ピラミッド攻略に向けて
「おー、今日も掲示板は盛況だなあ」
俺がチェンジオーアの習得方法を公開したのもあるが、メンバーズカード以外の伝授スキルを教えてもらったプレイヤーもいて、情報交換が活発に行われている。
条件としてはやはり一定以上の好感度が必要らしく、他のプレイヤーよりもよく住人と交流していたり、プレゼントなどで意図的に好感度を上げていたりする人が教えてもらえているようだ。
中には意外なNPCから伝授スキルを教えてもらった人も……。
『あの……私、猫ちゃん好きなんですよね』
『分かる。たらしさんのバステト見てるとなでなでもふもふしたい』
『……ん? このスレにレスしてるってことは……』
『……はい、猫ちゃんから教えてもらいました。伝授スキル……』
『ΩΩΩ<な、なんだってー!?』
『え? 猫ちゃんが? スキルを?』
『ええと……町にいる猫ちゃんと時々遊んでたんですけど、ついさっき手を合わせてきてくれて……仲良くなれたのかなって思ったら、急にスキルを習得しましたって画面が出てきて……』
『それで、そのスキルはどんな感じなんだ?』
『こんな感じです。【猫に小判 (アクティブスキル):敵を殴るとランダムにGが手に入る。消費MP30 使用条件『素手』】』
『使用条件が素手って』
『猫パンチ意識してるのかな? 消費MPは重いけど、寝る前のMP消費でお金を稼げるならいいと思う。金額にもよるけど』
『似たようなので【豚に真珠】とかありそう』
『確かに……しかし、動物NPCも伝授スキルOKってなんだそれ。フリーダム過ぎんだろ……』
『というか猫ちゃんもスキル持ってたのか……』
『気をつけろ! にゃんこはチャームというパッシブスキルを常に発動してるからな!』
『チャームなんかに絶対負けたりしない!』
『チャームには勝てなかったよ……』
『即堕ちしてる……』
……なんか盛り上がってるなあ……。
でも、いろいろな情報があるおかげか、加工屋さんにはそれほど人が押しかけてはいないみたいだ。
鉱石を加工したいって人が少ないのかもしれないけど……まあ、迷惑にならないならそれはそれでいいのかもしれない。
……さて、俺は息抜きにチェンジオーアを使った遊びをみんなとやろうかな。ピラミッドを攻略……というかマッピングするには状態異常無効化鉱石がまだまだ足りないみたいだし、発掘待ちだ。
俺のように入れ子構造にすると効果範囲は広がるものの、消費MPが増えたり、使用回数が減ったりするので、かなりの量が必要になるだろうしね。
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「……ん? コウか。今日はどうしたのじゃ?」
「クイーンドリアードさん、実は新しい遊びをやりたいと思いまして」
「ほう……それはそれは気になるのう……」
俺は自分たちの村の近くにある的当て会場で、クイーンドリアードさんに声をかける。お試しとしてちょっとやってみて意見を聞かせて欲しいからだ。
「むっ、新しい遊びと聞こえたが」
ウルフイヤーは地獄耳。キングウルフさんも駆けつけてくる。
今回の遊びはキングウルフさんだとちょっと難しいかもしれないけど……確かめてみないとね。
「それでは俺たちの村までお願いします」
「うむ、よかろう」
こうして俺はクイーンドリアードさんとキングウルフさんを村に案内することに。
「これは……村の中にあるということはプールか?」
「いえ、川に見立てた水路ですね。そして、今回はこれを使います」
「……石、か?」
「はい、クズ鉱石というものです。今回はこれを……」
「……ほう、鉱石を変化させるスキルか」
今回クズ鉱石を選んだのには理由がある。
一つ目に安価だから。店で買っても1つ2Gとか2つで3Gなどとかなりお安い。
二つ目にチェンジオーアで加工できるのは『鉱石』のみだから。普通の石はなぜか加工できない。変な仕様である。
三つ目にクズ鉱石の加工はチェンジオーアの消費MPが1だから。クズ鉱石は使い道がないから投げやりな設定だな……。
……で、今回はクズ鉱石を平べったく加工する。
「さて、その加工した鉱石をどうするのだ?」
「こうするんです!」
俺は手首のスナップを効かせて、水路に向かって平べったくした石を放つ。
「「……おお!」」
すると、石は水の上を何回か飛び跳ね、やがて勢いが落ちて入水する。
そう、これはいわゆる水切りだ。
昔、水切りの回数を増やすために河原で石の厳選やってたなあ……その厳選をしなくてもいいなんて、チェンジオーアは神スキルだな……(個人の感想です)。
「面妖じゃな……ただの石が水の上を飛び跳ねるなど……しかし、これは面白そうじゃのう!」
「我の手では投げるのが難しいが……む、もしかすると……コウ、石をもらえるか?」
「どうぞ」
キングウルフさんは石を咥えると、首を軽く捻って元に戻すと同時に口から飛ばして石を回転させる。
すると、水面で15回ほど跳ねてから入水する。
まさか初回から……しかも口でこれだけの記録を出すなんて。
「よし、次はワシじゃな。コウよ、石を持て」
「はっ、こちらに」
俺は跪いてクイーンドリアードさんに石を渡す。……ん?
……思わず乗せられてしまった。クイーンドリアードさんはこちらを見てニヤニヤしている。ぐぬぬ。
さておき、クイーンドリアードさんの放った一投は17回ほど跳ねてから水没した。
「ふむふむ、なるほどのう……ククク、これはやり甲斐があるではないか。早速コウの上司とやらに移管していつでも遊べるようにするがいい」
「それには我も同意だ」
「は、はい……でも、その前にうちの子たちにも遊んでもらってもいいですか?」
「きゅーっ!」
「おお、そうじゃったのう。ライアよ、先に遊んでしまってすまぬな、それではワシらは的当てに戻るから、いつでもできるようになったら教えてくれ」
「分かりました、それでは」
……こうして、俺たちはしばらくの間、水切りで楽しいひと時を過ごすのだった。
ちなみに水切りが一番うまいのはブラウン。道具を作るのによく手を使うからか、器用に石を投げることができる。
そんなブラウンがみんなにコツを教え、最初は全然できなかったニアも次第に水切りの回数が増えていき、いつの間にか俺と同じぐらいの回数ができるようになった。
俺はずっとクズ鉱石を加工してたんだけど、みんなの楽しい顔が見られたので満足だ。
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「……さて、次は地属性の武器をバイスさんに依頼しに行かないとね」
今クヴァーナ砂漠に行けるのはほんの一部の上位プレイヤーだけで、大掛かりな探索をするためのパーティー数が足りないのだ。
そのため、まずはトレントの島のダンジョンでレベル上げをしたり、砂漠の火属性モンスターの弱点属性のマーメイドの召喚スキルを習得したりする必要がある。
そして、それには水属性の弱点である地属性武器が必要で……という状況だ。
俺としても操られる心配がない状況でいろいろと探索してみたいので、協力していく所存だ。火属性の鉱石とか欲しいしね。そうすれば今度は風属性のモンスターが多いキヴァナ峡谷が攻略できるようになるし……。
「バイスさん、武器の作製をお願いできますか? クールポーションもお持ちしました」
「おう、大丈夫だ。……ところでコウ、聞いたか?」
「……? 何をですか?」
「鉱石喰らいがいた隠し部屋があっただろ? あそこにまた鉱石喰らいが出たんだってよ」
「ええっ! それは大変なのでは……?」
「いや、小さいから普通に倒せるやつみたいだぜ。もし鉱石喰らいの魔石が欲しければ行ってみてもいいんじゃねえか?」
「なるほど、それなら安心ですね。このあと仲間を誘って行ってみます。鉱石もついでに掘りたいですしね」
「いいのが出たらここで特別料金で加工してやるよ。それじゃ、頼まれた武器を造るとするか」
「情報ありがとうございました。それでは武器の方、よろしくお願いします」
……あの時のイベントの鉱石喰らいの魔石、1個しかなかったからエリクサー病に罹ってたんだよなあ。うちの子の人数分を確保して、みんなに食べてもらおうっと。
……その後、俺はアトラスさん、アテナさん、レックスさんにメッセージを送り、鉱石喰らい狩りと鉱石掘りを行うのだった。アトラスさんたちも同じようにもったいなくて使えなかったのだとか。みんな罹るものなのね……。
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「それじゃあみんな、どうぞ」
「きゅーっ!」
「ふぇー!」
初めてみる魔石にみんなは興味津々だ。……俺には魔石が全部同じに見えるけど、みんなには違いが分かるんだな……。
喜んでくれているみたいだし、全員分用意して良かったな。
「ふぇ……?」
「え……?」
その時、ニアの身体が光り始める。これは確か……進化の光……。
「ふぇーっ♪」
光が収まると、ニアが俺に抱き着いてくる。どうやら進化できたのが嬉しいようだ。
確かに、既に進化しているライア、レイ、スコールを羨ましそうに見てた時期があったもんなあ。
……ところで、進化したのに服が脱げてないということは……体型はあんまり変わってないってことなのかな。俺としてはアテナさんに緊急連絡しないでいいから嬉しいところだけど……ニアはその辺を気にしてないかな……?
「ふぇーっ♪」
「るー♪」
「きゅー♪」
嬉しさのあまり、ライアやレイたちとハイタッチするニア。どうやら本人は気にしていないようだ。よかったよかった。
……そういえば、スキルも変わったのかな? と思ってステータスを見てみると、新規スキルが追加されたようだ。
【癒しの声 (アクティブスキル):パーティー全員のHPを100回復。消費MP70】
これは……! 欲しかった回復スキル! しかも全体の!
消費MPは重いものの、フェアリーシロップやEXマジックポーションでカバーできるから、かなり使い勝手がいいな……。
でも、ニア自体が打たれ弱いのと、全体回復だからモンスターのヘイトが集まりやすいのには気をつけないとね。
「らー……」
そして、ニアを羨ましそうに見るブラウン。そうなんだよね、進化できてないのはNPCのフィーリアを除くとブラウンだけだし……。
ブラウニーの上位種が発見できれば、いろいろな魔石を試してもらうこともできるんだろうけど……。
「大丈夫、いつかブラウンも進化できるから。まずはブラウニーの上位種を探しにいこうね」
「……ら!」
俺が頭を撫でると、立ち直っていつもの笑顔を見せてくれるブラウン。……こうなると、早く見つけてあげたいところだな。
その後、ニアの進化祝いということでゆで卵を作ったり、他の卵料理をふるまってみたり。
更に、料理が得意なアテナさんを呼んで料理を作ってもらうと、ニアは大喜びしてくれた。
「ふふ、ここまで喜んでくれると作り甲斐がありますね」
「ありがとうございます、急なお願いなのに聞いて頂いて……」
「いえ、私もニアちゃん好きなので大丈夫ですよ。……はぁ、ライアちゃん以外の子のフィギュアも欲しいですね……」
確かに、と俺も頷く。
中にはフィギュアをフルスクラッチする猛者もいるとか……いやぁ、世の中には凄い人が多すぎる。
ワールドクリエイターズ内では、チェンジプラントでなんちゃってフィギュアは造れるので、今度色を塗ったものを造ってみてもいいかもしれないな。
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そして、しばらく日数が経過し、ようやくピラミッドの大規模探索ができるだけの資材と人が集まることに。大規模侵攻の時は後方支援組以外はトップランカーのパーティーばかりだったが、今回はそれに加えてトレントの島でレベリングを行ったパーティーも加わり、3倍程度の人数になったようだ。
この数でピラミッドを探索すれば、怪しい箇所にも気づけるはず。
なお、今回の大規模探索も俺は後方支援組として参加することに。
次の休みが待ち遠しいなと思いながら、支援物資を作ることにするのだった。




