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VRMMOでものづくり始めました  作者: SAK


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隠し階段先の攻略準備

「おお……もう既に攻略が始まってるのか……」


 俺がピラミッド前の岩石砂漠にある、横穴の隠し階段の情報を投稿してからまだ1時間も経っていないのに、続々と攻略班やランカーが集まってきているようだ。

 隠し階段の先のモンスターは今まで通りの砂漠モンスターに加え、褐色の毛並みを持つウルフ……通称デザートウルフなど、新規モンスターも出現するようだ。なお、新規だけあって他のモンスターよりも強いらしい。

 また、検証として状態異常無効化鉱石を持たないままダンジョンに入り、操られるか試しているプレイヤーもいるとか。身体張ってるなあ……ちなみに、操られて周りに迷惑をかけないように、すぐに倒されるように最弱の装備で固めているとか。

 確かに必要ないなら貴重な鉱石を無駄に使うことになってしまうので、重要な検証ではあるんだよね。


 結果としてはピラミッドと同じ深さぐらいの第三階層に着いたあたりで操られ、やはり状態異常無効化鉱石は必須ということが分かった。先日のピラミッドの大規模探索で結構な量を消費したし、またしばらくは状態異常無効化鉱石が高騰するだろうなあ……。


 俺はと言うと、攻略の補助をしようとマーメイドクイーンさんに加護武器の作製をお願いするためにトレントの島に来ていた。


「楽しみだねー」


 ……途中でなぜかシルフィーさんと合流して。


 すごく久しぶりに会ったのだけど、どうしてこのタイミングなんだろうと尋ねたら。


「えっ、だって楽しそうな気配がぎゅんぎゅんするからー」


 ……なんで心を見透かされているのだろうか。

 実は、加護武器をたくさん作製してもらうために、前々から準備を進めていたアレを今日稼働させようと思っていたのだ。


「まーまー、気にせずれっつごーよー」


 いやぁ、本当に奔放な人だ。



 そういえば、島に着いた時に周りの木がなぎ倒されてたんだけど……最近、台風とかあったっけ?


 その後、シルフィーさんを連れてマーメイドたちのダンジョンへと入っていく。

 シルフの上位種を連れているからなのか、元々休戦しているウンディーネたちは俺たちの方を見てびくびくしている。それだけシルフィーさんが強いってことなんだろうけど……。


 そして、マーメイドクイーンさんのいる階層に入ると、すぐ目の前にマーメイドクイーンさんが三叉槍を持って待ち構えていた。


「……ふむ、コウと一緒ということは……敵ではないようだな」

「いえーす。わたしはかよわいシルフのシルフィーちゃんだよー」

「……まったく、それだけの魔力を垂れ流しておきながらかよわいとは……食えん奴だ」

「そうそう、食べてもおいしくないよー」

「いや、そういう意味では……まあよい」


 マーメイドクイーンさんは三叉槍を降ろすと、俺たちの方に向き直る。


「さて、今日はそのような者を連れてどういう用件だろうか?」

「ええと、実はシルフィーさんは途中で偶然合流しただけで、今日は魔石の提供と……外にとあるものを造れたことをお知らせに来ました」

「ほう……それは気になるな」

「きになるきになるー。木に生るー」

「……では、行くとしようか」


 マーメイドクイーンさんはシルフィーさんの自由な言動に若干呆れているようだ。

 まあ、マーメイドクイーンさんは真面目だから余計に疲れるんだろうな……。




**********




「……ここか? 何もないようだが……」

「今出しますね」


 俺はアイテムボックスから遊具を取り出して海岸に設置する。

 ……いや、この大きさを取り出すって表現はどうなのかと思うが……。


「これは……途轍もなく巨大なウォータースライダー……か」

「おー、すっごーい」


 今回は外で造っただけあって、ダンジョン内で使っているウォータースライダーの3倍ほどの大きさになっている。3倍と言っても、カラーリングは赤じゃなくて水を意識した青だけど。

 更に、今回はカーブを多用したり、アップダウンをつけたり、そして最後には……。


「……ん? 最後は着水しないのか?」

「ええ、少しの間の空中浮遊感を楽しんでいただこうかと思いまして」


 最後は海に着水するのだから、終点を少し上向きにして空中に飛び出るようにしている。

 何回もテストプレイはして、着水時にあまり痛くならないようにはしているつもりだ。

 ダンジョン内では岩が多くて危ないので、こういう試みができるのも屋外ならではだなあ。ちなみにうちの子たちには最終調整の後に遊んでもらった。


「それでは、マーメイドクイーンさんからお試しいただけますか?」

「うむ、それではやらせてもらおうか」

「えー、わたしも最初がよかったー」

「それなら、余が抱いて一緒に滑るか?」

「いいのー? ぽよんぽよん」

「どさくさに紛れて胸に顔を埋めるな……まあよい。それでは行くとするか」


 マーメイドクイーンさんはシルフィーさんを抱えたまま頂上まで登り、タンクに水を貯めてから一気に放出し、コースを滑り降りていく。


「おお……!」

「ひゃー、たっのしー」


 くねくねしたカーブを勢いよく曲がっていき、その後らせん状になった部分をぐるぐる回りながら滑り降りていくマーメイドクイーンさんたち。

 そして、最後の直線は急勾配になっており、そこで勢いをつけて最終的には……。


「しゅぽーん」

「これは……」


 少し上向きになったコースの終端から、二人は空中に飛び出す。

 そして勢いよく海の中へと着水する。



 ここからは自力で陸に帰還しないといけないのがちょっとした欠点なんだよなあ。

 2人が戻るまでちょっと待とう。



「うむ、かなり面白かったぞ、コウ」

「さいこー。ほめてつかわす」

「あ、ありがとうござ……って、シルフィーさん、服、服っ!」

「んー?」


 シルフィーさんのいつも着ているワンピースの服が海に入った際に濡れてしまい、肌にべったりと張り付いて透けてしまっている。

 ……俺たちが検証している時は水着を着ていたからよかったけど、確かにこういうのも欠点だな……。


「別にコウになら見られても構わないよー?」

「俺が構うんですーっ!」

「はっはっは、コウは意外と初心なんだな。いいことを知れた」

「からかいがいがあるよねー」

「そうだな。シルフィー、お前とは案外気が合いそうだ」

「みーとぅー」


 いやいや、ヘンな同盟を結ばないでいただけます?!

 うう……今日やるんじゃなかった……。


「まあ、コウが嫌ならちゃんと乾かすよー」

「……そうしてください」

「それでは余は他の者を呼んでこようか。この楽しさは皆にも共有したいのでな」

「分かりました、それではお願いします」


 シルフィーさんは服を着たまま、風を操って服にしみ込んだ水を風圧で吹き飛ばしていく。……そんなのアリ?

 数分後には内部からすべての水が抜け、完全に服が乾ききっていた。


「うーん、でも毎回これをしてると遊ぶ時間が減っちゃうなー」

「それなら、今度アテナさんに水着を作ってもらいましょうか」

「今度っていつー? 今でしょー?」

「え、ええ……」


 でも、毎回透けを見せられるのもたまったもんじゃないし、早めにアテナさんに連絡しておこう……。


 そんな会話をシルフィーさんとしていると、マーメイドクイーンさんが他のマーメイドを連れて戻ってくる。

 他のマーメイドたちも3倍ほど大きいウォータースライダーを見て歓喜の声をあげる。

 そして、すぐに頂上に登ろうとするのをいったん止めて、注意喚起を行う。


「最後に勢いよく飛び出すので、前の人から1分ほどあけて滑ってくださいね。ぶつかって痛い思いをしてしまうので……」

「「「れーっ!」」」


 どうやら分かってくれたようだ。

 この辺の安全管理もちゃんとしておかないとね。


「よし、タンクへの給水は余が行おう」


 マーメイドクイーンさんは他のマーメイドのため、タンクへの給水に向かって行った。

 こうやって気が利くのもいいところだよなあ。


「……おや、でかい建物が見えたと思ってきてみたら……コウじゃないか」

「アルラウネさん。実は今日、ウォータースライダーのお披露目会でして……」

「へえ……何だか楽しそうじゃないか。アタシたちもやってみてもいいかい?」

「大丈夫ですが……海に入ったあと、戻ってこられますか?」

「ああ、その辺は大丈夫だよ。よし、それじゃああそこまで登ればいいんだな?」

「……ん? そこにいるのは……この前のアルラウネか」

「……あんたは……」


 上からマーメイドクイーンさんが戻ってくると、アルラウネさんと鉢合わせる。

 この2人、知り合いなんだろうか?


「まったく、あんたほど強いやつがいるとはね。属性相性が有利なのにボッコボコにされるとは思ってなかったよ」

「ふん……そちらこそ最後まで闘志を失うことなく向かってきたではないか。そこまで気概のある者はなかなかおらんぞ」


 ……ボッコボコ? アルラウネさんが?

 地属性は水属性に有利なのに、一方的だったのだろうか……。


「え、ええと……お二人はお知り合いで……?」

「ああ、ちょっと前にダンジョンに潜った時に鉢合わせてさあ。ダンジョンの中だとダンジョンが崩落しかねないから外で戦ったんだよ。ま、結果はアタシの惨敗だね」

「しかし植物を張り巡らせながら戦う戦術は見事だった。レベルさえ上がればもっと上を目指せるだろう強さだったな」

「……で、今は休戦協定を結んでるのさ。マーメイドたちにアタシたちの蜜を提供したりね」

「そ、そうなんですね」


 この2人の戦い……激しかったんだろうなあ……。

 来た時に見た木がなぎ倒されてたのって、もしかして……。


「さて、それじゃあアタシたちも使わせてもらおうかね」

「水は余が用意しよう。楽しむが良い」

「おっ、それはありがたいね。それじゃコウ、使った感想はあとで伝えるよ」


 ……こうして、アルラウネさんたちとマーメイドたちは交互にウォータースライダーで遊び、仲を深めるのだった。



 その後、アテナさんが到着して急ぎでシルフィーさんの水着を作ったり、マーメイドクイーンさんがウォータースライダーを気に入ってくれて加護武器をたくさん造ってくれたりして時間は過ぎていった。


「そういえばコウ、このウォータースライダーはここに置いておくのか?」

「いえ、俺かメンバーがいる時限定になりますね。海岸なので潮の満ち引きで倒壊しかねませんし……」

「ふむ……それは残念だな。だが、こういうのはたまにやるからこそ楽しめるのもあるかもしれないな」

「そう言って頂けると助かります」

「さて、それでは楽しませてくれた礼に、少し強めの加護を与えよう。ハンマーを出すがいい」

「……え?」

「その代わり、またウォータースライダーを造る時は余の要望を聞いて欲しい」

「そ、その程度でよろしければ……では、これを」


 俺はアイテムボックスからハンマーを取り出す。

 せっかくなのでステータスも気になるし造ってもらうことにしよう。


「……よし、こんなところか」

「ありがとうございます。それで、要望と言うのはどのようなものでしょうか?」

「ああ、最後のジャンプをもう少し傾斜を付けて欲しくてな。あの速度で空を飛ぶのはなかなか経験できることではないからな」

「わ、分かりました。ケガをしないように調整はさせて頂きます」

「まあ、多少ケガをしたところで回復魔法があるからな。なんならもっと傾斜をきつく……」

「いえ、こういうのは安全第一ですし……」

「ふむ、造り手がそう言うのなら仕方がない。では頼んだぞ、余はもう少し遊んでいく」


 こうして、俺たちが帰るまでアルラウネさんたちとマーメイドクイーンさんたちはひたすらウォータースライダーで遊んでいた。




**********




「さて、『ちょっと強めの加護』のハンマーのステータスは……っと」


 俺はホームに帰ってからステータスを確認することに。

 前回の弱めの加護のハンマーはこんな感じだったんだよね。


【マーメイドハンマー(水の加護):ランクA、水属性+120、地属性-120、攻撃+255、マーメイドクイーンの加護を受けたハンマー。(以下略)】


 これでも充分強かったんだけど、これよりちょっと強いとなると、攻撃+30ぐらいかな?


 ……と思っていたら……。


【マーメイドハンマー(水の加護・弱強):ランクA、水属性+150、地属性-150、攻撃+370、マーメイドクイーンの加護を少し強く受けたハンマー。水属性の補正値が大幅に上がる。……少しとは一体何なんだろうか? これだから強者の思考は分からないとか言われるのである】


 ……なんだよ弱強って! 下の上とか上の下とかそういうランク分けなのか……? それなら中弱とか強弱とかいう表記もあるのか……?

 そして属性補正が+30されて、更に攻撃も115上がってるとか……少し……『少し』強いとは……。


 まあでも、砂漠のボスが強い場合は使わざるを得ない状況になるかもしれない。そう考えればこれはありがたいのかも。

 そう思いながら、タイガさんやタケルのギルド、攻略班の人たちに加護武器を提供する段取りを進めていくのだった。

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― 新着の感想 ―
ふと思ったんだけど、マーメイドがウォータースライダーから飛び出すとなんかあれっぽいですね 漁船から鮮魚を生け簀に入れるとかとか水揚げするとかで射出するアレ
おぉ、たまにyo○tu○eで見るやつ。着水時に気を付けないと絶対に痛いよね。バシャーンとお腹からとか背中から落ちてるのを見るとうわぁ……と思います。楽しそうですけど。
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