第39話:女怪盗
(な、なんだこれ!)
いきなりの事で何が起こったのか分からず目の前が真っ暗で倒れている俺は、とりあえず顔の上に乗っているものを色々触って確かめてみる。
「ひゃん! ちょ、ちょっと止め! あん♪」
可愛い声が聞こえたが、気にせず触り続けた。
「あん♪ も、もうお願い止め・・止め・・止めてって言ってるでしょ!」
バチーーーーン!!
俺の顔に乗っていた人は勢いよく立ち上がると同時に俺の頬におもいっきり平手打ちをかますが、すぐに足を押さえて蹲る。
「くっ・・!」
「・・怪我してるのか?」
治療しようと近づいたとたん、廊下の方が騒がしくなり大勢の人間が走る足音が聞こえてきた。
ドン!ドン!ドン!
「おい、開けろ!」
「!」
荒々しく扉を叩き大声を出してくる人物に対して、目の前の人物はかなり緊迫した雰囲気を出している。とっさに目の前の人物をベットに乗せ毛布を被せた。
「毛布を深く被ってそこから動くな」
毛布から出ていないのを確認し急いで半裸となり、今にも蹴破られそうな扉を開ける。扉の前に黒色の服装をした国王の私兵が5人立っていた。
「なんだよ、こんな時間に」
「遅い! 俺達が開けろと言ったら速やかに開けろ!」
「随分横暴だな、それで何の用だ?」
「ここに賊が逃げ込んだと目撃があった、中を確認するぞ」
「断る」
「なにっ!」
「俺達はこれから最高の一夜を共にするとこなんだ、邪魔するなよ」
「き、貴様! 俺達が誰なのか知っててそんなフザけた事を言ってるのか!」
「知らないな、状況から考えたら俺達の情事を覗こうとする出歯亀だ」
「お、おのれー!」
5人全員が腰の刀を抜こうとしたので、いつでも対処出来るように5人を視野に入れ集中する。
「止めなさいっ!」
一色触発の状況で廊下の向こうから誰かが大声で諌めようとしてきた。
「ふ、副長!」
「武器を収めなさい」
「しかし、こいつが・・」
「貴方達ではその人に敵いませんし、こんなとこで無用な怪我をする必要はありません」
近づいてきたのは同じ黒い服を着た見た目のほほんとした感じだが、目の前の5人とは明らかに違って隙が見当たらず独特の雰囲気を醸し出す異様な男である。
「うちの隊の者が失礼しました」
「あんたは?」
「私はこの隊の副長を務めている者です」
「あんたもそこの奴と同じで中を見せろとでも言うのかい?」
「いえいえ、そこまで無粋な真似はしません。ただ、我々も賊を捕まえる仕事がありますので奥に居る人の顔を確認させて頂くだけでけっこうです」
「悪いな、俺の恋人は人見知りで恥ずかしがり屋だからそりゃ無理だ」
「「・・・・・・」」
「仕方ありません、時間も惜しいですし他を当たります。ですが、次に衝突する時は容赦しませんので」
そうにこやかに告げると副長は他の5人を連れて去っていく。扉に鍵をかけ奥の部屋に戻り、窓を閉めてからベッドに腰掛けホッと一息ついた。
「もう出てきても大丈夫だぞ」
毛布から顔だけ出して訝しい目で俺を睨んでくる。
「・・・・どういうつもり?」
「どうとは?」
「さっきの奴等が何なのか知らないわけじゃないでしょ! なのに私を助けて何が目的!?」
「国王の私兵だろ。目的と言われたらそうだな、キミに興味があったからだ・・女怪盗」
「怪盗と分かってて私にどんな興味があるの?」
「どうして怪盗なんて無意味な事してるのかと思ってな」
「無意味ですって! あんたなんかに何が分かるっていうのよ!」
「キミの気持ちは分からないが、怪盗の無意味さは分かる。国王と繋がって私腹を肥やす奴から盗んでも、税で搾り取られてそれが奴らのもとに戻ってくるだけ。結局この国は根本から変えないといけないってことさ」
「そんな事言われなくても分かってるわよ、だから私達は盗んだお金の一部を貯めていって反撃の機会を待っているんだから」
「私達ねぇ・・」
「っ!」
女性は見るからに「しまった!」という表情を見せるが、時間を戻す事が出来ないのと同じで言ってしまった事を取り消すことはできない。
「なるほど、個人的恨みによる単独犯かと思ってたが組織だってやってるとはな」
「・・・・」
「誰にも話つもりは無いから警戒しなくていい、そんな気があるなら最初から助けてない」
「・・そう」
女性は少しだけ安心したのか張り詰めた空気が若干和らぎ、その間に手早く女性の足の治療を終えベットに横になる。
(知りたかった事はある程度聞けたいし、これ以上情報が得られるとも思えないな)
「足の治療は終わってるからもう帰っていいよ、俺はもうひと寝りするから」
そう告げて俺は眠りについた。
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「・・・・ホントに寝ちゃった」
私は呆れながら目の前の男を眺めると、男は気持ちよさそうに寝息をたてながら眠っている。
「私がここで口封じに殺すとは考えないのかな?」
男の顔に近寄り頬をツンツンと突いてみても寝返りを打つだけで起きる気配は無かった。
「ふふっ♪」
何度か頬を突くうちに男の寝顔がなんだか可愛く見えてきたので、しばらく時間を忘れて見つめていた。
コン!コン!コン!
「っ!」
突然誰かが扉をノックする音が聞こえたので息を潜め警戒する。
「いらっしゃいますか、お嬢様?」
声を聞くと同時に私は急いで鍵を外し扉を開ける。目の前には年配の老人と若い侍が2人立っていた。
「爺や!」
「おぉ、お嬢様ご無事でなによりです。帰りが遅い為探しましたぞ!」
「ごめん、ちょっと怪我しちゃって。でも、治療は終わってるから心配しないで」
「そうでしたか、一応戻りましたら怪我の具合を確認致しましょう。この辺りは奴等の警戒が下がっていますので今のうちに屋敷へ戻れます」
爺やから着替えを受け取り、扉を閉めて着替えを終える時にベットで寝てる男の姿が目に映った。
(さすがに黙って出て行くのは気が引けちゃうかな)
ベット横の机の上に「ありがとう」と書いた紙を置き部屋を出る。
「迷惑をかけました、さぁ帰りましょう」
私達4人は出来る限り気配を消し、夜の闇に紛れるようにその場を後にした。




