服と下着とヒーロー
ディルクのファッションショーを楽しんだ私は、おばさまに提案しました。同じデザインのお揃いドレスはできないか。例えばアオザイの下をパニエで膨らませたスカートにして……
「素晴らしいデザインだわ、お嬢様!」
リスのおばさまはキラキラ瞳を輝かせると、凄まじいスピードで縫い上げてしまった。
「ええええええ!?」
「すごいね」
「そーだろ!母ちゃんはここらで1番の縫術師なんだ!」
縫術とはウルファネアで一般的な獣化しても脱げない服に使用されている魔法の一種である。ちなみにクリスティアでは珍しい。
「わあああ…ディルク、せっかくだからお揃いが着たいなぁ。おばさま、もう少しカジュアルなワンピース風も欲しいです」
またデザインを書くと縫うおばさま。まるで魔法みたいに瞬く間に服が出来上がる。
白を基調にした青い薔薇モチーフのチャイナドレス風ワンピース。クリスティアは足を出すのはあまりしないのでスリットはわざと別布にしてパニエですこしふんわりさせ、腰にグリーンのリボンをあしらう。白だがカイコッコの布は透けない素材らしい。伸縮もよく、着心地もいい。
ディルクは黒を基調にした青い薔薇モチーフのチャイナ服風。腰にグリーンの巻き布をしている。ノースリーブなのでたくましい腕が丸見えです。夏仕様で私とディルクの服には涼感の縫術も施されているらしい。確かにひんやりしてて心地よい。
さらにいくつか夜会でも使えそうなディルクとお揃いウルファネアテイストドレスを何着か仕立ててもらい、私の服の支払いをしようとしたら断られた。
「お嬢様のおかげでインスピレーションがスゴいのよ!このデザインは流行るわ!だからお代はけっこうよ!」
おばさまの瞳はキラッキラです。売れる…か。
「おばさま、ならば提案があります」
「?」
「ええと…」
私が描く図面を見て、おばさまは首をかしげています。
「これは?」
「勝負下着です」
「何と戦う気だ」
リス少年からツッコミ来ました。
「ここぞというときにつがいを誘惑するため!ある意味戦いです。カイコッコは布として最上位ですし、手触りや伸縮もいい。高級下着に適しています。貴族や高級娼婦に需要があります。クリスティアでこの系統のデザイン下着が流行りつつありますが、カイコッコほどよい布は流通していません。しかもフリーサイズで誰でも着られる。これは絶対売れます。なんなら私が契約して仲介してもいい」
「………………」
目から光線が出そうです。おばさまは奥から布を持ってきて高速で縫いだしました。
「いかが!?」
「素晴らしい!他にもデザインを…ディルクはどんなのがいい?」
「…………おれ、たち外、でる」
ディルクはカタコトで真っ赤になりつつリス少年を片手に担いで出ていきました。これはまだノーマルな部類だよ?しかしディルクが出た隙に、いわゆるセクシー下着も大量にデザインしました。
おばさまは私と契約してくれるらしい。やったね!カイコッコの服が買い放題だ!利益は私に1割。残りはおばさま。ふっふっふ。売りまくりますよ!
商談も終わり、外に出たらごろつきがたくさん居ました。怯えるリスの親子。
「さっきはよくも恥をかかせてくれたなぁ!」
なんかキレてるさっきのカエル。いや、私らはなにもしてないよ?
「…お前が私の婚約者の怒りに怯えて勝手に粗相しただけでしょう?逆恨みじゃないの。まぁいいわ」
私はすうっと息を吸った。やや棒読みなのはご愛嬌だ。
「たすけてー、ウルファネアマスクー!!」
「わはははははは!ウルファネアマスク、見参!!」
「ええええええ!?」
「まぁ…」
狼のマスクを被ったスー○ーマン的なウルファネアマスク(オッサン)が出現した。ウルファネアマスクは民家の屋根から飛び降りた。普通に出てこい、ウルファネアマスク(オッサン)
「たすけてー、ウルファネアシャドウー!!」
「影に生きるは我が運命…悪に鉄槌を!ウルファネアシャドウ!!」
「すげぇ!かっけぇぇ!!」
「まあぁ…」
ちょっと照れがはいってるね、ウルファネアシャドウ(ジャッシュ)。さて、私のヒーロー(笑)達はあっという間にごろつきを片付けた。そもそも強化された英雄に敵うやつはそうそう居ない。まさにちぎってはいないが、ごろつきをポイポイ投げている。ウルファネアシャドウはごろつきが他人に当たったりモノを壊さないようフォローしている。なかなかのコンビネーションである。
「騎士に引き渡してきます」
むしろあんたらが不審者ではなかろうか。捕まらないか?
「よろしくー」
「…なんで変身してたの?」
「ああ、ある意味有名人だからと…使いたかったんでしょ」
「ああ…」
ディルクが呆れた表情です。
「すげー!すげー!ウルファネアマスクかっこいい!」
「ウルファネアマスクー!」
「いいぞ、ウルファネアマスク!!」
リス少年や近所の子供達、野次馬が声をかける。ウルファネアシャドウがいじけてるんで、ウルファネアシャドウにも声援をあげてくれ。
「ウルファネアシャドウのおかげで被害ゼロだよ!ありがとう」
「お嬢様…」
「はい、おかげで店も無事です。助けてくださってありがとうございます」
「いいえ、礼には及びません。ちち…ウルファネアマスク!騎士に彼らを引き渡しに行きますよ!」
ウルファネアマスクは子供をたくさん乗っけていたが下ろし、縄を近所の人にもらってごろつきとカエルを引きずっていきました。
ありがとう、ウルファネアマスク!ありがとう、ウルファネアシャドウ!私は君たちの活躍を数分ぐらいは忘れない!




