第40話:死齎隊
「おーい、起きろー!」
ゆっさゆっさ
気持ち良く眠っているところを誰かが身体を揺すりながら呼んでいる。
「んんもう少しだけ・・・・」
「いいから、起きろっ!」
ビシッ!バシッ!
「いってー! 誰だっ!?」
寝ぼけていた俺に突然誰かが往復ビンタをくらわせてきた。頬に走る痛みのおかげで一瞬で目が覚め、ベットから飛び起きると横にポアラが立っている。
「おはよう、目が覚めた?」
「目が覚めた・・じゃないよ、起きないからってビンタするか普通」
「シエルが起きない時は普通にするけど」
「はぁ~そういうのは身内だけにしてくれ、それでこんな朝っぱらから何の用だ?」
「朝っぱらって、もうすぐお昼よ」
「えっ! もうそんな時間なのか」
「そうよ、だから起こしに来てあげたの。シエル達が隣の食事処で待ってるから行きましょう」
「分かった、準備するから待っててくれ」
「ええ、いいわ」
「「・・・・・・」」
ポアラはベットに腰掛けじーっと俺を眺めている。
「・・・・外で待っててくれないか、さすがにそんなにじっと見られていると着替えにくいんだが」
「私の事は気にしなくていいから、どうぞ着替えて」
(いや、俺が気にするんだが)
とはいえポアラは全く動きそうになかったので俺は観念して着替え始めた。着替えている間もポアラは顔を赤らめたり興奮したりするでも無く、淡々とした表情で観察するかのように俺を眺めている。
(視線が痛い・・)
俺的に気まずかったので手早く着替えを終え、何事もなかったように2人で部屋を出るとポアラが話しかけてくる。
「テツヤって変わってる」
「いきなりだなぁ、自分では普通だと思ってるんだが」
「ううん、護衛中に一緒に戦っていた時に思ってたけどテツヤって獣人である私達より明らかに身体能力が高いでしょ。でも、さっき着替えるとこ見てても普通だし鍛えてる身体には見えなかったから」
「だから変わってるってわけか、でも鍛えているように見えなくても強い奴なんていっぱいいるだろ?」
「そりゃぁ旅をしている間にそういう人達と何人かは会ったことあるけど、そういう人達は強者特有の雰囲気が少なからず滲み出ていたわ。だけどテツヤからはそんな雰囲気がほとんど感じられないのよ、実際に一緒に戦って実力を知らなかったらテツヤの事ド新人としか思えないわね」
ポアラと強さについて色々話しながら食事処に向かう。中は昨日と同じで雰囲気は暗かったが満席状態で、その席の1つにシエルとシャオが座っていた。
「お待たせ、起こしてきたよ」
「ご苦労様、遅くまで寝てるんだねテツヤは」
「昨日の夜にちょっとしたゴタゴタがあっただけでいつもはもう少し早いよ、まぁおかげで滅多にない起こされ方をされたけどな」
「ははっ、さてはビンタされたね。私もよくされるし」
「貴方達がすぐに起きないからでしょ」
「今回は貴重な体験をしたと思うようにするよ、それでわざわざ起こしに来たってことは何か用事でもあるのか? シャオも今日は私服みたいだし」
「テツヤはこの街初めてなんでしょ? しばらく滞在するんだったら街の事を知っていた方が良いと思って、その事をシエル達と話していたらそれじゃ街のいろんな所を散歩しようって話になったの」
「そりゃ助かるけど、依頼とか予定とかみんな無いのか?」
「あのね~、予定があるならそもそもこんな話が出てくるわけないでしょ。それに依頼ならテツヤが寝てる間に今日過ごす分には十分なくらい稼いできたわ」
昼食を済ませ午後は4人で街を散策することになり、題目は「俺の為に街案内」ということなのでシエルとポアラにいろんな買い物の金は俺が出すという方向に強引に決定させられた。
(なんだか高い道案内だなぁ)
声に出すとシエルあたりに何か言われるかもしれないので心の中で愚痴りながら歩いていると街の中央の広場に人だかりが目に映った。
「そういえば今日だったわね・・」
「シャオはあの人だかりが何なのか知ってるの?」
「毎月やってる国王の演説よ」
人だかりに近づくと奥の壇上に肥満体型で欲の皮が突っ張ったようた男が時折下卑た笑いをしながら大声で喋っており、その横に昨日部屋にやって来た奴とその他の黒服の集団が待機しているのが見える。そんなか昨日の奴の隣に鋭い眼光で周りを威圧しながら隙なく立ち尽くす一際存在感をある奴が居た。
「なぁシャオ、あのデブ男の隣に立っている身長高めで威圧感のある奴は誰なんだ?」
「あの人は国王の私兵「死齎隊」の隊長さんよ、いちおう隣のデブは国王だから」
(あのデブが国王かよ、とても王には見えないな。隊長と副長は他の奴と比べて実力が数段上って感じか、まぁ手合わせしないことには実際のとこは分からんが)
「愚王イヴァル、覚悟ーっ!!」
誰かの叫び声が聞こえたと同時に10人の若者が壇上に向かって駆けていくのが見える。突然の出来事に広場は騒然となるが、死齎隊はこの状況を想定していたかのように慌てる事無く駆けてくる10人と国王の間に割り込み若者達と相対した。若者達も死齎隊が最大の障害になることは当然分かっていたようで戦闘が始まってもそれなりの実力者で構成していたのか数で勝る死齎隊を押している。若者達が押している状況に広場に集まった人々は少なからず期待を持ったかもしれないが隊長と副長が動き出し、2人は一太刀で若者を殺し残りを牽制する。2人に牽制される事によって残った若者の動きは途端に鈍くなっていき、その隙を逃さず他の隊員が横合いから攻め虚を突かれた若者達は体勢を立て直す間もなく蹂躙され人々の心は嘆きや絶望で満たされていった。
(結果だけ見れば惨劇でしかないように見えたが、隊長と副長以外は大した事ないし2人をどうにか出来れば死齎隊を殲滅する事は可能だな)
俺は戦闘風景を余すことなく睨むように観察しながらそんな事を考えていた。
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「ソウジ、お前が言っていた男はアイツか?」
ソウジに問いかけながらこちらを睨むように見てる男を注視する。
「ん? そうですそうです、あの人に間違えないですよ」
「なるほど、お前のカンは今回も正しいようだ。一見普通の男だが、アイツを見ていると俺の心の奥底で危険を知らせる警鐘が鳴り響いてくる」
「そう言ってるわりには嬉しそうですね、カイエンさん」
男は周りにいた女3人を連れてこの場を後にし、俺は男が去っていった方をそのまま見続ける。
「嬉しそう? 当たり前だ! 強い奴とギリギリの闘いが出来ると言われて死齎隊の隊長に就いたにも関わらず、やっている事は弱い奴を駆逐するばかりで全く俺の心を奮えるような闘いができない。だがあの男なら全力を出し尽くすような闘いが出来るやもしれんからな」
「カイエンさんがそれを望むなら私はその手伝いをするだけです」
いつか俺を脅かそうする存在に歓喜しながら死体の処理を他の者に任せソウジと共に広場を後にした。




