第72話:解放されしもの
カイエン達死齎隊以外にも兵士達が滞在していて襲ってくるだろうから時間短縮のため強行突破も辞さない覚悟で城の中に入っていったが、予想外というか出会う兵士はみな襲ってくることはなく歓喜した表情を浮かべながら俺達に道を譲ってくる。少し疑問に思い彼等から話を聞いてみると、どうやら先に侵入したフローゼ姫達が彼等に話をつけてくれていたようだ。しかも、フローゼ姫達の話を聞いてもなお現王側に付いた者達を既に拘束するというおまけ付きだ。
「誰かフローゼ姫達が来たとこ以外で地下とかへ行く道を知らないか?」
特に戦闘することもなくここいらにいる人達はお姫様側の人間のみのようなので、それならと俺もダメ元で情報を集めることにした。
「あの、地下へ行くかどうかは分かりませんが変だなと思うとこはあります」
そんななか1人の女性が恐る恐る手を挙げながら話しかけてくる。
彼女に連れられてきた場所は城内1階の食料を保存する部屋がある通路の一番奥の壁のとこだ。
「以前保存食の点検を終え戻る時にこちらに向かってくる人とすれ違ったのですが、食料庫を開ける音も聞こえてきませんので不思議に思い角から覗いて見たら誰も居なかったのです。私怖くて誰にも話すことはなかったのですけど」
食料庫の扉は古いからかどれを開けようとしても大きな音がする。角の向こうにいたとしても十分に聞こえるので彼女が聞き逃したということはなさそうだ。周辺の壁を調べてみるとたしかに奥の壁の向こう側には空洞があるだろうという事がわかり、入念に調べると壁を開けるスイッチもなんとか見つかった。
「それじゃ俺は行くから皆姫さん達のこと頼むな」
「早く来ないと終わらせちゃうかもよ」
冗談を言いながらシエル達は上へ向かい走り出し、俺も開いた壁の先にあった階段を下りていった。
階段は所々曲がってはいたが道のり自体は一本道で迷うことなく進むことでき、しばらく下りて行くと広めの部屋に出た。
「おい、居るのは分かっているんだ、姿を見せたらどうだ?」
俺は部屋に入ってすぐに話しかける。部屋に入る時に気配は絶っていたようだがさすがに魔力は隠していなかったようで部屋の中に2人居るのが分かっていたからだ。
俺に声をかけられ2人の女性が姿を現す。
「あの男の側にいた忍か、ここで何しているんだ? まあ大体の予想はつくが」
「・・・・侵入者の排除」
女忍びはお構いなしとばかりに左右から攻めてくる。たしかに彼女達の連携は速く苛烈で素晴らしいものだが、カイエンと比べると若干楽に感じられより余裕ももつため魔力で身体強化を行い無力化するように対処した。
しかし、彼女達は何度吹き飛ばされ壁に叩きつけられても行動不能にする為手足の関節を外したりしても、回復薬を使ったり痛みに耐えながら関節をはめたりして果敢に攻めてくる。そこまでする程あの男や現王に価値があるのかと思い、俺はつい疑問を口にしていた。
「どうしてそこまであんな奴に仕えるんだ、何か多大な恩でもあったりするのか?」
「恩ですって!? あの男に対して恩なんてものは無い、あるのは恨みだけよ!」
「恨み? だったら何故そこまでする、アイツを殺してさっさと何処かへ行けばいいじゃないか?」
「出来るんならとっくに私達は殺ってるわ。したくてこんな事しているわけじゃない、この『隷属の首輪』を着けている限りあの男の命令には逆らえない」
「外すことは・・・できないよな」
「えぇ、付けたあの男以外は外せない。無理やり取ろうとすると全身を激痛が襲うわ」
「それ以外でもあの男に危害を加えようとしたり命令に逆らったり一定時間離れたりすると激痛が襲うように設定されているの」
「なるほど」
「どんなことをしてでも、私達はあの男を殺すまで死ぬわけにはいかない!」
「・・・・なら、もしその首輪を外すことができたら俺達と戦うのは止めるか?」
「外すことができたらね、だけど今まで何をやっても外すことができなかったわ」
「だったら試してみないか」
「・・・・私達じゃ貴方に勝てそうにないしダメ元で試すだけ試してもらえる」
俺は彼女達に近づき首輪に触れてみた。
「・・変なことしたら何が何でも斬るからね」
「誰がするか! たくっ、分析」
魔法陣が展開され様々な情報が頭の中に入ってくる。
「どうやらプロテクトはかかっていなかったようだ、面倒が無くて助かる。ふむふむ、なるほどなあ」
「・・どう?」
「ああ、とりあえず2人共服を脱げ」
「なっ! やっぱりそういう事が目的だったわけね!」
「違う、背中だけ見せてくれればいい」
「えっと、背中フェチ?」
「それも違う。調べた結果契約魔法が使われているようだからな、それを調べる為だ」
「それじゃ、2人同時じゃなくて私からでもいいのよね?」
「ちょ、ちょっとカエデ!」
「構わない、どうせ1人ずつしか調べられないからな」
「分かったわ。それじゃ一応ツバキは彼が変なことしないか見張っててね」
「信用ないなあ」
背を向けて上着を脱いだカエデの背に手を触れると魔法陣が浮き出ててくる。
「っ!」
「やっぱりか。最初首輪を調べた時には無理やり外そうとすると全身に激痛が走るくらいの呪いしかなくて、命令を強制したりするような機能は見当たらなかったんだ。それでより詳しく調べると何かとリンクしていることが解ったというわけだ」
「なんとかできそう?」
「ああ、それ程強力そうじゃないからこれ位なら。契約解除、解呪」
カエデの全身が淡く光り数秒もしないうちに収まっていった。
「もう大丈夫だ、試しに首輪を外してみろよ」
カエデは今までのことから恐る恐る首輪に触れ躊躇っていたが、意を決して勢いよく首輪を外す。
「・・・・痛くない。痛くないわツバキ!」
「ホント? ホントに大丈夫なのね」
続けてツバキの契約と呪いを外すと、2人はしばらく泣きながら抱き合って喜んでいた。俺は2人はそっとしておいた方が良いと考え、先に奥に設置されていた大水晶に分析をかけて結界解除に取り掛かる。調べた結果結界は龍脈と呼ばれる地中に流れる多大な魔力を使って強力にしているだけで、起動&停止自体は大水晶に触れて魔力を流せば誰でも可能な感じの簡単設定であった。
「あの」
「ん? もう良いのか?」
「えぇ、恥ずかしいとこ見られちゃったわね」
「長年束縛されてたんだろ、そうなっても可笑しくないさ」
「そう、ホント助けてくれてありがとう」
「目的を果たしたらお礼はするから」
「それじゃ、お互い無事だったらまた会いましょう」
2人は出口へと駆けていきすぐに姿が見えなくなる。目的はあの男なのだろうから目的場所は同じだろうし一緒に行けば良かったかなと俺はそんなこと思いながら結界を解除し皆と合流するため走り出した。
ここまで読んで下さりありがとうございます。
次回投稿は8月1日(土)の12時を予定しております




