砂漠の攻略のために
「……お、もう砂漠の南の森が発見されたのか」
俺がフラワーイーターの元の棲み処の情報を掲示板に書き込んだ翌日、攻略班がフラワーイーターの棲んでいた森の動画をアップした。
周りを見ると、多くの花が咲き乱れ、フラワーイーターが棲むにはうってつけの場所だと言うのが分かる。
しかし、その森も今は砂漠のモンスターの巣窟になっているようだ。
俺が出遭ったサソリのモンスター以外にも、ワーム、ヘビ、トカゲなどのモンスターが棲息しているようで、中にはリザードマンやラミアなどの人型のモンスターもいる。
そして、異様なのはその森での光景だ。
『なんだこいつら、別種のモンスターなのに統率が取れてる……!』
『おい、囲まれてるぞ!』
『生気のない目をしてるし、たらしさんの言うように何かに操られているのか……?』
たらしさん言うな。
……こほん。生気のない目というのは不思議だな……動画でも目をアップで撮影している場面があるが、確かに虚ろな目をしている。
それなのに、他のモンスターと連携が取れていて、陣形を組んで冒険者を襲っているのだ。まるで、第三者が遠くから俯瞰して大勢を操っているような……。
その後、攻略班は全滅して強制帰還となったのだが……。
『うーむ、攻略には圧倒的に水属性のペットモンスターが足りないよなあ』
『最初にもらったモンスターの卵から孵ったウンディーネとかはいるが、新規でペットにできる水属性のモンスターがいないんだよな』
『ウンディーネがペットにできればなあ。トレントの島のダンジョンにはいるんだけど、ペットにする方法が分からないんだよ』
『他のダンジョンにも水属性のモンスターがいるし、どれか1種でもペットにできる方法が分かれば、攻略が楽になるはず』
『確かウンディーネの他には、砂漠のリザードマンとは違う普通のリザードマン、サハギン、人魚、ペンギンとかだったか』
『俺はウンディーネか人魚がいいなあ』
『分かる』
『早くたらしてくれないかなあ』
『このロリコンどもめ!』
なるほど、確かにトレントの島のダンジョンなら水属性のモンスターが豊富だな。
うちの子たちの属性も偏ってるし、水属性がいればありがたいけど……。
ちなみに、ライア・レイ・ブラウン・ニアが地、スコール・エファが風と偏りまくりである。
……トレントの島は水属性モンスターばかりだし、バイスさんに地属性の武器を造ってもらって、レベル上げを兼ねて、ペットにできるかの検証をしていきたいな。それが砂漠攻略の手助けにもなるだろうし。
「……ん? なんだこれ……?」
掲示板を閉じてバイスさんの所に行こうと思ったのだが、気になるスレタイトルが目に飛び込んでくる。
『フィアに鹿が?!』
あ、もしかしてフラワーイーターがフェアリーと一緒に暮らすことにしたのかな?
仲良くなれたようで何よりだ。先にフィアに行ってどんな感じなのか見ておこう。
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「あ、コウさん。先日はありがとうございました」
フィアに行くとティターニアさんが出てきて挨拶をしてくれる。
どうやら、フラワーイーターと一緒に暮らすことにしたようだ。
「実はフラワーイーターたちがフェアリーシロップを気に入ってくれたようで……こうやって共に暮らすことにしたんです」
「花は食べないんですか?」
「ええ、フェアリーシロップの方が美味しいと言われてまして……それで、花の蜜も今まで通りに採取でき、フラワーイーターたちは主にその花の蜜から作られたフェアリーシロップが好みのようです」
確かに素材によって味が変わるからなあ……花の蜜を凝縮したものがフラワーイーターたちに合っていたのだろう。
「それと、コウさんが来たらこれを渡して欲しいと言われまして……」
ティターニアさんは重そうに何かを抱えてヨロヨロと空を飛んでいる。
これは……。
「フラワーイーターの角、ですか?」
「はい。どうやら1か月で生え代わるらしく、コウさんにお礼としてお渡ししたいそうなんです。……この角、何かに使えそうですか?」
「そうですね、武器の素材に使えそうです。他にも何かに使えるかもしれませんし、ありがたく頂戴します」
「キュイ♪」
どうやら使ってもらえるのが嬉しいのか、フラワーイーターたちが俺の周りをスキップして喜びを表現している。かわいい。
それじゃ、早速ステータスを表示してみよう。
【フラワーイーターの角:ランクC、約1か月ごとに生え代わり、元の大きさになるまで3日という驚異的な成長スピードを誇る。竹もびっくり。いや、1日で最大1メートル以上伸びる竹も竹だけど。……ごほん。フラワーイーターの持つ地属性を帯びており、形をうまく活かした武器にすれば、地属性の武器として活躍してくれるだろう】
へー、竹ってそんなに伸びるんだ。雨後の筍という言葉もあるし、竹って生命力が凄いな。
……ではなく。
地属性の武器か。それならトレントの島のモンスターにも有効だし、これをバイスさんに加工してもらおうかな。バイスさんの所に行く前にこちらに寄ってよかった。
「ありがとうございます、ちょうど俺に必要な素材でした」
「そうでしたか、それはよかったです。……それと、よろしければフェアリーシロップもお持ちください。こちらは私たちからのお礼になります」
「ありがとーコウ!」「おかげでビーのハチミツももらえるようになったしー!」「だいすきー!」
と、たくさんのフェアリーたちから代わる代わるにお礼を言われる。
しかし、こうもストレートに気持ちをぶつけられると照れてしまう。
「それでは俺は砂漠の問題解決に動こうと思いますので、この辺で失礼します」
「ありがとうございました。ご武運を祈っております」
**********
「おう、コウじゃねーか。今日も武器の作製か?」
「はい、今日はこれを加工して頂きたくてですね……」
「ほーん……これはフラワーイーターの角か。また珍しいものを……」
「あ、これだけあります」
「……オイオイオイ、どこでこんだけ手に入れたんだよ……」
7頭のフラワーイーターの両角、すべて合わせてその数14である。
どうやら貴重品らしく、バイスさんも驚いている。
「それで、地属性を帯びているのでバイスさんに加工して頂くのが最適と思いまして」
「なるほどな。形状を活かすには槍になると思うが、それでいいか?」
「もちろんです。もし、それ以外にも思いついたらバイスさんの好きにして頂いて大丈夫です」
「ほう、それは腕が鳴るな。で、代金なんだが……よければこの角を1本もらいたいんだが……」
「え? それでいいんですか?」
「おう、ちょっとオレが使う分の槍を造ってみたくてよ。全部コウが使いたいんならそれでもいいが」
「それならお試し用に1つ、本格的に造る用にもう1つ。合計2つお渡しします」
1か月に1回生え代わるし、バイスさんもいろいろ試したいだろうしね。
……そういえば角が生えるのはオスだけって聞いたことがあるけど、あのフラワーイーターたちは全員オスなんだろうか? それとも、トナカイみたいにメスも角が生えるのだろうか?
……ま、ファンタジーだからそういうツッコミは野暮か。
「よっしゃ、それなら交渉成立だな。また2日後ぐらいに来てくれ、造っておくからよ」
「ありがとうございます、それではお願いします」
こうして、着々とトレントの島のダンジョン攻略の準備を進めていくのだった。
**********
「……ということで、トレントの島のダンジョンに行きたい人を募りたいのですが……」
「おれは行くぜ」
「私も行きます。はあ、ウンディーネちゃんの服とか人魚ちゃんの服とか……楽しみです」
……アテナさんが既にウンディーネや人魚の服の妄想……もとい構想を始めている。
ウンディーネはレックスさんがペットにしているんだけど、自分の子のために作るのが楽しみなんだろうなあ。まだペットモンスターにできるかは分からないんだけども。
「あ、ぼくもついて行って大丈夫ですか? ウィンがいればウンディーネとの交渉もできるかもしれないので」
「確かに。それではレックスさんも含めて4人で行きましょう」
「出発はいつにするんだ?」
「バイスさんに地属性の武器を造ってもらっているので、早くて2日後ですね」
「よし、それならおれも地属性の武器を造っておくか。バイスには負けてられねえからな」
そういえばアトラスさんも地属性の武器の造り方をドワーフに教わったんだっけ。
それなら全員分の武器が地属性で固められそうだ。
「アトラスさん、私は地属性の無機物操作があるので、大剣をお願いしてもいいですか?」
「おう、そっちもちゃんと造っておくぜ」
「ぼくは杖なので……自分でも造りますが、コウさんにも地属性の補正値の高い杖をお願いしたいのですが……」
「もちろん大丈夫です。エルダートレントの杖は装備条件が厳しいので、トレントの杖が良さそうですね」
こうして、着々と準備を進めていき……。
「おう、槍はできてるぜ。フラワーイーターの角の加工は初めてだったが、いいものができたと自負してるぞ」
「なるほど。それでは拝見します」
【フラワーイーターの角槍:ランクB+、地属性+60、風属性-60、攻撃+165、魔力+30、フラワーイーターの角から造られた槍。見た目に反してかなり硬く、フラワーイーターがその気になれば岩をも砕くと言われている。ただ、フラワーイーターは温厚なため、角は滅多なことでは使用しない。普段温厚な人ほど怒ったら怖いと言うのと同じだ】
えっ……そんなに強かったの……?
た、戦いにならなくて助かったぁ……もし戦ってたら全滅必至じゃないか。
さておき、これだけの攻撃力があれば、トレントの島のダンジョンでも有利に戦いが進められるだろう。
俺とアトラスさんの分と予備、あとは在庫として確保しておこう。
「どうだ? 結構いい出来だろ?」
「ありがとうございます、これで水属性のモンスターには強気に出られそうです」
「そうだろ? あと、使ったら感想をくれ。そこからまた改良したいからな」
「分かりました、それでは次に来た時にフィードバックしますね」
トレントの杖の方も魔力の+が100近いし、アテナさんやレックスさんも大丈夫だろう。
これでしばらくはレベル上げとペットモンスターにするための方法を調べるために、島に滞在できるな。
そうなると、トレントの島に村を造りたいところだけど……。アルラウネさんに相談してみるかな。
**********
「おう、コウじゃないか。どうしたんだ?」
「はい、実はここの近くに俺たちの村を造りたいと思いまして……」
「へぇ、お隣さんになるのか。もちろん大丈夫だ。コウたちが留守の時は村はアタシたちが守ってやるよ」
「ありがとうございます。心強いです」
「なぁに、アタシたちもコウのおかげでいろいろと得をしてるからね」
「得……?」
なんだろう、何かあったっけ……?
俺は頭に?マークを浮かべながら首を傾げていると……。
「ハチミツをお持ちしたのーっ! あ、お義父さまですの!」
「おう、いつもありがとね。それじゃあ代金のアタシたちの蜜だ。持って帰りな」
「あ、得ってもしかして……」
「そう、ビーやクイーンビーのハチミツさ。これが甘くて美味いんだ……最近になって、更に甘みを増した気がするな」
「もしかして、ビーが進化したのと関係が……?」
ビーが進化したことにより、蜜を集められる量が多くなっただけでなく、質も上がったらしい。
確かにアイテムを作る時に使うと、今までよりも効能が高くなったしなあ。
「そういうことなの! ところでお義父さまはここに何しに来たのー? 気になるの!」
「ええと、実は……」
俺はトレントの島のダンジョンでレベル上げをすること、モンスターをペットにする方法を探すことを伝える。
「それならアタシたちが協力しようかい? この島のダンジョンのモンスターなら、アタシにかかれば赤子の手をひねるようなもんよ」
「お気持ちはありがたいのですが、自分たちで倒せるようになった方が戦闘の経験にもなるので、まずは自分たちだけで進めたいですね」
「ほー、コウは真面目だねえ。そういう所もアタシは好きだよ」
「お義父さま……惚れ直しちゃいましたの! ワタクシもお義父さまと一緒にいたいですのー!」
「う、うん……そのうちね」
俺は言葉を濁しつつ、アルラウネさんたちの村のすぐ横に、ライアに頼んで小さい堀を造ってもらう。
そこにテントをいくつか張って……と。とりあえずこれで簡易的な村扱いになるかな。
こうして、トレントの島のダンジョン攻略のための準備を終えたのだった。




