第48話:理不尽が生み出せし村
村(?)に見えたが近づくにつれ思ったより規模は小さく集落と呼んだ方がしっくりくるし、間近で見ると家の造りもソムニウムの街の家と比べたらあばら家と言ってもいい程だった。
どうして街から離れてこんな所に暮らしているのか疑問に思いながら集落に入ると先程まで手を引かれていた子供達が何処かへ駈け出していったので、俺達も周りを見渡しながら子供達が向かった方へ歩き出す。周囲を観察しながら歩いていると『あの人達は誰だろう?』といった感じで疑問の表情を浮かべて首を傾げながら俺達を見てくる子供達と次々すれ違っていくが、次第にその光景にもう1つの疑問が浮かび始めた。
「ここに住んでるのでさえ気になっていたのに、これは少し変じゃない?」
「・・・・子供しかいない」
そうなのだ、集落に入ってからずっと年端もいかない子供としか出会わず大人が一切見当たらない。始めは農作業とかに出掛けているのかもと考えたが、そろそろ夕方に差し掛かるし時間的に帰ってきていてもおかしくないにも関わらず誰一人大人の姿が無いのは少し異常だ。
(総合的に考えてもやっぱりただの集落じゃないってことか・・)
「おぉ~! あんた達か、弟妹達を助けてくれたってのは」
声が聞こえた方に目を向けると先程駆けて行った子供達に連れられて俺と同じ位の年齢と思われる青年がこっちに向かってきていた。
「話はこの子達から聞いたよ、黙ってどこかへ行っちゃってまさか街に行っていたとは。この子達に何かあったらどうしようかと考えていたからホントに助かっ・・た・・・・よ・・!!」
青年はかなり驚いた顔をしているので視線の先を追ってみるが、そこにはシエル達しかいなかった。俺と違ってこの世界の住人が今更獣人が珍しいとか初めて見たとかは無いだろうし、いったいどうしたのかと声をかけてみるか考えているうちに先に青年が動き2人に近づいく。
「久し振りっ! シエル姉、ポアラ姉!」
「ん? ・・・・あなた誰?」
「ちょっ! 俺だよ俺、以前一緒にパーティー組んでたゴードンだよ!」
「ゴードン・・・・えっ! もしかして、ゴーくんなの!?」
「そうだよ、俺は一目見て2人だと気付いたのに誰とか酷いよ!」
「ごめんごめん、でも一緒に組んでいた時とはかなり印象が違うから・・ねぇポアラ?」
「うん、以前はもっと可愛らしかった」
「ポアラ姉可愛いは止めてくれ、一年以上経っているんだから俺だって成長するよ」
3人で和気藹々と話しているところを尻目に、手持無沙汰のまま周囲をボーっと眺めている。
「おっと、こんな所で立ち話もなんだしとりあえず俺に家に行こうか。そっちの彼は暇を持て余しているようだし」
ゴードンに連れられ俺達はとある民家に入っていく。途中ゴードンはすれ違う子供達から頻繁に声をかけられたりしていたので、その光景から彼が子供達からかなり慕われているのが分かった。
「さて、シエル姉達はともかくそっちの彼とは初対面だし自己紹介しとくか。俺はゴードン、この村のまとめ役をやっていて、昔はそっちのシエル姉達とパーティー組んでいた」
「テツヤだ、気ままに冒険者をしている」
「テツヤはシエル姉達とパーティー組んでるのか?」
「今のとこはな」
「そっか、大変だろ。昔は俺もよく雑用させられたりしてたんだよ」
「そうなのか?」
「ちょっとちょっと、人聞き悪い事言わないでよ!」
「そうだよ、みんなゴーくんの為を思ってなんだから」
「パシリの真似事がなんで俺の為なんだ」
「・・・・逃げ足とか?」
昔の話で3人かなり盛り上がってきていたが、俺的に今は気になる事を片付けたかったので口を挟むことにした。
「まぁまぁ、シエル達の昔の話も気になるが、とりあえずここの現状を教えてくれないか? どうして子供しかいない? 大人達はどうしたんだ?」
「そ、そうよ! ゴーくん、どうして街から離れた場所に子供達だけで暮らしているの?」
「・・・・ここの子供達の親兄姉はみな投獄されているんだ」
「犯罪者ってことか?」
「違うっ! 彼等には何の罪も無いんだ!」
「どういうこと?」
「全部国王や領主が代わったのが大本の原因さ・・・・」
それから少しの間沈黙が場を支配したが、ポツポツとゴードンはここまで経緯を話し始める。内容は酷いもので子供達だけで過ごしているのを簡単にまとめると
子供達の親兄姉は領主や赤い鎧の兵士が気に入らなかったり刃向かったりしたとかでありもしない罪を着せられて有無を言わさず投獄されてしまい、その際財産(家財を含め)も没収されて住むとこが無くなり子供達だけでは生活が出来ず途方に暮れているところに今のゴードンのパーティーが保護してこの村まで連れてきた。
という話である。
まぁ、そういう事もあって領主や兵士の悪口を言ったりしては自分達も投獄され財産を没収されるのを恐れ街の人達は我関せずに徹しているそうだ。
「なるほど、街の人達が王都より明るく感じるのにどこか変に思えたのはそういう訳か」
「まぁな、それに赤い鎧の兵士達の正体は知っているか?」
「正体?」
「アイツ等は王都にいる死齎隊のような役割だが、元々はこの近辺を荒らし回っていた山賊だよ」
「山賊! なんでそういう奴等が兵士なんてしているの!?」
「簡単な話領主は自分の身を守るため手っ取り早く既に力を持っている奴等が欲しかった、そして山賊共はお金といざという時以外は好き勝手にしていいという条件で兵士になったのさ」
「最低~。それが今の状況でしょ、とても街を管理する領主がする事じゃないわね」
「そういう訳だからシエル姉達はさっさとあの街から出たほうがいいよ」
「そりゃそんな話を聞いたらさっさと出て行きたいけど、そうもいかない理由があるのよ」
「?」
俺達は依頼の事をゴードンに話し、ついでに何か知らないか似顔絵を見せながら聞いてみた。
「悪いけど聞いた事を見た事も無い娘だな、でも似たようなケースは聞いた事はあるかも」
「似たようなケース?」
「あぁ、娘からの連絡が突然途絶え行方不明じゃないのかとか聞きに領主のとこまで行ってる人達がいるって話」
「たしかに似ている、詳しい話は知ってる?」
「いや、俺もチラッと聞いただけだから詳しいことは。街でなら知っている人がいるかもしれないけど」
「そうか、それなら次はその辺りも聞いて回るとするか」
「とりあえず、こんな時間帯だから今日は泊まっていきなよ。大したものは無いけど食事くらいは出すし、色々話もしたいしさ」
言われて外に目を向けると日はすっかり沈んでおり夜の帳が下りていた。
「帰るのもめんどいし俺は構わないけど、2人はどうする?」
「私達もいいよ、ゴーくんのその後とか色々聞きたいしね」
「じゃ、今日は世話になるよ」
「よし、子供達の夕食の準備もしないといけないから少し待っててくれ」
「どうせだから俺達も何か手伝おうか?」
「そうか、それじゃお願いしようかな。あっ、でもシエル姉は手伝わなくてもいいから」
「ちょっと、何よそれっ!」
「言わなくても分かるでしょ、あなた料理下手なんだから」
「ポアラまで! す、少しはマシになったわよ! ねぇ、テツヤ!?」
「えっと、・・・・とりあえず洗い物だけしてくれれば」
「なによなによ皆して~~!」
その後、皆で夕食をとりシエル達やゴードンの昔話や俺の話などで盛り上がりながら夜も更けていった。




