ピラミッド大規模探索
「──それではこれより、ピラミッドの探索を行います。これがピラミッド攻略の手掛かりになると考えていますので、各パーティーの方、後方支援組の方、視聴者の皆さま、お気づきの点がありましたら、チャットや掲示板でのご報告をお願いいたします。……では、始めましょう!」
ユニコさんの号令と共に、攻略パーティーたちが次々とピラミッドへと侵入していく。
今回は上層部探索班、下層部探索班、後方支援組に分かれての探索だ。
上層部は人を操る魔法が届かないため、一応ほぼ探索しつくされているものの、人が変われば見方も変わる……ということでの再調査になる。
また、リアルタイム配信でもあるので、視聴者が何か気付く可能性も。岡目八目ってやつだな。
俺たち後方支援組はアイテムの補給の他にも、視聴者と同じように何か気付いた点を報告する仕事がある。ぜひ、何かしらの発見をしたいところではあるが……。
「……んー……これと言って怪しい点はないなあ……」
開始から30分が経過し、各パーティーは操られたモンスターを撃破しながら最上層と最下層に到達する……が、特に何も発見できなかった。
戦闘の規模としては下層部の方が大きかったため、下層部に敵のボスがいそうなものだが……。
『うーん……本当に何もないな……』
『俺としてはラミアちゃんの動いている姿が堪能できてよかった』
『まあ……それはあるな』
『ところで見てくれよこの下層部の動画の15分ぐらいにあるラミアちゃんのベストショット! 魔法を使った反動でホクロがチャームポイントな胸がたゆんと揺れて……』
『お巡りさんこの人です』
『通報しますた』
『な、なにをするきさまらー!』
……あまりにも状況に変化がないためか、視聴者も飽きてきてそうだなあ。
まあ、そんな中で小さいホクロを見つけるとか執念が凄い。違う意味で。
『……とりあえずマッピングはあらかた終わったようですので、一旦撤収してマップを統合しましょうか……む、敵襲!』
最下層にいるユニコさんは撤収を予定しているようだが、そこに現れたのは敵の増援。
この狭い中、どこからモンスターが湧き出ているんだろうか……。
「……ん? ラミアもいるのか」
……さっきの掲示板のレスのせいで、思わず俺も胸元を見てしま……ん?
「同じ場所にホクロがある……?」
同じモンスターなんだから外見もほぼ同じ……なのは分かるが、ホクロまで一緒というのはどうしてだ……?
そのことが気になり、俺はリアルタイム配信の中で出てきたラミアをチェックしていく。
すると、胸にホクロのないラミアもいるが、上層部にも胸にホクロのあるラミアがいた。しかもこちらも同じ場所に、だ。
これは……同じラミアが何回もリポップしてるということか……?
「すみません、手が空いている方はこの検証をお願いできませんか?」
流石に俺一人ではすべてのラミアをチェックできないので、掲示板の人たちを頼ることに。
『合点承知の助!』
『やぁってやるぜ!』
『なるほど、どこでリポップしてるか分かれば、その付近に何かあるかもしれないな……』
『そうそう、プレイヤーはホームにリスポーンするけど、モンスターも同じように拠点とかだろうし』
『ちょっとホクロの子以外も調べてみるかな。せっかくだから俺はこのちょっと髪が長い子を選ぶぜ!』
と、掲示板の人たちは調査に協力的だ。
……そして、すぐに調査結果があがってくる。
『どうやら上層で倒した子は下層でリポップしてるみたいだな』
『下層にいた子も下層でリポップしてるぞ』
『……ということは、ピラミッドのモンスターは下層でリポップするのか』
『後方支援組がモンスターに襲われてないのもそれが要因か。下層部の方が戦闘回数が多かったのも』
『それなら下層部を徹底的に調べればよさそうか?』
『皆さまご協力ありがとうございます、パーティーを最下層に集めて調査をします!』
『あ、ユニコさんだ! がんばってください、いつも応援しています!』
こうして、最下層にすべてのパーティーが集結し、徹底的に調査が行われた。
その結果、モンスターがリポップする場所はほぼほぼ特定できたのだが……。
『プレイヤーの目があるとリポップしませんね……』
『でも、目を離したスキにリポップするな』
『そういう仕様なのか、それともモンスターを操っているやつが機を見計らって送り込んでいるのか……』
『確かに、操られているのが状態異常だとしたら、リポップした直後は操られていないってことだよな』
『つまりここではない離れた場所にリポップして、そこで操られているってことは……』
『そこに乗り込めたらボスを倒せる……かもしれない』
『もし転送されてきているなら、それを逆走できれば……』
『逆走できるかな? ……ま、今回はどこからモンスターが湧いてきているかが分かっただけでもかなりの成果と言えるんじゃないかな』
これが今後の役に立つ可能性は大いにあるはず。
調査部隊の状態異常無効化鉱石の使用回数もそろそろ限界のようだし、今回はここまでかな。
『それでは皆さま、今回はご協力ありがとうございました! 今回のMVPはラミアの胸元にホクロがあるのを発見した掲示板の方ですね』
『MVPになったらレベルが1上がったりするのかなあ』
『そうなら全員で囲んで投石して経験値稼ぎするか』
『トレーニング自重。っていうかPVPは基本できないしな』
『この後マッピングしたものを全員で共有し、隠し通路や隠し部屋の発見に役立てましょう。それでは改めてありがとうございました!』
こうして、第一回目の大規模探索は幕を下ろしたのだった。
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「あ、マッピングの成果がアップされてるな……」
アップされたピラミッド内部のマップを見ていると、やはりところどころ不自然に空白があるようだ。
ここがボスのいる部屋なのか、それとも……。
「……でも、ボスのいる部屋があって、そこにモンスターがリポップするとなるとおかしいことがあるんだよな……」
リポップしたモンスターはまだ操られていないとする。
それなら、プレイヤーたちが状態異常無効化鉱石で直径100メートルの状態異常を無効化しているなら、その部屋の中にまで効果が及んでいるので、モンスターは操られていないはずなのだが。
幅だと100メートルは結構短いが、高さだとピラミッドの最上部から最下層までほぼカバーできそうだし……。
となると、リポップした時点で既に継続して操られているのか、それとも他の要因があるのか……謎だなあ。
とりあえず掲示板に書き込んで、次はこの空白地帯の傍にプレイヤーがいる状態でモンスターを倒してみることを提案するか?
そうすれば、ピラミッド外にボス部屋があることが分かるわけで……。
俺は掲示板にその旨を書き込むと、ユニコさんが次回の探索の時に調査をすることを約束してくれた。
また、マップが公開されてから有志が空白地帯の上層で穴掘りスキルを使った結果、数個の隠し部屋は見つかったものの、ボス部屋を見つけるには至らなかったことも分かった。
……ちなみに隠し部屋には火属性のアクセサリーなどが宝箱にランダムで入っているらしい。そのため、隠し部屋めぐりが今のトレンドなんだとか。
「……しかし、ボスはどこにいるんだろう。敵の勢力が多く駐在していた岩石砂漠は調べ尽くして、特殊鉱石が出るところも特定されたし、これ以上調査できるところはピラミッドぐらいしかないよなあ……」
……と思わされているのも敵ボスの掌の上なんだろうか。ぐぬぬ……。
「……ん?」
と、そんなことを考えているところにアテナさんからホームへの入場申請が届く。いったい何だろうか?
「あ、コウさん。実はこれをお渡ししたくて……」
「これは……ブラシ、ですか?」
「はい、フィーリアちゃん用のブラシです。グルーミングにちょうどいいかなと思いまして……」
「ああ、確かにそういう用具はありませんでしたね……ありがとうございます」
「あの……一回、私がやってもいいですか?」
「もちろんです。俺はやり方が分からないのと、それと……」
「それと……?」
「……フィーリアは女の子ですし、俺がやるとセクハラにならないかなと……」
動物ならまだしも、フィーリアは普通の女の子だからなあ……ネコの耳と尻尾があって、全身は毛で覆われてはいるんだけども。
それに、フィーリアはペットモンスターじゃなくてNPCの仲間だしね。
「合意の上なら大丈夫かと思いますよ」
「そ、そういうものですかね……」
「はい。本人に直接聞いてみましょう。フィーリアちゃーん?」
「……呼ばれた気がするにゃ!」
「今からこれでフィーリアちゃんのグルーミングをしようと思うんだけど、いいかな?」
「大丈夫にゃ!」
「それと、今日は私がやるけど、今度からはコウさんにやってもらっても大丈夫かな?」
「大丈夫にゃ! コウはえっちな目的でにゃーに触ったりしない、いい人だからにゃ!」
「……だ、そうです。信頼されてますね」
「それならいいんですか……ね?」
俺としては全身グルーミングはなかなかハードなんだけど……まあ、フィーリアが喜んでくれるならいいかな。
……それにしても最初は敵対してたとはいえ、だいぶ打ち解けられたなあ。
あの時のピラミッド前の岩石砂漠の戦闘は大変だった。マーメイドクイーンさんの助力が無ければ突破できなかっただろう。
他の岩石砂漠とかに比べてモンスターの数もかなり多かったし、それだけピラミッドが重要な施設なんだろうけど……今のところ、ボスの痕跡を見つけられていないんだよね。下層にいると操るスキルが飛んでくるぐらいか。
……いや、待てよ……? もしかしたら……。
「ふにゃああぁぁぁぁぁ……気持ちよすぎるにゃ……」
突然、フィーリアのちょっと艶めかしい声が聞こえてくる。
……どうやら、ブラシでのグルーミングをいたくお気に入りなようで。
「きゅ?」「るー?」「ふぇ?」
そして、その声を聞きつけて女性陣がやってくる。
更に、フィーリアを見て自分にもやって欲しい! と言わんばかりにアピールしてくる。
「あはは。コウさん、モテモテですね。あ、予備のブラシがあるのでどうぞ」
「りょ、了解です……」
俺は慣れない手つきで、ライアたちの髪をとかしてあげるのだった……。
**********
「スコール、それじゃあお願いできる?」
「がう!」
後日、俺はフィーリアたちと戦った岩石砂漠に来ていた。
そして、今いるのはフィーリアを見つけた横穴のある場所。そこでスコールの穴掘りを使っている。
「……ここじゃないか、それじゃあ次をお願い」
「がうっ」
そして、横穴の奥へ奥へと進みながら穴掘りを試していく。
すると……。
「がう!」
「……やっぱり」
スコールが掘り当てたのは地下へと続く階段だ。
……思えば、いろいろと変な点があったんだよな。
マーメイドクイーンさんのスキルでも壊れなかったここの地形。
そして、そんな頑強な地形にいた守備部隊の大将になるフィーリア。
更に、フィーリアとは別の場所で見つかった状態異常無効化鉱石。普通ならそんな重要なアイテムは大将の傍に置いておきそうなものなのだが……これは、範囲が広すぎて地下まで結界が届いてしまうから位置をここから変えたのだろう。
ここの防衛部隊の数が他の岩石砂漠に比べて多かったのは、ピラミッドを重要な場所だと俺たちに思い込ませる作戦だったのかな。
本来守りたかったのは……この地下へと続く階段だったんだろう。
「……よし、撮影と掲示板への投稿完了、っと。あとは攻略班がやってくれるだろう」
発見したとはいえ、俺一人では絶対に攻略は無理なので、この情報を共有してランカーたちに攻略を任せよう。餅は餅屋、攻略はランカーと攻略班。
俺は水属性の武器を量産して支援するために、マーメイドクイーンさんのいるトレントの島に向かうことにした。
……そして、情報を公開して間もなく、ランカーや攻略班による隠し階段の先の探索が始まるのだった。




