31話 この話は長くなるのでしょうか
当初アクセスが少ないことに切なさを覚えていましたが、慣れとは恐ろしいもので、まったく何も感なくなりました。そりゃ、多くの人に読まれたいとは思いますけどね。
「ひとまず、現状を整理してみよう」
「整理ですか?」
「そうだ。一人で考えて、判らないことや困ったことがあったら、仲間と話すことで問題点が整理され、その解決法が導き出される……と父が言っていた」
そして次のように説明されました。けれど、この話は長くなるのでしょうか……?
わたくしは髪喰い虫に寄生されています。頭皮内に虫がいる形跡(緑色の点)が数か所あり、予断を許さないが、現時点では軽症だとのことです。
これまで髪喰い虫に寄生された狩人たちを例にあげるならば、おそらく二週間くらいは放っておいても問題はないとのことです。しかし、わたくしの髪の毛には卵が多数付着しており、これ以上髪喰い虫に侵されないことが、その条件となってくるようです。
その為には毎日の洗髪と水浴びが欠かせず、移動経路上に水場が絶対に必要となります。その最も安易なルートが、川を伝って街まで下りるという方法だそうです。他に川はないそうです。
しかし、そのルートには、盗賊団のアジトがあり、わたくしとしては、それは避けたいと思っております。おそらく、まんまと逃げられた盗賊も、このまま逃すつもりはないでしょう。
「すこし聞きたいんだが、アンタは盗賊の規模は判るか? それから奴らの戦力をどう感じた?」
男はわたくしを見て真剣に訊ねます。
わたくしも、襲われた時のことを、全力で思い出しました。
「そうですね。わたくしが乗る馬車が襲われた時、盗賊は20人程だったと思います。その時、味方は、騎乗した騎士が2名。無論、きちんとしたプレートアーマーを装備した正式な騎士ですわ。また侯爵家の従士が4名、馭者台に2名、後部の台座に2名、待機しておりました。いずれも鉄と革の混合鎧を装着しておりました。他、戦力ではありませんが、メイドが3名、わたくしと共に馬車の中におりました。ですが、わたくし以外、すべて倒されてしまいました。おそらく殺されてしまっているのではないかと……」
思い出しているうちに、涙が溢れてきました。騎士や従士、そしてメイドはどうなったのでしょうか。生きてはいないだろうとは思いつつも、無事を祈ってしまいます。
「すまんな。嫌なことを思い出させた」
男の切なそうな表情に、わたくしの胸はキュンとしました。なんでしょう、わたくしは! 自覚はありませんでしたが、わたくしは案外尻軽なのかもしれません。ちょっとだけ自己嫌悪してしまいました。
「いえ、そんな……。それからアジトに連れていかれると、その倍以上の男たちと少数の女がいました。何となく村のような雰囲気もありましたわ」
男は一瞬目を見開き驚いた顔をしましたが、納得したように腕を組みました。
「規模としては大きいな。アンタはどうしたい?」
つまり男は、盗賊を突破してでも川沿いを通ってユレイブの街へ行くか、と訊ねているのです。
「そうですね。従者たちの仇はいつかは取りたいと思いますが、あなたとわたくしだけで、盗賊を倒すのは無理があるのではないかと思います」
思いを口にすると、急に悔しくなり、つい歯噛みしてしまいました。
「そうだな。俺もそう思う」
男は、そう言ってからしばらく考え、次の提案をしてきましたが、その前に食事にしませんか? 少しお行儀が悪いですが、食べながらでも構いませんよ。
ですが、その思いは届きませんでした……。男の話はそのまま続きます。
それは、水浴びを諦め、髪喰い虫に侵されないことを神に祈りながら、街まで行くという方法だそうです。
盗賊はそれなりに広範囲でわたくしのことを捜しているのではないかとのことですが、森でも危険とされている湿地帯や、『深い森』と呼ばれているこの辺りにまで入って来ることはないだろうというのが、男の見解でした。
つまりそういう場所を選んで通れば、盗賊には遭遇しないだろうというのですが、ここは危険な場所だったのですね……。
そこで、男は一つの例を話してくれました。
「父の話では……。狩人の中には、軽症だった場合、髪と体の毛を全部剃り落として、そのまま放置するという者もいた。ただ数年か経って、急に頭痛を訴えて亡くなったという話もあった。また逆に、医師が匙を投げた患者でも、何ともなく生き続けたという人もいたようだ」
どうやら、この男はかなりのファザコンのようです。ことあるごとに、『父~』と言います。ただ知識は豊富で、頭も悪くないようです。いや悪くないどころか、優秀すぎる気がします。到底、普通の狩人が森で獲物を追いながら学べる知識量ではありません。
わたくしは、ここで、突拍子もない仮説を立てました。それは余りにもわたくしにとって都合の良い仮説です。ただ、男に逢った時から、ずっと「もしかして……」と何度も思っておりました。
この目の前にいる男が、フォーリオ・ユレイブ様ではないかと。狩人というのも合致しています。ただそんな奇跡のような偶然が起こりうるでしょうか。でも、もしそうであるならば、ほぼほぼわたくしの貞操を奪ったこの男が、フォーリオ様本人ならば、何だか、いろんなことが解決してしまうような気がしてしまうのです。また彼の口から度々でてくる『父~』ですが、それが勇者リオ様ならば、博識であるのも頷けてしまいます。
まったく違うことを考えていましたが、男は黙って、わたくしの返事を待っているようでした。
「神様を信じないというわけではありませんが、出来れば、確実な方法でお願いできればと」
――男は黙り込んでしまいました。辺りが静寂につつまれます――
この沈黙はいつまで続くのでしょうか。先程からわたくしのお腹は「グゥ~」と鳴っております。普段なら、お腹が鳴る音など誰にも聞かれたくはございませんが、今はいっそ聞いてもらいたいです。わたくしの渾身の「グゥ~」をお聞きくださいませ。そして、わたくしが空腹であることをさりげなく察してくださいませ。
けれど焚火のパチパチという木が爆ぜる音が邪魔で、男には聞こえてないようです。黙り込んだまま大木に体を預け、天を仰いでしまいました。
「あ、あの、よろしいでしょうか?」
男は考えることに集中していたのか、意表をつかれたように、ハッとしてあわてて頷きます。
「あぁ、かまわない」
「そのお肉ですが、頂いても?」
我慢できずに、思いきって言ってみましたが、想像以上に恥ずかしゅうございました。
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短編『特別な存在』良かった読んで下さい。
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