ボーイズトークも恋ばな?でした。
ディルク視点です。ロザリンドがミルフィと恋ばなをしている時間のお話ですね。
今回はさすがにロザリンドと別室です。ちょっと寂しいかな…
寝る準備をしていると、アルディン様に話しかけられた。
「ディルクはろりこんなのか?」
しん、と場が静まり返った。
「違います」
即座に否定したものの、とんでもない爆弾発言だ。カーティスが爆笑しているので、後でしめる。俺は深呼吸をした。
「俺はロザリンド以外に反応しませんし、幼女に興味はありません。ロザリンドがたまたま幼かっただけで、ロザリンドなら年上だろうが年下だろうがおばあちゃんでも猫でも愛せる自信があります」
「そ…そうか」
アルディン様の顔がひきつっている気がする。
「ロザリンドがディルクを好きなのはもはや常識だけど、ディルクがロザリンドを好きってのも全く揺らがないよな」
「常識かは知らないけど…そうだね。ロザリンドが好きなのは揺らがないと思うよ」
カーティスに言われて、俺はロザリンドを思い出して微笑んだ。アルディン様がさらに話しかけてきた。
「ディルクが騎士を辞めたのはロザリンドのためか?もったいないな。お前なら騎士団長にすらなれただろうに」
「騎士団長になれたかはともかく、辞めたのは自分のためですよ。ロザリンドとずっといるため、彼女と同じものを見るために、自分のために、自分で決めたんです」
「そうか」
アルディン様が穏やかに笑った。アルディン様は今度はシーダ君に話しかけた。
「そういえば、シーダはミルフィリア嬢が好きなのか?」
「えふ!?」
シーダ君がむせた。とりあえず背中をさすってやる。さっきから、アルディン様はわりととんでもない爆弾発言をしているな。
「な、な、なんだよ急に!」
シーダ君は動揺しまくっている。色素が薄いから、耳まで赤いのがわかる。
「いや、友人の恋路を応援してやろうかと思ってな。ミルフィリア嬢は賢くて勇気もある。ずいぶん仲がいいから、てっきりシーダもミルフィリア嬢が好きなのかと思ったが?ミルフィリア嬢は素晴らしい令嬢だぞ」
「俺の意思がどうであっても、手の届く相手じゃねぇだろ」
うーん、そうでもないかな…多分。俺はシーダ君に説明してやることにした。
「確かローレル家はご両親も恋愛結婚だったし、ミルフィリア嬢が本気ならご両親は反対しないはずだよ。シーダ君はお父様の嫌疑が晴れれば貴族籍に戻るし、手が届かないわけではないんじゃない?」
「それは…」
「ふふ、素直にミルフィリア嬢が好きだと言うならミルフィリア嬢の情報をあげるよ?好みの色や小物、集めているもの、好きな本など、かなり有益な情報じゃないかな?」
アルフィージ様が悪い笑顔をしている。からかうつもりだな。
「兄上…いじわるしないであげてくれ。シーダはミルフィリア嬢に真剣なのだ。それゆえ身を引こうと言っているのだ」
まぁ、間違っちゃいないけど…アルディン様が先程のシーダ君の発言をどうとったのか確認したい。
シーダ君は頭を乱暴に掻きながら話した。
「別に身を引こうとまでは考えてねぇよ。好きかまでは…正直わかんねぇけど…ミルフィリアはすっげぇ可愛いと思う」
「ふむ、仕方ないね。情報はあげるよ」
アルフィージ様はメモをシーダ君にあげた。アルディン様も俺ものぞきこむ。すごいな、家族構成から生い立ちまで…あれ?この筆跡はどこかで…
「兄上の筆跡ではありませんね」
「ラビーシャ嬢から買ったからね。いや、なかなかに優秀だよ、彼女。諜報員として雇いたいぐらいだ。残念ながらロザリンド嬢に心酔してるから、勧誘は断られたけどね」
ラビーシャ嬢は何をしてるんだろう。とりあえず、後でロザリンドに報告しておこう。
「まぁ、ミルフィリア嬢とうまくいくといいね。彼女は私達の友人だ。悲しませたら許さない」
「…当たり前だ」
アルフィージ様は満足げに笑った。それから散々シーダ君をいじり倒し、シーダ君がキレるまでいじり続けた。そういえば、ルーが全く会話に参加していない。ルーを探すと、部屋の隅で丸くなって本を読んでいた。
「先生…必ずやお助けします!」
シーダ君のお父様の本を読んでいるらしい。なんというか…ファンなんだろうな。近寄らないほうがいいと判断して、そっと離れた。
アルフィージ様達はまだ話をしている。
「しかし、いいな。シーダ達の恋愛はほのぼのとしていて、見ていてなごむ」
「…お前なら見た目もいいし、選び放題なんじゃねーの?」
「ふむ。否定はしないが、1つ話をしてやろう。私はある日、清楚な令嬢から菓子をもらった。それなりに仲良くしていたし、まぁ形式上毒味してもらって、菓子を食べるつもりだった」
アルフィージ様はため息をついた。一瞬ためらうそぶりをみせたが、続けた。
「菓子には長い髪の毛がみっしりつまっていた。毒味役の従者は涙目だった。噛むことも吐き出すことも出来ずに固まる従者に、さすがの私も悪いことをしたと思ったよ……」
「うわぁ…」
「それは…」
「キモいな」
明らかにドン引きする全員。カーティスがズバッとキモい発言をしていた。誰も口にしないが、確かにキモい!
「そして、その令嬢とは距離を置くようになった。なんでも髪の毛は親しくなれるおまじないだったらしいが…限度があるだろう!以来私はロザリンド嬢以外の手作り菓子は食べていない」
何その恐怖体験。地味に怖い。たまたまアルフィージ様は毒味役がいたからいいが、自分がやられたら…トラウマものだ。いや、アルフィージ様はロザリンド以外の令嬢が作った菓子を食べられないのだから、立派なトラウマだろう。
「兄上、そんなことがあったのですね。俺もそういうのありますよ。城でとある令嬢にあいさつされました。最初は気にならなかったのですが、毎日必ず会うのです。兄上ならおわかりでしょう?それがどれだけおかしいか。あの広大な城で、仕事で広範囲移動する俺に必ず会うのですよ?幸い学校は違うので学校では会わなかったのですが」
「まさか…」
「転入してきました。クラスは違いますが、廊下に出ると必ずいるんです」
アルディン様は涙目だ。アデイルが補足した。
「会うだけだから、排除もできないのよね」
「俺がナンパしてみたけど、睨むだけでさ。よく言えば一途かな?って感じ」
アデイルとヒューも困っているようだ。ただ、ひとこと言わせてほしい。
「…なんで恋愛話から、本当にあった怖い話になっちゃったの?」
とりあえずアルディン様の件はロザリンドにお願いしました。ロザリンドは、何そのすとーかー!大丈夫、私がなんとかします!といってホントになんとかしちゃいました。
令嬢には別の犠牲者をあてがったらしいです。アルディン様は何度も何度もお礼を言ってました。怖かったよね。
子供達はそろそろ寝るようだが、俺は正直寝るには早い。カーティスが酒瓶を片手にへらっと笑った。
「ディールク、飲もうぜ」
ロザリンドは居ないから以前のような失態もないだろう。たまにはいいかと頷いた。
それが間違いだったと、朝嘆くことになりました。ベッドには最愛の婚約者が安らかに眠っていて、俺は全裸です。記憶がありません。
本当になにやらかしたの!?俺!
普通の恋ばなにならなかった不思議。なんというか、女子でも微妙にキャッキャにならんのは何故でしょうか。
ディルクが何をやらかしたのかは、次回のロザリンド視点で明らかになります。




