第68話:幸先不安な革命運動
目の前では激しく燃え上がり1つの建物を焼け尽くさんとする炎と、それを消化しようとしながらも挟み込まれて争っている人達の光景が広がっている。
始めは建物を燃やすという案に難色を示した。それは当然だ、魔法で炎を制御するというわけでもなくただ戦力を削るという名目で何の工夫も無く燃やすだけということだからだ。街中でそんな事をすれば目的の建物以外にも燃え広がり被害が大きくなる可能性が大である。その事を彼女達に訴えても「それについては大丈夫、問題ありません」と微笑んで返すだけで、具体的な根拠は一切話さなかった。
それから何度か説明を求めたが彼女達は忙しく、そうこうしている内に時間がきてしまい話されること無く作戦が決行され冒頭に戻る。そこで初めて彼女達が大丈夫と言った利用が解った。死齎隊の屯所はそこそこ大きかったが、それ以上にその周りにはかなり広い庭-後で聞いた話によると、こんな広い庭があるのは始め住んでいた人達が死齎隊が来たことで少なからず迷惑を被り隣なんかに住んでいられないとすぐに引っ越してしまう。そして、誰も周囲に一向に住まないことを良いこと死齎隊は周りの建物を全て解体し自分達の庭を作ったとのことである-が存在している。庭が広い為隣家とは距離があり、どんなに燃え盛っても屯所だけで収まっているのだった。
俺達は兵士達に戦力になるとは思われておらず、下手に参加されて邪魔されても困ると考えたのか後方で待機を命ぜられている。もともと周りの兵士達と違ってこのクーデターにそこまで意欲が高かったわけではなかったので此れ幸いと近くの屋根から戦況を眺めていた。
「どう思う?」
「互角・・・・いや、やや兵士達の方が押しているか」
「それじゃ問題無しってこと?」
「むしろ問題ありじゃないかしら。死齎隊は屯所を燃やされて混乱のさなかに奇襲によって挟み撃ちを受けているのよ、そんなこちら側にかなり有利な状況にも関わらずやや勝っているだけって」
「被害が少なく死齎隊の戦力が予想外に残っていたからかどうかは分からないがこのままじゃマズイな、勝つのに時間がかかるしこちらの被害もかなり出る」
「他の屯所も似たようなものなら、もしかしたら負けるとこも出るかもしれないわね」
「それなら加勢しようよ」
「それは良いんですけど。シエル姉、あんな密集地帯にどう加勢しますか?」
「そこは・・ほら、ポアラとテツヤで魔法攻撃をするとか」
「まぁ近づけないし、現状だとそれが精一杯ね」
「そうだな、それじゃ手早く終わらせるとするか」
死齎隊の中心に閃光とともにドンと音が響き渡る。途端に微かな呻き声とともに死齎隊の大半は地面に倒れ伏し残りは浮足立ち、兵士達は一瞬の出来事に呆然と立ち尽くしていた。
放ったのは初級雷魔法《ライトニング》。兵士達に被害が出ないよう範囲を狭める為に魔力を抑えたので威力も幾分か落ちたがスタンガン並の威力は出ている、人の意識を刈り取るのには十分な威力だ。
「なに惚けているの、今がチャンスでしょ!」
倒れている死齎隊のとこに降り立ったシエルとパルティは兵士達に発破をかけながら次々と残った死齎隊を無力化させていき、発破をかけられた兵士達は我を取り戻し鎮圧を再開する。浮足立った状態の死齎隊ではまともに戦えず瞬く間に鎮圧&拘束されていった。
全員の拘束を終え消火と監視で残る者を分けてから予定通り他の屯所へと手助けに向かい始める。他の屯所も俺達のとこと同じような状態で均衡していたり押されていたりといった感じだ。
「ちょっとこの状況はあまり良いとは言えないわね」
最後の屯所を抑えた時に険しい表情をしたポアラがポツリと言葉を漏らす。
「良くないって、作戦は順調に進んでいるように思えるけど?」
「見た目はね。でも思い返してみなさい、相手の死齎隊は混乱のさなかでこちらの兵士達の士気はMAXといってもいい程にも関わらず戦いは均衡もしくは押されていたのよ。私達がいなかったら負けていたと言ってもいいわ」
「たしかにそれは言えてるな」
「もともとこのクーデターにとって私達はイレギュラーな存在なのよ、それなのに屯所を制圧するのに私達がいないと勝てない状況だなんて明らかに相手の戦力を見誤っているわ」
「そうなると、少数で城内に侵入していった方が危ないんじゃないか?」
「城内の方が当然警備は厳しいでしょうからそうなるわね。たしかに現王を抑えることが出来ればこちらの勝ちだけど、向こうにはクーデターの中心的存在である王女がいる。逆に彼女が捉えられたらこちらの負け」
「戦力を見誤っていると思われる今の状況だと負ける可能性の方が高そうだな」
「だったら早く王城に向かわないと、こうしてる間にも状況は悪くなっていってるかもしれないじゃない!」
「・・・・シエルの意見はこうだが2人はどうする?」
「私は皆さんの考えに賛同します」
「そうねぇ、今回のは依頼でもないし頑張ったところで報酬があるとも思えないし」
「それは言えてる」
「でも、もし王女が負けたりしたら顔を見られている私達は国家反逆罪で賞金首になる可能性も考えられるのよねぇ」
「それじゃあ」
「えぇ、面倒かもしれないけど私達の今後の為にも少しでも革命の成功率を上げるため私達も急いで王城へ行きましょう」
国のためというより自分達の保身のためだが俺達の意見が一致したので、今だ拘束等で手間取っている兵士達を置いて先行して王城へ向かうことにした。
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