12話 武器
ブックマークして頂いて、やる気が湧いたので、地図をつくりました。
「いいか、今日まではただ歩けばよかったが、本当に大変なのはこれからだ 。明日からは本格的に魔物のテリトリーを横切ることになる。だから偶には戦わなければならないし、全力で逃げなければならない時もある。明日の朝からは、極力、俺から離れるな」
「はい!」
なんで、嬉しそうなんだ? 結構、過酷なんだぞ。
「それから、アンタはどれぐらい戦えるんだ?」
「わたくし、これでも王都の貴族学校では優秀な生徒であったと自負しております。魔法の成績は結構良かった方ですわ」
女は胸を張って答える。
「そうか、実戦経験は?」
「一応、学校の実習で、チームを組んで王都の西にある小さな森に入ったことがございます。それと軍の演習にも参加しましたわ」
「おう、そうか⁉ で、森では何を仕留めた?」
「えっと、ゴブリンとか。それとチームで、ではありますが、ディアも倒したことがありますわよ」
「ほぉー、なかなかじゃないか。で、そのフォレストディアはどうやって倒したんだ?」
「あっ、いえ。フォレストディアではなく、ただのディアです……」
「ん~、あー、魔物じゃなくて、動物の鹿のことか? 逆に凄いじゃないか、アイツらはすぐに逃げるだろ? フォレストディアは向かってくるからな。逆に簡単だぞ」
「……」
女はなぜか顔を引き攣らせている。
「で、どうやって倒したんだ?」
「えっと、土魔法が得意な人が落とし穴を作って、その罠にかかったディア、いえ、鹿がいる穴の中に、みんなで魔法を滅多打ちにしたと言いますか……」
女は、罪悪感を滲ませながら「ナハハ」と笑う。
「それ、売り物になんねーだろ?」
「はい。ツノは砕けて粉々でしたし、皮は完全に焼け焦げてしまっていました。肉も食べられる箇所は残っていませんでしたわ」
女は、その時の血飛沫飛ぶ光景を思い出したのか、酸っぱいモノでも食べたような顔をした。
「王都って残酷だな。一体、何の為に仕留めたんだか……」
「なんだか、申し訳ありませんわ」
「まあ俺に謝られても仕方ないんだけど。で、アンタは魔法使いなんだな。どんな魔法が使えるんだ?」
「一応、初級程度なら魔術全般を使えますが、魔物相手に攻撃をするとなると、属性は火だけです」
答える女の語尾が段々小さくなっていく。
「森では使えないな」
それを判っていたのか、女は、「ですよね……」などと言いながら、すこしションボリした。
「なら、武器だな。何か使えるか?」
「そうですね。学校では槍を専攻していましたので、多少は使えます」
女は自信満々にそう答えたが……。
「森で槍は使いにくいんだよ。出来れば短剣とか弓が使えれば良いんだけどな」
森の中には殆ど平地がなく、槍を振り回すようなスペースはない。しかも木に刺さってしまえば、動きが封じられ、命取りになりかねない。森では一番の不適合武器だ。
「ツカエナイ オンナ デ スイマセンデスワ」
何だか言葉がカタコトになっている。
「まあ、気にするな。一応、これを渡しておこう」
俺は、女に背を向けると、リュックサックをカモフラージュにして、懐に忍ばせてある『魔法の袋』に手を入れた。
「そこは、徹底しますのね?」
「なんのことだ?」
「いえ、別に……」
そしてまずは、剣帯とダガーを女に手渡す。
片刃であり、草木を薙ぎ払うなどの用途を兼ね備えたマチェットより、両刃で、刺突で攻撃を行うことに特化したダガーの方が、女には使いやすいだろうと思ったからだ。
「それから、これだ」
と、これまた父謹製である小型投石器を女に見せる。
これは、幼かった俺の為の武器として、父が開発したものだった。木を『Y』の形に削り出し、父が発明した――ゴムウ――という伸びる素材を取り付けて小石を飛ばす武器であった。携帯性が高く。モノによってはゴブリンの頭ぐらいは吹き飛ばせるが、今、取り出したのは、ウサギを気絶させる程度の威力しかない。
「それは何ですの?」
「まあ見てろ!」
俺は、その辺に落ちていた小石を拾うと、ダラリとしたゴムの中間に小石を挟み、弓を引くようにゴムウが伸びるギリギリまで引き絞り、適当に川に向かって小石を放った。
「まあ~、よく飛びましたわね~」
女は、石の軌道を目で追いながら、玩具とでも思ったのか、手を「パチパチ」と鳴らした。
どうやら上手く伝わらなかったようだ。
なので今度は、風の魔法で小石に回転を掛けて、近くにあった木の枝を狙って放つと、バキッという音と共に枝が折れて落ちて来た。女も、それで、ようやく武器だと気づいたようだ。
確かに、見た目は可愛らしい玩具にも見えるが、この武器は意外と狂暴である。またこれを開発する為に、父は、木の素材から、俺が生まれる前から研究していたという――ゴムウ(特殊な木からとった樹液に、火山の近くにあるという硫黄など、いろいろ混ぜ合わせて作った物。無論、俺にはさっぱりよく判らない代物)――のその配合に至るまで、こだわり抜いた、父自慢の一品であった。
女は、小型投石器を手に取り、マジマジと見つめた後、川に向かって試し打ちを繰り返していた。カレライセウを二度もおかわりしたのだから、食後の運動には丁度良いだろう。
俺は洞窟に張ったテントでしばらく休むことにした。半年ぶりに会った人というのもあって、俺もかなり気疲れしているようだ。
評価をよろしくお願いします。
短編をアップしました。良かった読んで下さい。
『特別な存在」 https://ncode.syosetu.com/n1688hw/




