第28話:近づく真相
採取場所で村長達2人と別れ帰ったのを確認し、俺達残った4人は賊が去っていった方向へ歩き出す。賊との戦闘も考え出会う魔物は全て回避し休憩を挟みつつ進み、森の中を歩くこと数時間、陽も傾きかけてきた時に目的の場所と思われる小屋を発見した。
「予想より小さい一軒家ね、小屋と言ってもいいかも」
「たしかに、誘拐事件が全部繋がっているとしたら犯人だけでもけっこうな人数になるし、攫われた人達もそれなりの人数になるはずだけど」
「もしかしたら、こういった隠れ家が複数あるのかも」
「その可能性もあるな、とりあえずあの小屋を制圧して情報を手に入れるか」
俺&シュリ&カイムはダナンに聞こえないように小声で話しながら次の行動を決めていった。
「それじゃ、俺とシュリで小屋の周囲を見てくるから、2人はここで入口を見張っててくれ」
「行ってくるね、カイム」
「2人も気を付けて」
「・・カイムも十分気を付けておけよ」
「気にはかけておくけど期待はしないでくれよ、彼の実力も全く分からないんだから」
最後の方は小声で話、俺達は小屋を中心にして円を描くように歩き出す。小屋は窓から明かりが漏れ人影が時々映る以外特に変わったところは見られなかった。
「あの人影が犯人なのかな?」
「まぁ、攫われた人が歩き回っていたら可笑しいしな」
「だよね~、それにしても小屋の中の人達ってほとんど周りを警戒してないね?」
「考えられるとしたら小屋に居るのは事件とは全く関係無い人達、もしくは犯人だが警戒を全くする必要が無いと思っているのどちらかだな」
「全く関係無い人達がこんな森の奥の小屋で騒いでるってのもありえない訳じゃないとも思うけど、さすがに今回は後者じゃないかしら」
「だろうな」
それから小屋を注視しながら歩き続け、10数分後カイム達と合流した。
「無事だったようだな、カイム。・・それで、どうだった?」
「2人ともおかえり。どうだったって聞かれても、あの人ずっと小屋を見ていて一言も喋らないんだ」
(ふむ、人数が減ったらもしかしたら何かアクションを起こすかと思ったが・・)
「テツヤさん達はどうだったの、何か分かった?」
「特に罠とかは見られず、小屋の中にも正確な人数までは分からんが人が居るのは確認できた」
「でも、誘拐犯かどうか分からないし、攫われた人達の姿だって見当たらなかったわ」
「どうする? ここで手をこまねいて無駄に時間を浪費するのは問題がでてくるかも」
「・・・・仕方無い、小屋の中にいる全員を魔法で眠らせるか」
「出来るんだったらその方が手っ取り早く思うけど、気乗りしなさそうだね」
「あぁ、魔法効果には抵抗力による個人差が出るからな。もしかからなかった奴が出たら攫われた人に危害が及ぶ可能性が出てくる」
「でも、ほとんどがかからないって訳じゃないんでしょ。だったら魔法を使ってすぐみんなで突入するって作戦でどうかな」
「今のとこはそれしかないか」
「巫山戯るなっ!!」
いきなりダナンは大声を上げ俺達を睨んでくる。
「しっ! 静かにしろ、気付かれるだろ」
「そんな不確かな作戦に乗れるかっ、俺だけでも助けに行く!」
俺達にそう言うと同時に小屋に向かって走りだした。
「どうする?」
「まさかドアを開けて1人で突入するとは思えないが」
言ってるそばからダナンはドアを開けて中に入っていった。
「あのバカっ、こうなったら俺達も行くぞ!」
「えぇ」
「しょうがないか、世の中上手く行かないなぁ」
俺達が駆け出すと同時に中からゾロゾロと荒くれ者が出てくる。
「ダナンさんが言った通りの3人組みだ」
「なんだガキばっかりじゃないか」
「バ~カ、それが良いんじゃないか。あの女を犯ったらどんな声で鳴くのか楽しみだぜ」
「けっ! 俺はもうちょっと成熟した方が断然好みだな」
男共はニヤニヤしシュリを下卑たる目で見ながら下品な会話を続けている。
(それにしてもダナン「さん」か賊の仲間かもとは考えたが、思っていた以上に上の方だったか)
「ガキ共! 女置いてさっさと帰れ、そうしたら生命だけは助けてやる」
「そうだぞ俺達は優しいんだからな、ギャハハハハ!」
「典型的な屑共だな。そんなことより、お前達が攫った人達はどこだ!そこに全員無事でいるのか?」
「あぁ、といっても何人か部下が可愛がっていたから全員無事とは言えんが」
荒くれ者に少し遅れてダナンが小屋から出てくる。
「賊の仲間かとは考えたが、けっこう偉い地位のようだな、あんたは」
「これでもこの団のNo.2だ。それで、さっき部下が言ったように女を置いていけばお前達2人は見逃してやる、どうだ?」
「ふん! お前の正体や攫われた人達が監禁されている場所を知ってる俺達をお前等が見逃すとは絶対に考えられない、それに俺は仲間を絶対に見捨てないっ!」
「なら死ね、いくら「期待の新人」でも所詮は「新人」だ。俺達全員と戦って生き残れると思うな」
「かもな、それなら死ぬ前に今回の王女と各地の誘拐の真相を聞かせて貰おうか」
「真相? そんなものは無いな、俺達はただ依頼されただけだ」
「依頼?」
「そうだ、王女誘拐は依頼されたが各地のは騒ぎを起こせというだけで別に誘拐じゃなくても良かったんだよ。まぁ女を誘拐したのは騒ぎも起きて部下の労いに何かと使えるから俺が選んだ」
ダナンの言葉にはらわたが煮えくり返りそうになるのを必死に抑え、シュリとカイムも怒り心頭に発するように肩を震わせている。
「それじゃ、お前達に依頼したのは誰だ?」
「さぁな、依頼を持ってきたのはリーダーだからな」
「攫われた人達は全員小屋に居るでいいんだな?」
「別々に監禁していたら効率が悪いだろ」
「最後だ、今小屋に居るのは攫われた人達だけか?」
「? 変な事を聞くガキだな。まぁいい、そうだ、攫った女だけだ」
その答えを聞くと同時に俺は魔法構築し発動させる、その途端小屋は淡い青色のシャボン玉のような形の膜に覆われた。それを見た荒くれ者共が騒ぎだし、ダナンも驚愕している。
「なんだこれは!?」
「ダ、ダナンさん、小屋に入れません!」
「何っ? ガキっ! 貴様何をした!?」
「お前が饒舌な馬鹿で助かったよ、それは守護結界さ。言っとくが俺が解くまで誰一人小屋に入れないし、誰も結界を壊すことは出来ない!」
「へぇ~、それは面白そうだな。試してみるか」
いきなり後方から声が聞こえた途端殺気が膨れ上がる。
「シュリ! カイム!」
とっさにカイムを蹴り飛ばし、その反動を利用しシュリを抱きかかえて横に跳んだ。その瞬間大地を削っていくように衝撃波が通り過ぎ結界にぶち当たった。
「ほぉ、けっこう力を加えたのを放ったんだが無傷とは。壊せないってのは本当のようだな」
「遅いですよ、リーダー!」
身体を起こし見たものは身長180cm程の頬に傷のある強面顔で赤い鎧を着た屈強な戦士という風の男だった。




