第22話:新規ダンジョン出現!!④ -ダンジョンボス-
6階層からは今までの5階層までの岩肌のような自然的な洞窟と違って、遺跡を彷彿させるような人工的な作りになっていた。
「ダンジョン内の構造が統一されてないってのは変わってるな」
「ここはマシな方だと思うよ、他の冒険者の話で森林・砂漠・氷雪・溶岩地帯などなどいろんな種類があるって聞いたことあるから」
雑談を交わしながら出てきた魔物を蹴散らしダンジョン内を進んでいった。魔物はたしかに5階層までとは種類が変わって巨大クモ・巨大芋虫・巨大アリのような魔物と遭遇し、攻撃方法もさっきまでのような敵に向かって突進してくるだけのワンパターンと違って巨大クモが糸を飛ばして動きを阻害し・巨大アリは集団で連携をとり・巨大芋虫は口から火の玉を飛ばして遠距離から援護してくるといった感じだ。とはいえ、単体ではそこまで強い方でもないのでシュリ達でも簡単ではないが単騎撃破が可能だった。
7階層へ降りる階段でシュリが愚痴りだした。
「はぁ~、一個も宝箱見つからないし、階層ボスとも出会わないねぇ」
「そりゃそうだよ、ミゲルさん達が先行してるんだよ」
「そうなんだけどさぁ」
「カイム、シュリは解ったうえで言ってるんだ。それでシュリ、何が言いたいんだ?」
「うん。私の最初の意見でゆっくり進行してるけど、このままじゃあの人達が全て終わらせて帰るところに擦れ違うというのもありえる。でも向こうは団体で私達は少人数だから全て無視して最短で走っていけば進行スピードは私達の方が速くなって、もしかしたら追いつけるかもしれないと思うの」
「ふむ、まぁたしかに追いつける可能性はあるだろうな。でもそうすると取り零しがあるかどうか探せなくなるぞ、それでもいいのか?」
「良いも悪いもここまで来て1個も見てないじゃない、もう期待できないってのが正直な思いかな」
「・・カイムはどうなんだ?」
「別に構わないよ、魔物から小さい魔水晶だけど多量に手に入って収穫はけっこうあったから」
「分かった、それじゃ俺が先頭で魔物を最小限蹴散らすから2人はちゃんと付いて来てくれよ」
7階層に入ると同時に走りだし魔物がでたら一刀のもとに斬り捨て、分岐点は団体が通った跡を探しそちら選び無人の野を行くが如く7~9階層を駆け抜けていった。
10階層のとある空間に近づくにつれ誰かの戦闘音が徐々に聞こえてくる。入って真っ先に気付いたのは空間を満たす咽返るような血の臭いと、血溜まりに浮かぶ十数人の死体だった。
ガキーーーーーン!
一瞬死体に目奪われていたところを我に返り、音がした方を向くとミゲルが武器を飛ばせれ魔物が今にも斧を振り下ろそうと構えている。
「シュリとカイムは怪我人をこっちの通路に避難させてくれ、俺はあの魔物を惹きつける!」
「分かった、テツヤくんも気を付けて」
俺達はすぐに行動に移った。
俺は魔物とミゲルの間に割り込み振り下ろされた斧を魔闘術を応用し魔力で強化した剣で受け止める。2~3メートルはありそうな巨体から繰り出された攻撃を少し押されたとわいえ受け止めることが出来たので改めて身体能力が向上しているを実感した。
「おぬし!」
「これは間に合ったと言うべきか間に合わなかったと言うべきか、無事かミゲルさん、フォーリアさん」
「儂等のことはいい、そんな事より早く逃げろ、おぬしの敵う相手では無い!」
「そんな事が出来るんだったら最初から助けてない、いいから早く通路の方へ避難してくれ!」
「・・・・すまない、だがおぬしも早く逃げてくれよ」
ミゲルとフォーリアがシュリ達のところへ向かうのを横目で確認し、到着するまでの時間稼ぎに徹する。何回かの攻防でほんの少しの差だがパワーは魔物・スピードは俺が上なのが解ったが、浅い傷なら数秒で回復する相手の再生力の高さには目を見張った。
「テツヤくん! 怪我人の避難終わったよー!」
シュリの合図が聞こえたのを機に魔物が振り下ろした斧をわざと弾かず躱し、地面に斧を叩きつけた時にできた爆煙を煙幕替わりに利用し避難場所に急いで向かった。
「テツヤさん、避難させたのはいいけど僕達の手持ちの回復薬じゃ足りないよ」
「大丈夫だ」
俺は地面に手を置き魔法を構築する、その途端魔法陣が出現し淡い緑の光の膜がみんなを覆った。
「な、なにこれ!?」
「シュリちゃん見て! みんなの傷が徐々に治ってきてる」
「これは、上級範囲回復魔法・・!」
「さて、状況の確認の為いくつか聞きたいのだが」
周りが突然の事態に驚いていたが、気にせず話を進める。
「あれは階層ボスでいいのか?」
「というよりダンジョンボスだな、どうやらここが最下層のようだ」
「どうして最下層だと、奥に先に続く通路が見えてたと思うが」
「先行していた者が通路の奥は行き止まりで、十数個の鍵穴が無い宝箱があるのを発見してる」
「次に、何故あそこまで惨劇になってるんだ?」
「最初あの空間には何もいなかったのじゃ。だが先行している者が宝箱の存在を伝えてすぐ、後方から悲鳴が聞こえそちらを向いた時にはあの魔物がおり仲間を殺害していた」
「後方にいたのは魔術師とパッカーばかりで突然の襲撃だった為、混乱が収まる前に全滅させられました。私達もすぐに応戦しましたが魔法やアイテムの援護が無い状態ですので徐々に削られていき・・」
「どうしてすぐに退却しなかった?」
「先行した者がまだ残されているのじゃ、仲間を見殺しにはできん!」
(仲間思いは良い事だが、それで無理して全滅したら意味無いだろうに)
「状況は解った、あなた達は引くつもりないようだが戦うのは無理だ。ここは俺が助けに行こう」
「何を言っとる! これは儂らのパーティーの問題じゃ、無関係の者を危険にさらしたくない」
「まともに戦えるの俺だけだ、今のボロボロの状態を見てもそれは明らかだ」
ミゲル達は何も言えず、悔しそうに顔を歪めている。
「私も危険な事はして欲しくない。テツヤくん、ホントに大丈夫なの?」
「心配するなシュリ、いちおう皆の回復が終わったら教えてくれ」
俺は魔物に向かって駆け出し、向こうも俺を警戒していたのか俺を見つけると駆け寄ってきた。魔物の斧による攻撃はパワーに物を言わせた振り下ろすと振り払うの2つで複雑な動きは無いが、俺が攻撃する為に間合いを近づけると逆の手による殴打攻撃がきて迂闊に近づけず大きな攻撃が出来無い状態が続いた。
数分間の攻防でお互い浅い傷を全身に付ける程度だったが、魔物には高い再生力がある為実際は俺だけが傷だらけで肩で息をしている状態だ。
(くそぉ! 高い再生力とは分かっていたがそれ1つでここまで差がでるのか)
「テツヤくん、みんなの回復終わったよー!」
シュリの声が聞こえてすぐ回復魔法を解除し、魔闘術を発動させ淡い黄金の光が全身を覆う。魔闘術を発動した俺を警戒したか恐れたかは解らないが、魔物は1歩後ろへ下がった。
「俺自身未熟だったとはいえ好き勝手やってくれたな!」
俺は剣を下段に構えてすぐその場から掻き消え、魔物の目の前に現れ斧を半分にたたっ斬り両腕を根元から斬り飛ばす。魔物が咆哮を上げ両腕を再生させていくのを見て、後方に少し下がり剣を上段に構え魔闘術を解除してから自分の莫大な魔力を許容限界と思えるとこまで剣に収束させる。剣が悲鳴を上げるのを聞きながら再生中の魔物へ駆け出し、上段から剣を振り下ろし胴を斬り裂くと同時に収束した魔力を解放させた。
その瞬間鋭い閃光が空間を満たし、魔物の絶叫と爆音が響き渡る。爆煙が収まった後は空間の真ん中に柄だけになった剣を握りしめた俺だけが立っていた。




