お昼ごはんと仕事と遺跡
とりあえず空中要塞をどうするかは後で考えることにして、早目のランチタイムとなりました。
食堂に案内されて、皆でお弁当です。
今日はサンドイッチです。こっちのパンは固いので、パンは自家製です。
「あ、シュシュさん、彼方さんに例のやつを」
「ああ!カナタ!カナタが食べたいと言っていたはんばーがをロザリンドちゃんと作ったんだ!」
シュシュさんはバーガーセットを並べていく。欠けていたコーラも入ってますよ。
「うわ、ナニコレめっちゃ凝ってるやん!シュシュナルド…」
ロゴを見て、彼方さんは私にアイコンタクトをしました。頷く私を見て、彼方さんは私が作ったと理解したようです。彼方さんがコーラをひとくち飲んだところで、声をかけました。
「彼方さん、そのコーラは一杯で別荘が建つお値段です」
「ばふぉめっと!?」
彼方さんが口と鼻からコーラを噴き出した。そして盛大にむせた
「げふっ、ごほっ!そんな高価なやつ飲ませんでくれ!」
「あはは。コーラとして作ったんじゃなくて、魔力安定薬なんですよ、それ。普通の人が飲んでも影響はありません」
そんな感じでランチタイムは過ぎていきました。お腹が満たされたところで、情報の確認です。
「ここは何のための施設なの?」
「居住を目的としております。晩年、しつこい求婚やトラブル相談が来るので嫌になったご主人様が、なら誰も来られないとこに住めばいい!とこの要塞を創られました」
「………兵器はなんのために?」
「どうせなら、ラピタだかピカタだかみたく…とかおっしゃられて後から付け足していました」
「なんでだろう。一気にリンの関係者だって納得した」
どういう意味だい、ディルクよ。でも否定できないわ。私も同じことをやりそうな気がする。
「ミーコちゃん…渡瀬言葉は幸せでしたか?」
「肯定。愛する旦那様とお子様に囲まれて、晩年は幸せだとおっしゃられていました」
「そっか」
その後要塞内部を見て回ったが、本当に居住性をとことん追求した施設でした。自給自足ができるように、畑や温室、家畜の飼育もされていた。余談だが、さきほどミーコちゃんが持参した物体Xは貯蔵庫が劣化していたため腐った結果だったことが発覚。ナビィ君が一瞬で消し炭にしてました。
食洗機、洗濯機、レンジ、ミキサー…便利家電(ただし動力は魔力)が多数ありました。調度品はこと姉ちゃんと旦那様の趣味らしい。そういえば、ああいうちょっと可愛い家具好きだったなとほっこりした気持ちになりました。
「…老後はここに住んでもいいかもしれない」
「…そうだね」
「ロザリンドちゃん空へは遊びに行きにくいから、せめて地上にしてくれないか?」
「わ、私もお供します!」
「面白そうだな!」
そんなボケが流れっぱなしなゆるーい会話をする私達の背後で、常識人(彼方さんとアンドレさん)はツッコミをしていた。
「そもそも、こんなとこに住むなよ」
「せやな…住む発想が出てきちゃった辺りが普通とは程遠いよな」
私は何も聞こえませんでした。私は良識ある貴族の令嬢です。
結局オトコハツラ遺跡は後日となりました。こと姉ちゃんは魔の復活に備えて情報や魔への対抗策を分割して世界中に遺したのだそうです。それを私が見つけるなんて…偶然にしては出来すぎな気がします。シヴァの導きなのでしょうか。
午後は書類仕事タイムです。ディルクはバートン侯爵領の仕事もあるんで一時別行動。
「さぁ、本気をだしちゃいますよ!」
「うん、サクッと片付けようか。僕さっさと研究に戻りたいし」
「微力ながらお手伝いいたします」
私、兄、ジャッシュが本気を出しました。ちなみに書類仕事では役に立たない英雄は魔具もって討伐(遊び)に出かけました。元気だね!
1時間後。
「…終わった…」
シュシュさんが燃え尽きた。デスクワーク苦手なんだね。
「…マジで!?やべえ!!なんで!?ロザリンド様達超スゲー!!」
アンドレさんがメチャクチャ挙動不審になってます。
「私は未来の侯爵婦人(ディルクの嫁)教育受けてますから、仕事慣れしてますから」
「僕も未来の公爵だから似たような仕事手伝い慣れてるから」
「騎士団で経理等、雑務してますから」
「最後は無理がある気が…」
ジャッシュが黒い笑顔を浮かべたので、アンドレさんは黙りました。素晴らしい危機察知能力です。世の中にはつっこんだらいけないこともあるのです。
時間が余ったので、オトコハツラ遺跡にも行くことになりました。
私、シュシュさん、ディルクです。ジェラルディンさんが同行を拒否しました。珍しい。ジャッシュも多分力になれないからと来ませんでした。すごく珍しい。ディルクは耳飾りがあるから多分大丈夫と言われました。え?何?どゆこと?この遺跡は女性推奨らしいが、何故なのかは知ってるらしい男性陣は説明を拒否しました。なんなの?彼方さんも危険だから連れていくなと止められたので地図を書いてもらいました。私は迷子になるのでディルクが預かってます。
そして、理由を理解した。
「いやあああああああ!!」
「らめぇ!やめてぇ!!」
この遺跡は男性をある意味女性化させるエロダンジョンだったのです。そりゃ誰も言いたくないわ!私だって言えないよ!哀れな見知らぬ犠牲者を助けてやった。とりあえずまだダンジョン入口だったので、適当な服と回復薬・状態異常回復薬を使ってやり、別れました。
「ディルク、ディルクのお尻は私が守るからね!」
「……うん…いや、自衛するから!俺もあんなの嫌だから!」
シュシュさんは噂程度に知っていたらしいが、いきなりえぐい現実を突きつけられてカナタを連れてこなくて良かったと言ってました。私も知ってたら連れてこなかったよ!!
しかし不思議なことに、女性は無視するこの遺跡の魔物………まさかとは思いつつ、私は叫んだ。
「待ち人・渡瀬凛が来ました!防衛システムの停止を要請します!私の連れを害するなら許しません!」
『システム、停止シマシタ。オ待チシテイマシタ、マスター』
「え?」
ディルクを襲う蔦の魔物や触手の魔物が一斉に動きを止めて壁に貼り付き道を開けた。この悪趣味ダンジョンも、こと姉ちゃんの黒歴史であるようです。本当に何をやらかしてんの!?
長くなりそうだから切ります。
アンドレさんは薄々ジャッシュの正体に気がついてますがやぶ蛇だから黙ってます。蛇だけに。
シュシュさんは似てるなーと思ってますが、ジャッシュがジャスパー時代と違いよく笑ってるので他人のそら似だと思ってます。




