抱えて走り回る。文句を言いつつ、ジャッシュの尻尾もパタパタしてました。よかったね、ジャッシュ。ジェンドは普通に楽しそうです。
ちなみに、やはりジェラルディンの超直感は変質してしまい、戦闘や広範囲の異変察知に特化していて探し物に向かないことがわかりました。つまり、無駄にクサイ臭いを嗅がされたジェラルディンさんがかわいそうな結果となりました。
ちなみに順位は以下の通り。
1位➡父
2位➡ミチェルさん
3位➡ジェラルディンさん
現在父が優勢です。
すいません、まだ続きます。書いてて楽しいです。




