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第69話:立ち塞がる障害① ~テツヤvsカイエン~

 本来人の往来が少ないはずの明け方にも関わらず、どこからともなく騒ぎを聞きつけかなりの人だかりができつつある。街中がそんな状態であるのに城に近づくにつれ人の流れは少なくなっていき、城門前に着いた時には誰一人歩いている姿は見られなかった。


「これはまた」

「どう見ても罠ですよね」

「だろうな」

「あからさますぎ」


 死齎隊の屯所が襲撃されるという騒ぎが起こっているのに城門は開け放たれ門番すら見当たらないのだから、俺達がそのように考えたのも当然であろう。


「周囲の住居の中から少なからず人の気配はしますが、特に殺気とかは感じられないので住民の可能性もありますけど・・」

「誰一人として外に出てこないってのは気になるとこよね」

「住民じゃなくて現国王側の兵士の可能性もあるんじゃない?」

「となると考えられる罠の1つは城門の所での挟撃ってとこかしら」

「たしかに考えられる罠ではあるが、俺達はここ以外の入口なんて知らないからなあ。結局のとこ正面から行くしかないだろ」

「そうね、それに例え挟撃されても革命側の兵士達が来れば逆に挟撃仕返すこともできるしね」


 一応周囲を警戒しながら歩みを進めるが、城門を超えても今だ動きが見られず不気味な程静けさだけが漂うっている。不審に思いながらも進み続けたその時、突如城門がその大きさと重さでは考えられない速さで閉ざされた。


「同じ閉ざすなら普通侵入される前に閉ざしておくもんじゃないのか? ・・・・っ! みんな固まれ、囲まれてるぞ!」


 言葉とほぼ同時に城門を背にした俺達を囲むように死齎隊がいきなり出現する。


「うそっ! ついさっきまで人の気配なんてしてなかったのに!?」


 彼女達が驚くのも無理はない、俺達の中でも気配を探るのに一番高い能力を持っているパルティや人間より鼻が利く獣人であるシエルとポアラが目視すらできる距離にいる人間の存在に全く気付かなかったのだから。


「まさか侵入者がお前とはな、これも天の采配か」

「・・まるで俺を知っているかのような言い方だな」

「当然だ、ソウジから話を聞き演説の時にお前を見かけてからずっと戦いたいと考えていたのだから」

「生憎暇じゃないんでね、そんな面倒なのは勘弁したいんだが」

「戦わずにここから逃げられるとでも?」


 男の一挙一投足を見逃さないよう注視していると城門の向こう側が騒がしくなってくる。


「破城槌を早く運んでこい、時間がないためこの門を破壊する!」


 革命軍の兵士が追いつたようだ。


「どうやら少し耐えるだけで俺達の方が戦力的に有利になりそうだな」

「ふっ」


 男の含みのある笑みを訝しく思うと同時にドゴーン!と城門の方から何かが衝突する音が響いてくる。だが、その次に聞こえてきたものは兵士達の驚愕した声であった。


「ば、馬鹿なっ! 破壊どころか、傷一つ付かないだと!」


 その後、数回にわたる衝突音が響いいてくるが城門が開かれる様子は全くなかった。


「無駄なことを、城門が『閉じられた』のだ破城槌如きで壊れるわけがないだろ」

「・・・・どうやら何が起きているか知っているようだな」

「城を攻めてきたお前達が知らない方がむしろ不思議だぞ、・・いや、知らないのが当たり前なのか。余程の緊急時にしか城門を『閉じる』ことはないし、最後に『閉じた』のもかなりの昔とのことだったからな」

「なら、それを教えて貰おうか」

「態々攻めてきた奴等に教えるわけがないだろ、こちらになんの利益にもならんのに。どうしても知りたいなら、この俺を倒して自分達で調べるんだなっ!」


 言うやいなや男は刀を水平に持ち俺に向かって突撃してくる。なかなかの速さではあるが全く対処できないという程ではなかった。勢いのある突きが放たれ、それを難なく横に躱し反撃に移ろうとした瞬間咄嗟に反撃を中止ししゃがみ込む。ただ嫌な感じがしたというだけだったが、その直感に従ったのは正しかった。男が放った突きは避けられてはい終了というわけではなく、その場合は一連の流れのようにすぐさま水平に斬り裂いてくる。しゃがんで避けたとこまでは良かったが、それも想定内とばかりに手首を返し今度は脳天を割らんとする勢いで振り下ろしてきた。さすがに態勢が悪くただ受け止めただけでは押し切られると判断し、力の流れをずらすように剣で防いだあとはすぐにバックステップで距離をとる。


(あっぶな~、単なる突きと甘く見過ぎてた。よく考えれば実力者がそんな馬鹿な真似するわけないか)


 あくまでそんな攻撃なんて簡単に避けれますよ~みたいな表情をしながら、必死に心を落ち着かせようとしていた。


「ふん、やはり避けられるか。まあ、この程度で殺られても困るかがな。では、次行くぞ・・」


 男が構える、先程の不意打ちのようなものとは違うという事は気配からハッキリと分かった。何が切欠かと問われればそれは分からないとしか言えない、ただお互い何かに押されるように一気に間合いを詰め斬り結び始める。男は力で俺に勝り、俺は速さが勝っていた。ただそれだけなら今まであった魔物と状況は変わらず勝つことは出来ただろうが、男は俺の速さによる手数の多い攻撃を刀の技術により防ぎきっていた。どうやら剣の腕も男の方が上のようだな。長いようで短い十数分間の攻防はお互いまだかすり傷一つつけていないというのが現状だ。


「あれだけ隊長から攻撃されて無傷だと!」

「あ、有り得ない、防御に専念しているというわけではないのに・・」

「隊長も無傷という事はアイツの実力は隊長と同じ位とでもいうのか!?」


 周りの死齎隊は驚愕といった感じになっているようだが、俺はそんな事を気にしている余裕は無かった。実際攻め切れないでいる現状だと長期戦になるのは十分に考えられ、そうなれば体力が落ちて手数が減る俺と刀の技術で可能な限り体力の消費を抑えている奴とでは勝敗は分かりきってしまうからである。


「ふっふっふ、はーっはっはっはっはっ!!」


 突如男が笑い出した。今しがた斬り合いお互い緊迫した雰囲気の中でのいきなりの笑い声だった為完全に虚を突かれた感じで訳が分からない。


「これだ、俺が待ち望んでいたのは! 俺と同じ位の実力を持つ者と緊迫した中での命のやり取り! やはり俺の勘は当たっていたようだ、それなら尚更出し惜しみするわけにはいかないな!」


 男はおもむろに脇差を抜いた。


 二刀流か、拮抗している今の状態で出したんだから伊達や酔狂ってわけじゃないだろうけど本気じゃなかったってことか? いや、殺りあった感じ本気だったんだろうが、ただ単に全力ではなかっただけの話か。

 俺も似たようなもんだがどうする、全力を出した方が良いのか? いや、とりあえず今のままで攻める。どこから見られているか分からないし、切り札は多い方が良いしな。考えをまとめ終えると同時に目の前の敵に向かって走りだした。


(マジかよ、二刀流になっただけと少し短絡的だったか、いっきに差がついた感じだ)


 それもそのはず、カイエンにしてみれば今までは刀一本と技量でテツヤの攻撃を防げていたが攻撃動作に移るという行程の一瞬の間に攻撃がきて少なからず攻撃が抑えられていたにすぎない。しかし、二刀流になったことで防御から攻撃へ移る動作のタイムラグが無くなり、その2つが同時に実行されている。これによって今度はテツヤの速さの方が抑えられ攻め立てられているのだ。

 自分を高めるチャンスとか考えて剣だけで挑んだが、こりゃ全部が全部切り札とか言って出し惜しんでる場合じゃないか。


「どうした、お前の力はそんなもんじゃないだろ! 魔法を使ってもいいんだぞ?」


 剣だけじゃ勝てないだろという男の言い方に少しイラっときたが、こんなとこで負けるわけにもいかないし相手がいいと言ってるのだからここは遠慮しないでいくか。


 カイエンにはその男が忠告を無視し何の策も無く突っ込んでくるように映り、こいつも駄目だったかと内心ため息をついた。そして、次のまだ見ぬ相手へと半ば思いを巡らせながらこれで終わりだとばかりに男へと二刀を振るう。



「なっ!!」


 カイエンが驚いたのも無理はない、止めとばかりに振るわれた刀が男の手前で止まっているのだ。見た限り何も無い空間だが、そこにはたしかに何かが存在した。


「そんな隙を見せていいのか?」


 反射的に下がったのはさすがと言わざるを得ないが、それでも苦し紛れでしかなく十分俺の攻撃は男の上半身を斬り裂き戦いが始まって初めて膠着が崩れた。


「何を驚いているんだ、魔法を使っても良いと言ったのはお前だぞ?」

「・・・・魔法障壁か。たしかに、使っていいと言った俺が驚くのは筋違いだな」


 男は懐から小瓶を取り出し、中身の液体を傷口に振りかけた。途端にさっきまで流れていた血は一瞬で止まり、傷口はみるみる塞がり消えていった。回復ポーション、それもかなり上位の物か。


「だが、魔法障壁程度で俺の攻撃を止めきったと思うなよ。魔法障壁は耐久値以上の攻撃を当てれば簡単に壊れる。今まで魔法障壁で攻撃を防ごうとしてきた魔術師を俺は障壁ごと何人も斬ってきた!」


 男の闘気が上がっていくのを自分に重くのしかかってくるプレッシャーで感じると同時に、二刀に闘気が注がれ収束してくのを注視した。


「刀に闘気をまとわせているのか?」

「そうだ! 魔法で自己強化できない者でも、この闘気法で己や武具を十分強化できる!」


 どうやらやっている事は俺の魔闘術と似たようなもので、それが魔力か闘気かって話だけのようだ。昔の俺がやっていた事と同じなので特に驚くことではないが、注意は必要だろうな。


「二刀と闘気法を同時に使ったのはお前が初めてだ、それを誇りながら逝けっ!」


 男が向かってくる、今まで以上の速さでありどうやら闘気法とやらで身体も少なからず強化しているみたいだ。



「ば、馬鹿なっ!?」


 男の攻撃力がどれだけ上がったか未知数だったため少なからず防御体勢をとっていたがそれは杞憂に終わる。男の攻撃はどれひとつ障壁を突破することはできなかったのだ。男にとって絶対の自信を持った攻撃だったのだろう、顔が絶望した表情になったがすぐに晴れ晴れしたような表情に変わった。


「剣だけの勝負だったらお前が勝っていたか、変に挑発したりせずその時点で勝負決めとくんだったな。俺だって色々と修行や工夫を繰り返しているんでね」

「ふっ、勝ちだけに拘るのであればそうだろうな。しかし、俺は持てる力を全て出して真正面から戦った、負けてしまったが悔いは無い!」

「そうか」

「それに・・」


 突如城門辺りがまた騒がしくなったが、さっきまでと違って兵士達の悲鳴や助けを呼ぶ声が聞こえてくる。


「どうやら始まったようだ」

「なんだ、何か知っているのか!」

「死齎隊第3部隊が動き出したのさ。ある意味で奴等は死齎隊の中で最強の部隊であり任務はいつも皆殺しだ、外に居る兵士達程度では蹂躙されるのが落ちだな」

「くそっ!」

「ああ、ちゃんと止めは刺していけ」


 今にも走りだそうとした俺を男は引き止める。


「本当にいいんだな?」

「言ったはずだ悔いはないと」

「・・これは俺の我が儘だが、最後に名だけ聞かせてくれ」

「カイエンだ」

「カイエン、あんたは俺が今まで戦ってきた剣士の中で一番の腕を持っていたと思うぞ」

「ふん、傷一つ付いていない奴に言われてもな。まぁ最後だ、褒め言葉として貰っておこう」


 カイエンの首を斬り飛ばしシエル&ポアラ組とパルティを見回してから城門へと駈け出した。


ここまで読んで下さりありがとうございます。

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