新しいポーション
「さて……今日は何をしたものか……」
クヴァーナ砂漠への行き方は動画で投稿済み。
ピクシーをペットモンスターにする方法もアテナさんが投稿済み。
クヴァーナ砂漠の攻略は攻略班の人たちに任せて……。
クヴァーナ砂漠の攻略情報が出回るまでは、生産の強化がいいかな。特にEXマジックポーション。
フェアリーシロップの質によって完成品の効果がまるで違うからなあ。
現状はこんなところか。
左側がフェアリーシロップの効果と作るのに使った蜜、右側がEXマジックポーションの効果として……。
HPとMPが50ずつ回復:作製失敗
MP80回復:MP170回復
MP100回復:MP200回復
MP130回復:MP250回復
MP200回復:未確認
最大MPの20%回復:未確認
最大MPの40%回復:未確認
作製失敗したもの、アルラウネさんの蜜、クイーンビーのハチミツ、クイーンドリアードさんの樹液……この辺りを検証して表を埋めていこう。
まずはアルラウネさんの蜜を使って作ったフェアリーシロップを使って……。
10分後、すべてを作り終わった結果、下記のようになった。
MP200回復:MP400回復
最大MPの20%回復:最大MPの35%回復
最大MPの40%回復:最大MPの75%回復
……うん、予測はしてたけど、上位種の素材だけあってどれもこれもヤバい回復性能である。
だいたいはEXマジックポーションにすると効果が2倍になる感じかな。
しかし、レベル3000超えのクイーンドリアードさんの樹液ですら100%ではないんだな。
それ以上となるとなんだ……? 世界樹とか……?
異世界ものの定番ではある世界樹なんだけど、このゲームでは聞かないな。いつか実装される可能性はあるんだろうけど。
とりあえず、表に出すEXマジックポーションは250回復のまでにしておこう。素材の手に入れやすさ的に、ここまでが量産できる限度だろう。
他のはイベントなどの重要な局面に回すのが正解だろう。たぶん。
問題は、『HPとMPが50ずつ回復』するフェアリーシロップだな……。これをどうにかしてポーションにできたら、『HPとMPが100ずつ回復』とかになりそうで、便利だと思うんだけどなあ。
「……ま、とりあえず休憩を入れようかな」
散歩中にふとアイデアが思い浮かぶってよくあるらしいから、俺もそれにあやかろうかな。
久々にルァイドに行ってバイスさんに武器を依頼しよう。
「よし、それじゃあみんな、ルァイドに行こうか」
「きゅーっ!」
**********
「お、久しぶりだなコウ。今日は武器の依頼か?」
「はい、それではいつも通りの武器セットを3セットお願いします。素材とお代をお渡ししますね」
「おお、ありがとよ。今日はそいつらとデートか?」
「えー、まあそんなところです。研究の合間の気分転換に、ですね。……それにしてもバイスさん、凄い汗ですね」
「まあな。仕事柄どうしても熱気の近くにいるから、それのせいだな」
うーん、大変な仕事だ……。
俺はデスクワーク多めだから、夏はクーラー、冬は暖房の効いた室内にいるから、外で仕事をしている人たちは本当に尊敬する。
バイスさんにはお世話になってるし、何かできないものか…………そうだ!
「バイスさん、よろしければこれを試してみませんか?」
「ん? これはポーションか? それにしては見たことのない色だが……」
「クールポーションというものです。2時間の間、暑さを和らげてくれる……みたいです」
「へぇ、珍しいポーションだな。いくらだ?」
「今回は試供品ということで、特別に無料にさせて頂きます。次からは……そうですね、150Gでいかがでしょうか?」
「よし、了解だ。早速試してみるぜ」
「それでは俺はしばらく散歩して、帰って研究の続きをしますね」
「おう、次に来た時に使用感を聞かせられるようにするぜ」
その後、俺たちはルァイドをみんなでゆったりと散歩をしたり、買い物をしたりして1時間ほど過ごすのだった。
「……よし、気分転換もできたし、研究の続きといこうか」
俺は『HPとMPが50ずつ回復』の効果を持つフェアリーシロップの在庫を確認する。
残りの数は……8、か。
HPもMPも回復するなら、まずはポーションとマジックポーション両方の素材を全て混ぜ合わせてみようか。
ポーションは薬草と魔法水、マジックポーションは魔草と純水が素材だから……薬草と魔草を両方すり潰して、魔法水と純水を合わせたものに投入して……。
【ポーション(失敗作)】
ですよねー!
魔法水と純水を合わせたら変な感じになるだろうなとは分かってはいたけど! 研究は止められねえんだ……。
他のフェアリーシロップはMP回復なので、マジックポーションの製作に合わせることで効果が上がったわけだから、HPとMPを両方回復なら両方の効果を合わせたものの効果を上昇させるはずだと思うんだけどなあ……。でも、今はそういう効果のアイテムの作り方は分かってないし……。
「ふぇー?」
俺が行き詰っているのを心配してくれているのか、ニアが声をかけてくれる。
うーん、ニアみたいに小さい子を心配させてしまうとは……よろしくないなあ。
「ありがとう、ちょっとゲームでもして息抜きしようかな」
「ふぇ!」
俺はいったんみんなとトランプで遊ぶことで肩の荷を下ろすことにした。
最近はみんなトランプで遊んでいるからか、駆け引きがかなり上手くなっていて、普通に負けることも多い。
これが経験の積み重ねかあ……。
「ねーねーコウ、ボクもみんなもちょっと喉が渇いちゃった。何か作ってー」
「よし、それならフルーツジュースのミックスジュースを作ろうかな。ちょっと買い出しに行ってくるね」
「はーい! ボクはリンゴとバナナ合わせたやつー! それじゃあみんなの希望も聞くよー!」
俺はみんなの希望するフルーツを聞いてメモを取り、エインズの町に出掛けてジュースを買ってくる。
そして、それをブレンドしてみんなに用意していく。
「あー、やっぱりこの組み合わせいいなあ……ボク、コウについてきてホントに良かったよー!」
「るー!」
「がう!」
みんな喜んでくれて俺も嬉しいな。ジュース自体は既存品だけど、それを好みに合わせてブレンドするのは楽しい。
それぞれの割合に対する好みもあるし、結構奥が深いなあ。
…………ん? 既存品をブレンド…………?
もしかして……。
俺は薬草と魔法水でポーションを、魔草と純水でマジックポーションをそれぞれ作る。ただし、アイテムの完成を確定させてはいない。
そして、そのままポーションとマジックポーションを混ぜ合わせ、そこにフェアリーシロップを投入してかき混ぜていく。
次第に色が変わり始めて、しばらくして変化が止む。
そこで作業を完了させてステータスを見ると……。
【ミックスポーション:ランクC、飲むとHPとMPが120回復する。ポーションとマジックポーションの効果を併せ持つ、珍しいポーション。HPとMPどちらも回復するから一見便利そうに見えるが、どちらか片方しか減ってないときには心理的に使いづらい、使いどころに悩むポーション。そして倉庫番へ──】
分かる。分かるけどさあ。
一応、前衛ならスキルを使いながら戦えばどちらも減るから、それが使いどころかな?
便利だから量産したいポーションではあるが、肝心の『HPとMPが50ずつ回復』のフェアリーシロップの作り方が分からないんだよな……妖精の里──フィアに行って聞き込みをしようかな。
「らー!」
俺がミックスポーションを見ていると、ブラウンから声を掛けられる。
もしかして、ブラウンも一緒にポーションを作りたいのかな。
「それじゃあブラウン、EXマジックポーションやミックスポーションを作るのを手伝ってくれる?」
「ら!」
その後、ブラウンに手伝ってもらいながらEXマジックポーションなどを量産していく。
ブラウンに手伝ってもらうことでスキルが発動し、EXマジックポーションなどの効果は更に上昇する。
MP400回復はMP500回復に、最大MPの35%回復は最大MPの40%回復に、最大MPの75%回復は最大MPの80%回復に……。
そして、HPとMPが120回復はHPとMPが170回復にと、かなりの上乗せ具合である。
「らー、らー♪」
たくさんものづくりができたからか、ブラウンは上機嫌だ。
俺としても効果の高いEXマジックポーションなどが作れて、かなり助かっている。
……まあ、貴重品だからしばらくはエリクサー病に罹ってしまうわけだが。
「……おっと、そろそろバイスさんの武器が出来上がる頃か。もう一回ルァイドに行こう」
気付くと時間が溶けていた。いやぁ、新しいものを作っている時は本当に楽しいな……。
そして、作ったものが誰かの役に立つならなおさらだ。
「おう、来たか。あのクールポーションなんだがな……」
「はい、いかがでしたか?」
「無茶苦茶いいじゃねーか! 全体が冷えて冷静になれるのか、ここをこうしたらもっと良くなるんじゃないか、とかアイデアが出てきてよ。おかげで今回の出来栄えは前よりよくなったぜ!」
「それは何よりです。また作れたらお持ちしますね」
「おう、頼んだぜ! あ、もちろんコウ以外のやつが持ってきても大丈夫だ。アイテムをもらえれば今までよりも出来がよくなるはずだぜ」
「分かりました、他の人にも伝えておきま──」
【INFO:バイスの鍛冶屋がアップデートされました。クールポーションを渡すことで、作製される装備の品質が更にアップします。なお、利用にはドワーフ族の好感度が一定以上である必要があります】
「ん? どうした?」
「……もう既に、俺の上司から全体に通知が行きました」
「ほー、人間は便利なスキルを持ってるんだなあ。よし、オレはもう少し鍛冶をするわ」
「今日はありがとうございました。また、装備の作製をお願いします」
……まさか、あんまり意味がないと思ってたクールポーションに、こういう使い方ができるとはなあ。
ホッコの実やオアシスの水も何かに使えるのかな? こっちはもう少し数を揃えて研究していきたいところだが……オークションとかフリーマーケットで探してみるかな。
そういえば、こうやって俺がものづくりや交流を満喫している間にも、攻略班はクヴァーナ砂漠を攻略しているのだろうか。
どんな攻略情報が出てくるか楽しみだな……。新しいアイテムが出てきたら収集に行きたいなあ。
「よし、その時のためにEXマジックポーションやミックスポーションを量産しておこう」
俺はミックスポーションの素材となるフェアリーシロップの作り方を調べるために、フィアへと向かった。
**********
「あ、コウさん! ちょうどいい所に!」
「ティターニアさん、どうされましたか?」
俺がフィアに到着すると、族長であるティターニアさんに声を掛けられる。
珍しく凄く焦っているようだが……。
「実は最近、フラワーイーターというモンスターが森に侵入したらしく、私たちがフェアリーシロップを作るための花が喰い荒らされているんです。私たちの力では追い出すのが難しくて……」
「なるほど、それで俺たちにと」
「はい。申し訳ありませんが、私たちに力をお貸しください」
「分かりました。俺も他の人に声を掛けてみます」
「ありがとうございます。もちろんできる限りのお礼は致します。それではよろしくお願い致します」
困っている時はお互い様。花が無ければ目的のフェアリーシロップを作れないだろうし、まずはフラワーイーターを何とかしないと。
このイベントらしきものは全体告知がないため、妖精たちと交流があるプレイヤー限定とかなのかなあ。
まずは帰ってギルドで相談、俺たちだけでは無理だと思ったら他のプレイヤーに声を掛けよう。
こうして、妖精たちを助けるために俺たちは動き出すのだった。




